テラマイシンとは?
テラマイシン(一般名:オキシテトラサイクリン塩酸塩・ポリミキシンB硫酸塩)は、抗菌作用を持つ2種類の成分を配合した複合抗生物質製剤です。通常は、皮膚感染症などに用いられるほか、やけどや外傷、潰瘍などの二次感染の治療に使用されます。
テラマイシンの特徴
テラマイシンには、2種類の抗生物質が配合されています。
そのうちの一つであるオキシテトラサイクリンはテトラサイクリン系の抗生物質で、グラム陽性菌・グラム陰性菌・スピロヘータ・リケッチア・クラミジアなどに対し広い抗菌作用を示します。この作用は、細菌のたんぱく質合成阻害によるものです。
もう一つの有効成分であるポリミキシンBはポリペプチド系の抗生物質で、グラム陰性桿菌(特に緑膿菌)に優れた抗菌力を示します。ポリミキシンBは細菌の細胞膜を破壊して、殺菌的に作用します。
このようなことから、テラマイシンは幅広い菌種に効果が期待できる皮膚感染症治療薬といえます。
テラマイシンの効能効果・用法用量
テラマイシンは、オキシテトラサイクリンまたはポリミキシンB感性菌による表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷および手術創などの二次感染、びらん・潰瘍の二次感染に適応があります。
通常、1日1〜数回直接患部に塗布または塗擦するか、無菌ガーゼなどにのばして貼付します。
テラマイシンを外用する上での注意点
テラマイシンを塗ってはいけない例
テラマイシンは、テトラサイクリン系抗生物質、ポリミキシンBまたはコリスチン(ポリミキシンBの類薬)に対して過敏症の既往歴がある場合は使用できません。
誤って使用すると重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。
テラマイシンの副作用
テラマイシンの使用にあたり、特に重篤な副作用は報告されていません。
ただし、発疹や接触皮膚炎などが生じた場合は、使用の中止が必要なことがあります。また、菌交代症(オキシテトラサイクリンおよびポリミキシンB非感性菌による感染症)があらわれた場合は、速やかに使用を中止して他の治療方法を検討します。
なお、テラマイシンは眼科用製剤ではないため、目に使用することはできません。誤って目に入った場合は、水やぬるま湯ですぐに洗い流し、痛みなどの異常が残る場合は早めに眼科を受診してください。
テラマイシンを漫然使用することのリスクについて
テラマイシンを漫然と使用し続けると、薬剤耐性菌が発現するおそれがあります。そのため、使用にあたっては治療に必要な最小限の期間にとどめる必要があります。
塗布期間が不明の場合は、その都度お問い合わせください。
なお、残薬があっても、自己判断でテラマイシンを使用するのは避けてください。安易に使用すると、耐性菌が発現するリスクが高くなります。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
病気の治療で内服薬を服用している場合でも、テラマイシンは問題なく使用できます。ただし、他の外用薬を使用している場合は、使い分けが必要なケースもあります。
そのため、併用薬がある場合は市販薬も含めてすべてお伝えください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方、お子さま、ご高齢の方への使用に関して
適量のテラマイシンを短期間使う限りにおいては、特に問題はないと考えられます。ただし、副作用である発疹や接触皮膚炎などが発生する可能性は否定できません。
したがって、使用の可否や使用期間については必ず医師の指示に従い、副作用が疑われる症状があらわれたら速やかに受診して適切な処置を受けるようにしてください。
プレドニン眼軟膏の患者負担・薬価について
テラマイシンの薬価は10.7円/gです。25g(1本)処方された場合、薬剤費は267.5円/本になります。
ただし、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがテラマイシンを25g(1本)処方された場合、ご負担金額は80.25円です(薬剤費のみの計算です)。
なお、テラマイシンにはジェネリック品がありません。薬局で希望しても変更できませんので、ご承知ください。
よくあるご質問
- テラマイシンと同じ成分の市販薬はありますか?
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テラマイシンと同じ成分の市販薬は、第2類医薬品としてドラッグストアなどで販売されています。
ただし、市販薬と医療用のテラマイシンでは適応疾患が異なります。また、誤った使い方をすると耐性菌が発現するおそれがあります。
したがって、市販薬をテラマイシンの代わりに使用するのはおすすめできません。
- テラマイシンは、やけどにも使えるんですよね。仕事で軽いやけどをすることが多いので、予防的に処方してもらいたいのですが……。
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テラマイシンはやけど(熱傷)にともなう二次感染には適応がありますが、やけどによる痛みや炎症には効果が期待できません。また、やけどでできた傷跡を薄くする効果もありません。
一方で、二次感染をともなうやけどであれば、やはり受診して適切な治療を受ける必要があります。そのため、予防的にテラマイシンを処方することはできません。
自己判断で安易に使用できる薬ではないため、ご了承ください。
- テラマイシンを絞り出したら、黄色い軟膏が出てきました。使っても大丈夫ですか?変質していないですか?
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テラマイシンは、もともと黄色味を帯びた軟膏です。変質して黄色くなっているわけではないため、ご安心ください。
なお、テラマイシンは室温(1~30度)で保存してください。0度以下になるような冷たい場所・30度を超えるような場所で保管すると、未開封でも成分が変質するおそれがあります。特に夏場は、直射日光の当たる場所や自動車内に置き忘れないようにご注意ください。
- テラマイシンを処方されましたが、あまってしまいました。次に同じような症状が出たときのためにとっておいてもいいですか?また、家族に使わせてもいいですか?
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開封済みのテラマイシンの残薬は、誤使用を避けるために廃棄してください。
「同じような症状が出たら使いたい」と思われるかもしれませんが、よく似た症状であっても最適な薬が同じとは限りません。
なお、残薬をご家族に使うのも避けてください。ご家族の症状がテラマイシンの適応となる症状かどうかは、診察してみなければわかりません。また、万が一チューブが汚染されていると、ご家族に皮膚疾患をうつしてしまうおそれがあります。
このようなリスクを避けるためにも、残薬は必ず廃棄してください。
- テラマイシンはいろいろな菌に効くと聞きました。では、水虫にも使えますか?
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テラマイシンの効果が期待できるのは、グラム陽性菌やグラム陰性菌をはじめとした細菌感染症です。カンジダ症や白癬などの真菌感染症に対しては、まったく効果が期待できません。したがって、テラマイシンを水虫などの真菌症などに使用するのは避けてください。
また、原因が明らかでない皮膚症状に対しても、自己判断でテラマイシンを塗るのは避けてください。誤った使い方をすると、薬の効きにくい耐性菌が発現するおそれがあります。
- テラマイシンを塗り忘れた場合はどうすればいいですか?
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テラマイシンを塗り忘れた場合は、気が付いたときに1回分を塗布してください。ただし、次の塗布時間が近い場合は、忘れた分を飛ばして次の塗布時間に1回分を塗ってください。その際、塗り忘れ分をあわせて2回分塗る必要はありません。