やけど(熱傷)湿潤療法

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症状の概要

熱いお湯をかぶってしまった、火にかけたままの鍋に触れてしまったなど日常生活の中でちょっとしたやけどに遭遇することもあると思いますが、やけどといってもさまざまな種類があります。

やけどとは

やけどの深さ

「やけど」は「熱傷」とも表現します。皮膚が熱で損傷してしまうことを熱傷といい、熱傷の深さでⅠ~Ⅲ度に分類されます。Ⅰ~Ⅲ度の深さのやけどが身体のどのぐらいの範囲を占めているかにより軽症~重症まできまってくるのです。

また、重症度により治療法が変わってくるため重症度をみきわめるのはとても大切です。

やけどの原因

熱傷の原因となるのは火や熱いものに触れたときに皮膚が焼けてしまうことを思い浮かべるかもしれませんが、やけどの原因はほかにもあります。
火災で熱い水蒸気や煙、有毒ガスなどを吸い込んでしまうことで気道が焼けてしまうことを気道熱傷、化学薬品が皮膚や粘膜について組織が壊れてしまうことを化学熱傷、感電や落雷など電流が身体を流れることでおきる障害を電撃傷といいます。

症状

一般に、Ⅰ度の軽いやけどでは痛みはありますが、赤くなる程度で、やけどの痕ものこりません。少し深いところまでやけどになるⅡ度のやけどでは水疱ができ、痛みももちろんあります。Ⅱ度でも浅い部分でやけどがおさまる場合には1~2週間で治り、痕ものこりません。深い部分までやけどしてしまうⅡ度熱傷では皮膚の下の真皮というところまでやけどしてしまっており、治るのにも3~4週間かかり、治っても痕が残りケロイドになってしまうこともあります。
さらに深いⅢ度熱傷は皮膚が全部焼けてしまい、炭化して黒焦げの状態になってしまうことです。やけどの部分に皮膚が再びできることはなく、周りから傷口がしまっていくのに1~3ヶ月必要になります。植皮といって身体のほかの部分から皮膚をもってきて移植する手術をおこなうことで傷跡の状態がひどくなることを防ぎます。また、傷口はほぼ炭化しているため痛みもなくなってしまう状態です。

また、顔にやけどした場合などは気道熱傷の可能性を考えなければいけません。気道熱傷では気道が狭くなって息が出来なくなってしまうことがあるためすばやい対処が必要です。

診断

Ⅱ~Ⅲ度の熱傷が身体のどのぐらいの面積を占めているのかを計算して重症度を決めます。また、年齢により年齢が若いほど頭の面積が広く、足の面積が狭く換算されます。

Ⅲ度以上のひどいやけどがある場合、Ⅱ度でも身体の1/4くらいを占めるような広範囲の場合には中等度熱傷以上であり入院が必要となります。また、顔や会陰部のやけど、気道熱傷や電撃症の場合には重症に分類されます。
Ⅰ度熱傷だけの場合や水疱ができるようなⅡ度熱傷があってもごく小さな範囲であればあくまでも軽症です。

熱傷指数(Burn Index: BI =1/2×Ⅱ度熱傷面積+Ⅲ度熱傷面積)といってやけどの範囲から求める数値が高いほど重症であり、さらに、年齢を足した熱傷予後指数(prognostic burn index: PBI =年齢+BI)は数値が高いほど致命的とされています。

ひどいやけどの範囲が広ければ広いほど、また、年齢が高齢であればあるほどやけどにより命を落としやすくなるということです。

やけどセルフチェック

該当する項目を選んでください。

症状が1番目の状態にとどまる場合は、I度のやけどです。
症状が2番目の項目に該当する場合は、II度のやけどです。
症状が3番目の項目に該当する場合は、III度のやけどです。
症状が2番目あるいは3番目の項目に該当し、やけどの範囲が4番目の項目に該当する場合は、広範囲のやけどと診断されます。
もっとも、やけどの深さは判断が難しいものです。また、II度以上のやけどは、適切な治療を受けないと跡が残ることもあります。したがって、明らかに軽度のやけどでない限り、受診して治療を受けることをおすすめします。
なお、軽度のやけどであっても範囲が広い場合は、すぐに医療機関を受診してください。治療が遅れると、命に関わるおそれがあります。

治療

入院を必要とするような中等症以上のやけどの場合には、入院して抗生剤や点滴をおこなうなどの処置をおこなっていきます。全身の臓器に影響がでてしまう危険な状態も考えられ、人工呼吸器管理などが必要になることもあるのです。

入院をするほどでない軽いやけどで赤みがあるだけの状態や、水疱があっても狭い範囲にとどまる場合にはまずは水で洗い流します。やけどの治療でもけがをしたときと同じように感染しないために傷口を水で流し、きれいにしておくことが大切になってくるのです。

また、傷口の消毒については特に必要ではなく、創部が感染して炎症をおこしているような場合には抗生剤を塗るような処置が必要となってきます。炎症がない場合にはけがをしたときと同じように湿潤治療がおこなわれます。ドレッシング材をつかうことで傷の治りがはやくなるのです。
当院ではハイドロコロイドというドレッシング材を使っています。Ⅱ度熱傷では水疱がありますが水疱を取り除いた上でドレッシング材を貼っていくのです。

» 湿潤療法(ハイドロコロイド)の詳細はこちら

湿潤療法のメリット

痛みが少ない

湿潤療法は最初にやけどの部位を冷やして湿潤環境を作った後は、そのままの状態を保つようにします。ガーゼだとくっついてしまうため、交換するたびに出血することも多いですが、湿潤療法は患部にくっつかないので交換する際にも痛くありません。また、消毒液を使用しない点も痛みの少なさにつながります。

やけどの治りが早い

湿潤療法は人が本来持っている再生能力を高める治療法なので、やけどの治りが早いことが期待できます。水ぶくれをとりのぞいたあと、やけどの深さによって浅い場合(びらん)にはそのまま覆い、少し深い場合(潰瘍)には表面の組織を取り除いてから覆います。浅い場合は2週間以内、少し深いと1か月ぐらいで治る場合が多いです。

やけどをした皮膚からは浸出液が多く出ることがあります。その場合、ガーゼをあてると浸出液を吸い取ったままくっついて固まってしまうため、交換時に皮膚がはがれ出血や回復のさまたげになることが多いです。当院のおすすめはメッシュ状になっていて浸出液を吸い取るにも関わらずくっつきにくいプラスモイスト(自費)です。
やけどの処置に困った場合や湿潤療法にご興味のある方はご相談ください。

注意・まとめ

自身では軽いと判断した熱傷でも思いのほかひどい状態だったりすることもありますし、子どもの場合にはやけどの範囲がせまいと感じても大人にくらべて身体に対する負担がとても大きく、命にかかわることがあります。
個人にあった治療法を相談の上、方針を決めていく必要があると考えますので悩まずにご相談ください。

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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。