スキリージ(リサンキズマブ)とは
スキリージは生物学的製剤のひとつで、IL(インターロイキン)-23p19という物質の働きを抑えるお薬として2019年に発売されました。主に尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の治療に用いられます。
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乾癬の生物学的製剤は日本皮膚科学会の検討委員会による審査を経て理事会で承認されて使用を許可されます。当院は日本皮膚科学会が作成する「乾癬生物学的製剤使用承認施設」に掲載されています。
IL-23p19とは
IL-23p19はIL-17と同様、「炎症性サイトカイン」のひとつです。IL-23p19は免疫反応で働く樹状細胞から産生されます。
乾癬では免疫システムが異常を起こしているため、樹状細胞がIL-23を過剰に産生します。IL-23はリンパ球を刺激して乾癬の皮膚や関節の症状を引き起こすIL-17を多く産生させます。つまり、乾癬の発症においてIL-23はIL-17の上流で働いています。
IL-23の動きを抑えることで、炎症を引き出すさまざまな物質を生み出さないようにします。
スキリージの特徴
スキリージは3か月に1回、注射1本の投与で治療が完了する製剤ですので、通院の手間や治療に関するストレスが少なくて済む薬剤です。治療効果も高く、患者さんにとってメリットの大きい薬剤です。
スキリージを使用する場合の確認事項
スキリージを開始する際は事前に確認をさせていただきます。
乾癬の方
- 今までの治療法(塗り薬や紫外線を用いた治療や飲み薬)で十分な効果が得られない方
- 皮膚の症状が全身の10%(手のひら10枚分の面積)以上ある方
- 難治性の皮膚症状または関節症状がある方
スキリージを使用できない方
- 重い感染症を患っている方
- 治療が必要な結核を患っている方
- スキリージに含まれる成分に対するアレルギーがある方
スキリージを使用する場合に注意が必要な方
- 感染症を患っている方
- 過去に結核にかかったことがある方
- ご高齢の方
- 妊娠中、授乳中の方
投与方法と投与スケジュール
投与方法
スキリージは注射薬です。
太もも、お腹、二の腕、おしりのいずれかの皮下に注射します。
自己注射は認められておらず、院内にて医師または看護師のスタッフが投与いたします。
投与スケジュール
初回に投与した後は、4週間後に投与します。それ以降は12週間の間隔で投与を続けていきます。※患者さまによって1回の注射の本数(2本または1本)は異なる場合があります。
効果判定の目安
通常、投与開始から16週以内に効果が得られますが、16週投与しても効果がない場合は、治療を続けるかどうか再検討します。
スキリージ使用中の注意点
スキリージは免疫の働きを弱める作用があるため、スキリージの使用中は感染症にかかりやすくなります。
日常生活では感染防御のために以下の点に注意していただきます。
- 手洗いうがいをしっかりする
- 手指消毒をする
- マスクをする
- 人混みを避ける
また、スキリージ投与中に生ワクチン(BCG、麻疹、風疹など)の接種をすると感染症を起こす危険性があるため生ワクチンの接種はできません。
治療費について
スキリージは高額なお薬であるため、高額療養費制度や医療費控除の対象となります。
高額療養費制度
高額医療費制度は医療費の負担額が一定額を超えた場合にその超えた金額を医療保険から支給される制度です。自己負担額は年齢や所得によって異なってきます。
世帯合算
同一世帯の方の医療費を合算し、一定金額を超えた場合、自己負担額が軽減される仕組みです。
参考資料
スキリージ投与中、投与予定の患者様に向けたホームページがございます。ご自身の医療費の計算もシミュレーションが可能ですので、ぜひご参照ください。
よくあるご質問
- 生物学的製剤とは何ですか?
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バイオテクノロジーによって作られた比較的新しい医薬品です。化学的に合成されたものではなく、もともと生物が作りだしているタンパク質を応用して作られています。スキリージ®は、乾癬に深くかかわり中心的な役割を果たしているIL-23というサイトカインの働きを抑えることで、乾癬の症状を改善するように開発されました。
- スキリージ®による治療の費用はどのくらいかかりますか?
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スキリージ®による治療にかかる患者さんの負担額は、医療保険の自己負担割合などによって異なります。また多くの場合、「高額療養費制度」や「医療費控除」の対象となり、負担を軽減することができます。詳しくは本サイトの『医療費について』をご覧ください。
- スキリージ®による治療はやめられますか?
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やめることはできますが、自己判断で勝手に中止せず、必ずご相談ください。治療を中止するとスキリージ®により抑えられていた乾癬の症状が再発する場合があります。中止を検討する場合は、メリットとデメリットについてよく話し合うことが大切です。
- 副作用が心配なのですが、必ず起こるものでしょうか?
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副作用は必ず起こるものではありません。また比較的よく起こるかぜなどの感冒様症状は、日頃からうがいと手洗いを心がけ、体調管理に気をつけることで予防することができます。注意が必要な副作用に関しては少しでも体調がおかしいなと思ったらすぐにご相談ください。
- 注射を打ってもらうために受診する日に体調が悪くなり、行けなくなってしまいました。どうすればよいのでしょうか?
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どのような症状か、いつ頃から起こったのかをできるだけお伝えください。体調不良の原因がお薬による副作用であると考えられる場合には、スキリージ®による治療を中止する場合があります。
- スキリージ®以外のお薬を飲んでいるのですが、大丈夫でしょうか?
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治療を始める前にご相談ください。
- 海外旅行に行くことはできますか?
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大丈夫です。ただし、スキリージ®による治療中は感染症にかかりやすくなっている可能性があるため、生水を飲まない、マラリアの感染に注意し、虫よけの対策をするなど、十分に気をつけましょう。また渡航先によっては生ワクチンの接種が必要な場合がありますが、スキリージ®による治療中は接種することができません。注射予定日と旅行の日程が重ならないようにご注意ください。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。