亜鉛華単軟膏とは?
亜鉛華単軟膏(一般名:亜鉛華単)は、酸化亜鉛を10%含む外用薬です。皮膚疾患に対する収れん・消炎・保護、および緩和な防腐作用があり、外傷や皮膚疾患などの消炎や保護、びらん・潰瘍・湿潤面の治療に用いられます。
亜鉛華単軟膏の特徴
亜鉛華単軟膏は、酸化亜鉛と油脂性基剤の単軟膏を混合したものです。あせもや皮膚のただれ、症状の軽い褥瘡などに使用され、塗布面を保護すると同時に炎症をやわらげます。また、酸化亜鉛は塗布面を乾燥させる性質があることから、滲出液を吸収して皮膚を適度に乾燥させ、治癒をうながす作用も期待できます。
副作用が少なく、長期にわたって塗布することも可能なことから、オムツかぶれなどにもよく使用されます。
亜鉛華単軟膏と亜鉛華軟膏の違い
亜鉛華単軟膏とよく似た名称を持つ薬剤として、「亜鉛華軟膏」があります。両者は、含まれる酸化亜鉛の割合と基剤の性質が異なります。
亜鉛華単軟膏には酸化亜鉛が10%配合されていますが、亜鉛華軟膏に配合されている酸化亜鉛の量は20%です。
また、亜鉛華単軟膏の基剤はサラシミツロウや植物油などがベースの単軟膏で、乳化剤などは含まれていません。一方、亜鉛華軟膏の基剤は油脂性基剤の白色ワセリンに乳化剤を加えた白色軟膏です。
白色軟膏は単軟膏に比べて水分をよく吸収するため、滲出液が多い部分には亜鉛華軟膏のほうが向いています。一方で、患部の滲出液の量が少ないと亜鉛華軟膏では乾燥が進み過ぎ、かゆみなどが生じる場合があります。
そのため、症状に合わせて適宜使い分ける必要があります。
亜鉛華単軟膏の効能効果・用法用量
効能効果・用法用量
亜鉛華単軟膏は、下記の皮膚疾患の収れん・消炎・保護・緩和な防腐に適応があります。
外傷、熱傷、凍傷、湿疹や皮膚炎、肛門そう痒症、白癬、面皰(ニキビの初期症状)、せつ(いわゆる「おでき」)など
また、その他の皮膚疾患によるびらん・潰瘍・湿潤面にも使用できます。
通常は、症状に応じて1日1〜数回、適量を患部に塗擦するか、適量をガーゼなどにのばして患部に貼布します。
亜鉛華単軟膏の禁忌・副作用など
亜鉛華単軟膏を外用してはいけない例
亜鉛華単軟膏は、重度または広範囲の熱傷には使用できません。これは、有効成分である酸化亜鉛が創傷部位に付着して、かえって組織の修復が遅くなるおそれがあるためです。
亜鉛華単軟膏の副作用について
亜鉛華単軟膏の使用にあたり、特に重篤な副作用は報告されていません。
ただ、頻度は明らかになっていませんが、過敏症状や発疹、刺激感などの副作用が生じることがあります。
これらの症状があらわれた場合は、亜鉛華単軟膏の使用を中止しなければならないこともあるため、気になる症状がある場合は早めにご相談ください。
亜鉛華単軟膏を外用する上での注意点
感染に対する注意
亜鉛華単軟膏に感染防御作用はありません。
万が一、何らかの感染が疑われる症状があらわれた場合は、速やかに受診して適切な処置を受けてください。
滲出液に対する注意
亜鉛華単軟膏の成分である酸化亜鉛には水分を吸収する性質がありますが、基剤の単軟膏は油性で乳化剤なども添加されていないため、大量の滲出液がある部分の使用には向いていません。
塗布部位については診察時にご説明しますので、自己判断で塗布する範囲を広げないようにしてください。なお、滲出液の量などに変化があった場合は、早めにご相談ください。
亜鉛華単軟膏の塗り方や塗り直しする際の注意
亜鉛華単軟膏は、患部にたっぷり塗布してください。「多すぎるかな?」と思うくらい分厚く塗っても大丈夫です。
そして、皮膚に付着した亜鉛華単軟膏は、必ずしも毎回落とす必要はありません。
例えば、オムツかぶれに使用する場合は、1日1回、陰部を清潔にしたあと亜鉛華単軟膏をたっぷり塗ってください。そして、お通じの際に汚れた部分を取り除き、ふき取った部分のみ追加で塗布すれば十分です。
「塗りっぱなしは不安だから」といってオムツ交換のたびに亜鉛華単軟膏を全部落とそうとすると、摩擦などの刺激によってかえって症状がひどくなるおそれがあります。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、亜鉛華単軟膏との併用が禁忌とされている薬剤はありません。
ただし、他の外用薬を使用している場合は、重ね塗りや使い分けが必要なケースもあります。
そのため、併用薬がある場合は市販薬も含めてすべてお伝えください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方、お子さま、ご高齢の方への使用に関して
亜鉛華単軟膏を患部の症状に応じて適量使う限りにおいては、特に問題は生じないと考えられます。ただし、副作用である過敏症状や発疹、刺激感などがあらわれる可能性は否定できません。
したがって、使用にあたっては必ず主治医の指示に従い、副作用が疑われる症状があらわれたら速やかに受診して適切な処置を受けてください。
保管に関する注意
亜鉛華単軟膏は、室温(1~30度)で保管してください。冷蔵庫などで保管する場合は、凍結を避けてください。夏場は、直射日光の当たる場所や自動車内など、高温になる場所に放置しないようにしましょう。
また、ご家庭では幼いお子さまが誤飲・誤使用することがないよう、保管場所にご注意ください。
亜鉛華単軟膏の患者負担・薬価について
亜鉛華単軟膏の薬価はメーカーによって若干異なりますが、1.85~2.19円/gです。
なお、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまが2.19円/gの亜鉛華単軟膏を100g処方された場合、ご負担金額は65.7円です(薬剤費のみの計算です)。
よくあるご質問
- 亜鉛華単軟膏と同じ成分の市販薬はありますか?
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亜鉛華単軟膏の成分である酸化亜鉛を配合した市販薬は、ドラッグストアなどで販売されています。ただし、市販薬は酸化亜鉛以外の成分もいろいろ配合されている場合が多く、効能効果も亜鉛華単軟膏とは若干異なります。そのため、市販薬を亜鉛華単軟膏のかわりに使用することはできません。
- 亜鉛華単軟膏をガーゼに塗り伸ばしたいのですが、うまくできません。どうすればいいですか?
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亜鉛華単軟膏は、市販のバターナイフを使うとガーゼにうまく塗り伸ばせます。清潔なガーゼに少し多めに亜鉛華単軟膏を乗せ、パンにクリームを厚く塗るようなイメージで塗り伸ばしてください。
なお、バターナイフに付いた亜鉛華単軟膏は、オリブ油などを馴染ませた布で拭ったあと、中性洗剤などで洗い流すときれいになります。また、汚染を防ぐため、使用前にはアルコールを含ませたティッシュなどでふき、乾燥させてから使ってください。
- 亜鉛華単軟膏を落としたいのですが、うまく落ちません。皮膚を傷付けないように上手に落とす方法を教えてください。
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亜鉛華単軟膏の基剤は油性なので、シャワーだけではうまく落ちません。落とす際は、オリブ油を馴染ませた布などでやさしくふき取ったあと、よく泡立てた石けんで洗い流してください。
なお、亜鉛華単軟膏は多少肌に残っていても、特に問題はありません。ゴシゴシこするなどして肌を傷付けないようご注意ください。
- 亜鉛華単軟膏を塗り忘れた場合はどうすればいいですか?
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亜鉛華単軟膏を塗り忘れた場合は、気が付いたときに適量を塗布してください。
なお、便などで亜鉛華単軟膏が汚れている場合は、汚れた部分を取り除き、ふき取った分を追加で塗れば大丈夫です。