ハイチオールとは?
ハイチオール(一般名:L-システイン)は、生体の正常な代謝に欠かせないSH酵素の働きを高め、有害物の解毒やエネルギーの発生促進、皮膚代謝促進などをあらわす薬剤です。皮膚代謝の正常化、抗アレルギー、解毒などの作用のほか、放射線療法にともなう白血球減少症にも応用されています。
ハイチオールの使い方
ハイチオールは、湿疹や中毒疹、薬疹、じん麻疹、尋常性ざ瘡、多形滲出性紅斑のほか、放射線障害による白血球減少症に適応があります。
湿疹などの皮膚疾患に使用する場合、成人には通常1日2~3回、1回につきL-システイン80mgを投与します(下表参照)。
放射線障害による白血球減少症に使用する場合、成人には通常1日3回、1回につきL-システイン160mgを投与します(下表参照)。なお、投与は放射線照射1時間前より開始します。
ハイチオール(L-システイン)の特徴
ハイチオールの成分であるL-システインはたんぱく質を構成するアミノ酸の一種で、皮膚代謝(ターンオーバー)を正常化する作用や解毒(抗酸化)作用、体のエネルギー産生をサポートする作用があるとされています。
特に皮膚については、色素沈着に関与するメラニン色素の生成をおさえたり、メラニン色素の体外排出を促進したりする作用があるため、L-システインとビタミンC・ビタミンB群を配合した市販薬がしみ・そばかす対策として多数販売されています。
また、L-システインにはアルコール脱水素酵素・アセトアルデヒド脱水素酵素を活性化する作用もあるため、市販薬のなかには二日酔いの改善に適応を持つものもあります。
ハイチオールを服用する上での注意点
ハイチオールを服用できない方
添付文書上、ハイチオールの使用が禁忌となっている疾患や病態などはありません。
しかし、ハイチオールには主成分のL-システインだけではなく添加物も配合されています(下表)。したがって、添加物にアレルギーがある場合はハイチオールを服用できません。
ハイチオールの副作用
ハイチオールの副作用として、悪心や下痢、口渇、軽度の腹痛などが報告されています。
これらの副作用が発生することはごく稀(100人中0.6人程度)ですが、ハイチオールの服用にともない気になる症状があらわれた場合は早めにご相談ください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、ハイチオールとの併用が禁忌とされている薬剤や、併用に注意が必要とされている薬剤はありません。
ただし、ハイチオールの成分であるL-システインは市販薬に含まれていることがあります。そのため、併用している薬やサプリメントなどがある場合は、診察時にご相談ください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方への使用に関して
ハイチオールは、妊娠中に服用しても特に問題はないとされています。しかし、妊娠中は体が非常にデリケートな状態になっています。そのため、妊娠中あるいは妊娠の可能性のある方は、診察時にご相談ください。
なお、授乳中の服用については特に問題ありません。
ご高齢の方への使用
ご高齢の方は一般的に生理機能が低下しています。
そのため、ハイチオールの使用にあたっては、症状や体調変化に合わせて投与量を減らすなどして慎重に治療を進めていきます。
ハイチオールの患者さま負担・薬価について
ハイチオールの薬価は以下のとおりです。
なお、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。
例えば、3割負担の患者さまがハイチオール錠80mgを1回1錠、1日3回30日分処方された場合、ご負担金額は153.9円です(薬剤費のみの計算です)。
よくあるご質問
- 医療用のハイチオールの代わりに市販のハイチオールを使うことはできますか?
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医療用のハイチオールにはL-システインのみが含まれており、湿疹や中毒疹、薬疹、じん麻疹、尋常性ざ瘡、多形滲出性紅斑など、病気の治療のみに使用できます。
一方、市販のハイチオールシリーズにはL-システインのほか、ビタミンCやビタミンE、ビタミンB群などが含まれており、肌荒れだけではなく、シミやそばかすなどの色素沈着の減少、だるさ・二日酔いの症状軽減などに使用できるものもあります。
このように、医療用のハイチオールと市販のハイチオールシリーズでは、成分も適応疾患も大きく異なりますので、同じように使うことはできません。
なお、肌の悩みなどがある場合は診察時にご相談ください。症状に応じて治療や薬剤の処方などを検討いたします。
- ハイチオールは美白・美肌に良いのでしょうか?
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ハイチオールの成分であるL-システインには、肌のターンオーバーの正常化作用や抗酸化作用があり、メラニン色素の生成をおさえたりメラニン色素の体外排出を促進したりする作用もあるとされています。そのため、「ハイチオール(L-システイン)は美白に良い」と言われることもあります。
- ハイチオールを飲むと白髪になるという噂があります。本当ですか?
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ハイチオール(L-システイン)には、過剰なメラニンの生成を抑制して、シミの原因である黒色メラニンを無色に近づける作用があるとされています。また、ターンオーバーを正常化する作用もあるため、色素沈着を薄くする作用も期待できます。
これらのことが相まって「ハイチオールを飲むと白髪になる」と言われることがあるようですが、医学的な根拠は何も認められていません。
用法用量を守って使用する範囲では、白髪が特に増えることはないと考えられますので、ご安心ください。
- 牛乳アレルギーなのですが、ハイチオールを飲んでも大丈夫ですか?乳糖不耐症の場合はどうですか?
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牛乳アレルギーの方は、乳糖を含む薬剤・食品を摂取するとアレルギー症状を起こすおそれがあります。乳糖不耐症の方は、乳糖を含む薬剤・食品を摂取すると下痢や腹痛、嘔吐などを起こすことがあります。
医療用のハイチオールのうち、ハイチオール散は少量ですが乳糖を含むため、牛乳アレルギーの方や乳糖不耐症の方は服用を避けるほうが無難です。
もっとも、ハイチオール錠40・ハイチオール錠80には乳糖水和物が含まれていないため、牛乳アレルギーの方や乳糖不耐症の方でも服用できます。
予期せぬ副作用を防ぐためにも、乳糖不耐症の方・牛乳アレルギーの方は、診察時にその旨をお伝えください。
- ハイチオールを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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ハイチオールを飲み忘れたら、気が付いたときにすぐに1回分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は飲み忘れた分を服用せず、次の服用タイミングで1回分を服用してください。その際、絶対に2回分を飲んではいけません。