ビブラマイシンとは?
ビブラマイシン(一般名:ドキシサイクリン塩酸塩水和物)とは、グラム陽性菌・グラム陰性菌をはじめクラミジア属の細菌に対しても幅広く抗菌作用を発揮するテトラサイクリン系の抗生物質です。
米国ファイザー社で開発された抗生物質でメタサイクリンより化学的に合成されました。国内における承認は古く1969年にさかのぼり、カプセルやシロップをはじめ様々な剤型で発売されましたが、現在では錠剤の50mg錠と100mg錠が使われています。
ビブラマイシンの特徴
ビブラマイシンは皮膚の細菌感染を含む全身の様々な細菌感染症をはじめとして、性感染症・炭疽・ブルセラ症・ペスト・Q 熱・オウム病などの特殊な感染症に対しても有効な抗生物質です。ビブラマイシンは消化管からの吸収率が極めて高いため、内服後すぐに有効な血中濃度に達する上、長時間持続します。血中から組織への移行性も高く、ターゲットとなる細菌をしっかりと叩くことができるのが特徴です。
皮膚科の診療においては、主に炎症を伴うニキビの治療などに用いられます。日本皮膚科学会の尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017では炎症を伴うニキビの治療に内服抗菌薬の使用が推奨されていますが、中でも一番強く勧められているのはビブラマイシンです。
ビブラマイシンの使い方
通常、ビブラマイシンの内服を始める初日に200mgを1回又は2回に分けて経口投与します。2日目以降は初日の半分である100mgを1日1回内服します。なお、感染症の種類及び症状によって投与量は適宜増減します。
食事の影響を受けにくいと言われているため食後の内服にこだわる必要はありません。また腎機能障害がある方や透析を受けている方でも、ビブラマイシンの投与量を調整する必要はありません。
ビブラマイシンを服用する上の注意点
妊娠中の内服に関して
胎児毒性があり、胎児に一過性の骨発育不全、歯牙の着色・エナメル質形成不全を起こすことがあるとされています。治療上のメリットが危険性を上回ると考えられる場合にのみ投与することが可能です。妊娠中はなるべく使わない方が無難ですので、妊娠している、あるいは妊娠の可能性がある場合は医師に申告してください。数ヶ月間の継続が必要になる可能性もある薬ですので、現在妊娠していなくとも妊娠希望がある場合は申告していただき、投与の必要性を検討しましょう。
その他、慎重に投与する必要がある患者さま
肝障害がある方、食道に通過障害のある方(食道がんなど)、口から食事がとりにくい・あるいは口から食べることのできない方、高齢者、などに当てはまる場合はビブラマイシンの内服によって様々な体調の変化が起きる可能性があります。
ビブラマイシンとの併用に注意する必要のあるお薬
カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄剤、ビスマス塩、抗凝血剤(ワルファリン等)、カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、バルビツール酸誘導体、スルホニル尿素系血糖降下薬、経口避妊薬
ビブラマイシンはこれらの薬との飲み合わせが悪いと言われています。常用中のお薬がある場合は診察時にお薬手帳をご提示ください。
ビブラマイシンの患者さま負担・薬価について
ビブラマイシンは50mgの錠剤が12.5円/錠、100mgの錠剤が22円/錠です。添付文書通りに合計1週間分処方された場合、通常であれば100mg錠を合計で8錠(初日に2錠・以後1日1錠6日分)を受け取ることになります。この場合3割負担の患者さまだと52.8円の薬剤費となります(薬剤費のみの計算です)。
薬局によっては50mg錠しか取り扱いがない可能性があり、その場合は若干値段が異なります。
よくあるご質問
- ニキビの治療でビブラマイシンを数ヶ月内服しています。こんなに長く飲んでも大丈夫でしょうか?
- 一般的に、抗生物質を長期にわたり使用していると耐性菌ができてしまうリスクがあります。そのためニキビ治療においても内服抗菌薬の使用は3ヶ月以内にとどめることが推奨されています。ただし病状によっては3ヶ月以上でも薬の継続が必要と判断される場合もあります。治療方針は主治医とよく相談しましょう。
- ニキビに対する抗生物質としてミノマイシンを内服しています。ビブラマイシンとなにが違うのですか?
- 両方ともテトラサイクリン系に分類される抗生物質です。尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017ではどちらも炎症性のニキビに対して強く推奨されている治療法です。同等の効果が期待できる反面、ミノマイシンはめまいや色素沈着などの副作用の頻度が高く、さらに自己免疫疾患や薬剤性過敏症症候群などの重篤な副作用がある点に注意が必要とされています。とはいえ、どちらもよく処方されています。
- ビブラマイシンは市販薬として購入できますか?
- ビブラマイシンは処方箋がないと購入できません。医師の診察で投与の必要があると判断された場合に処方されます。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。