水ぼうそう(水痘)とは?
水ぼうそう(水痘)はヒトヘルペスウイルス3型(水痘帯状疱疹ウイルス)が原因となって引き起こされる急性の全身感染症の一種で、皮膚に病変が出現するもの。顔を含む全身が患部となることがあり、特に小児期に多く見られます。潰瘍化した病変は、口腔内・中咽頭・上気道・直腸・膣・眼瞼結膜などの粘膜部位に現れることもあります。
潜伏期間は感染から2週間ほどです。水ぼうそうは、症状の進行につれて病変が次々と現れます。感染初期は軽度の頭痛、発熱、倦怠感などが、病変の現れる24~36時間前に現れるケースがよく見られます。初期の発疹は紅斑(皮膚表面に赤い発疹がぽつぽつできる)になります。変化は早く、数時間以内で丘疹に進行。このとき、涙滴状の小さな水疱が同時に出現することがあり、強い痒みを伴います。
後期では膿疱へと変わってゆき、発症から20日前後たつと最終的に痂皮化(かさぶたになる)します。ただし、発疹は次々と出現するので、ひとつの患部が落ち着いてきた頃には、別の部位に斑状発疹が新たに出てきます。
一部の乳児は、胎盤を介して免疫を部分的に獲得し、生後6か月頃まで維持するとされていますが、詳細はまだ明らかになっていません。また、感染すると終生免疫を得ることができます。
日本では水ぼうそうは年間100万人ほどが発症し、うち入院者は4,000人、死亡に至る人は20人ほどいると統計上推定されています。9歳以下での発症が90%以上です。
水ぼうそう(水痘)の原因
免疫機能が正常に働いている小児では水ぼうそうが重症化することはほとんどありません。
ただし、T細胞免疫が抑制されているなど易感染状態の小児、コルチコステロイドの投薬治療や化学療法を受けている人、成人では、重篤化する危険性があります。
なお、小児では熱性けいれん、肺炎、気管支炎などの合併症によって重症化することがあります。
感染力が非常に強く、感染者の唾液などの飛沫あるいはエアロゾル粒子を媒介とした空気感染、ウイルスが粘膜につくと感染が広がります。また、皮膚病変の部位に触れるなど、直接ウイルスと接触することでも感染は起こります。
水ぼうそうの感染力が最も強くなるのは前駆期と発疹期の最初のうちで、最初の皮膚病変が現れる48時間前の段階~最後の病変部位が痂皮化する段階まで感染性を持っています。
水ぼうそう(水痘)の診断
問診と視診で臨床的な評価が出ます。水ぼうそうは特徴的な発疹があるため、目視で「これは水痘ではないか」というところから診断が始まります。その後しばしば、水ぼうそうと症状の似た皮膚ウイルス感染症との識別が必要になることがあります。
確定診断として、現在ではデルマクイックという、水痘・帯状疱疹ウイルス抗原キットがあるため、皮疹の内容物があれば、結果は10分で出ます。その他、PCR検査を用いてウイルスDNAを検出する方法や、血清学的検査、蛍光抗体法による病変部検体からのウイルス抗原やウイルスの培養といった方法があります。
水ぼうそう(水痘)の治療
水ぼうそうの治療は、ワクチンによる予防法と対症療法とがあります。
水ぼうそうを対象としたワクチンの定期摂取は平成26年10月1日から開始されました。日本では下内乾燥弱毒生水痘ワクチンが用いられており、1回目の接種で重症の水ぼうそうを100%近く予防でき、2回目の接種では軽度のものも含めて発症を抑え込めるとさえています。
水痘ワクチンは生後12月~36月までの間にある乳幼児を対象に、2回の定期摂取を行います(期間内は無料で接種を受けられます)。1回目と2回目の間は3カ月以上経過することが提唱されえいますが、標準としては1回目接種後6カ月~12カ月まで経過した時期に行われます。
実際に水ぼうそうにかかってしまった場合は、症状を緩和させる対症療法を用いながら、自然治癒を目指します。良好な状態では予後7~10日ほどで治癒します。医療機関を受診して、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬の処方を受けましょう。中等度~重度の疾患になるリスクがあると考えられた場合は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)などの内服薬が必要となります。
その他の治療
高熱が出ている場合は解熱薬を使用しますが、小児ではアスピリンなどで重い副作用がでることがあるため、薬の種類は医師の判断を仰いで使用してください。
二次感染を防ぐために、定期的に入浴してやさしく洗浄し、患部は清潔にしましょう。抗菌外用薬などを、綿棒を使って塗布します。感染の広がりを防ぐために指で薬を患部に塗布するのはやめましょう。爪を短く切り、下着なども清潔に保ちます。
水ぼうそう(水痘)の予防や注意事項
子どもが水ぼうそうにかかった場合、感染力が非常に強いため、保育園や学校に通うのは一時的に禁止されます。厚生労働省は、すべての水疱がかさぶたになったら登校が可能だと定めていますが、実際に登校を開始できるタイミングは医師にかならず確認してください。
ワクチン接種の禁忌もあります。
- ・妊娠中の女性、およびワクチン接種から1カ月以内に妊娠予定のある女性
- ・ワクチン接種から3カ月以内の人
- ・易感染性患者
- ・サリチル酸を使用している小児
- ・コルチコステロイドを高用量で全身投与されている患者
- ・急性疾患(中等度~重度)を併発している患者は、消失まで接種を延期する必要がある
ワクチンを受けられるかどうかは医師の適切な診断を受けてから判断しましょう。