きず(創傷)湿潤療法

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急性皮膚創傷と慢性皮膚創傷

きずの写真

けがをしたときには切り傷や刺し傷、擦り傷などさまざまな傷の状態があります。けがをしたときに消毒をするべきなのか、洗うだけでいいのか、絆創膏がいいのかガーゼがいいのかなどどのように対処するのがいいか困るかたもいるのではないでしょうか。

抗生剤が発見される以前の治療は感染をコントロールすることがいちばん重要視されてきました。そのため、傷口をみたら消毒して、乾燥させてなおすという認識がながく定着していましたが、けがの処置も変わってきています。

私が子供のころは怪我をすると赤チンを塗ったり、マキロンやオキシドールなどで消毒をしたりしていました。またキズドライでパウダーを吹きかけて乾燥させるといったことも行っていました。このような従来の治療法はかさぶたをつくり、皮膚の再生を遅らせます。その結果、傷の治りが遅く傷あとも残ってしまいます。
傷口から出てくる浸出液は、実は皮膚の再生を促して傷の修復を早める作用があることがわかってきました。つまりこの浸出液を封じ込め、湿った状態を保つことで治りも速く、より綺麗に皮膚が再生されるという治療法が湿潤療法です。

» 湿潤療法(ハイドロコロイド)の詳細はこちら

けがの仕方できずの治療法にちがいはありません。すぐに治ってしまうような傷(急性皮膚創傷)、なかなか治らない傷(慢性皮膚創傷)、どんな傷にもいえることですが、傷が治りやすい環境を整えてあげること(創面環境調整:wound bed preparation)が大切になります。

きずの治し方

傷口の汚い部分をしっかり取り去ってきれいに洗うことがまずはいちばん大切です。そのときに、最初に汚い部分は取り去る必要がありますが、組織を壊してしまうためゴシゴシとこすったりする必要はないので優しく洗うようにしてください。

傷口の周りが赤く腫れ上がっていたり熱をもっている場合には感染しているので、抗生剤をつかう必要があります。しかし、傷口がきれいな状態であれば消毒や薬を使う必要はなく、そのまま傷口を適度に湿らせた状態をたもつことが傷を治るための環境になるのです

傷口を湿らせた状態で傷をなおすことを湿潤治療といい、傷口をおおうためのテープをドレッシング材といいます。従来のようにガーゼで傷口を覆うと、傷口が乾燥しやすく、交換するときにせっかく治ってきた傷をまた傷つけてしまうためけがの治りが遅いと考えられるようになってきました。
その代わりに登場したのがドレッシング材で、当院では湿潤治療をおこなう場合にハイドロコロイドなどのドレッシング材をつかっています。

ハイドロコロイドは表面が防水になっているので日常生活ではがれにくく、内部はしっかり湿潤環境をつくることで傷の治りを促します。半透明なので内部を観察しやすいのも特徴です。

傷口の洗い方

傷口を洗うときに気をつけたいのは、優しく洗うこと。ガーゼなどで傷をこすると痛みがつよくでてしまうため優しく洗い流します。そのときには水道水でかまいませんが、冷たい水では痛みが強くでるため体温に近いものほど痛みは軽減されます。

湿潤療法のメリット

痛みが少ない

湿潤療法は最初に傷口を洗って湿潤環境を作った後は、そのままの状態を保つようにします。ガーゼと違い傷がくっつかないので交換する際にも痛くありません。また、消毒液を使用しない点も痛みの少なさにつながります。

傷の治りが早く、傷あとが目立たない

人が本来持っている傷の再生能力を高める治療法なので、傷の治りは早く傷あとは目立たないことが期待できます。この治療法を知って娘のじゅくじゅくの擦り傷の治療をしたところ、1週間後にはがしたら跡形もなく治っていて驚きました。

傷の処置に困った場合や湿潤療法にご興味のある方はご相談ください。
 

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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。