サイバインコの概要
サイバインコとは?
サイバインコ錠(アブロシチニブ)は、1日1回服用時間の制限がない、アトピー性皮膚炎治療のための飲み薬です。ファイザー株式会社が製造販売しておりアトピー性皮膚炎の新薬として2021年12月13日に発売されました。50㎎・100mg・200mgの3剤形があります。新薬は先行して海外で発売され日本では遅れて発売されることが多いのですが、サイバインコは世界でもかなり早い段階での発売となりました。
発売されているほかのJAK阻害薬と違い、通常用量から減量したり増量したりできる点が特徴的です。
サイバインコの作用機序
サイバインコはオルミエント、リンヴォックと同様、JAK阻害薬と呼ばれるアトピー性皮膚炎の治療薬です。ATPとの結合を遮断することにより、JAKを選択的かつ可逆的に阻害しますので、投与を休薬すれば元に戻ります。
サイバインコの特徴
サイバインコのJAK1に対する生化学的な阻害活性は他の3種類のJAKアイソフォームと比較するとJAK2の28倍、JAK3の340倍、TYK2の43倍となっており、JAK1の選択性が高いと考えられています。
アトピー性皮膚炎における炎症をコントロールし、服用開始早期からかゆみや湿疹といった自覚症状の改善が期待できます。
サイバインコの適応患者さんについて
サイバインコは、既存治療では十分な効果が得られない成人および青少年(12歳以上18歳未満 体重制限なし)のアトピー性皮膚炎の患者さんにご使用いただけます。
既存治療とはステロイド外用薬やプロトピック軟膏などの抗炎症外用剤による適切な治療のことで、一定期間施行しても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及んでいる場合にサイバインコの導入を検討します。
※原則として、サイバインコ投与開始後も状態に応じて抗炎症外用剤を併用していただきます。
サイバインコに関してはアトピー専用フォームからご相談をお受けしています。受診される方はフォームをお送りの上ご予約をお願いします。
アトピー性皮膚炎全身療法の比較
デュピクセント、オルミエント、リンヴォック、サイバインコがアトピー性皮膚炎の治療薬として承認され、患者さまからどの薬剤が自分に適しているかご質問をいただく機会が増えてきました。そこで全身療法の薬剤の比較表を作成しました。公開されている情報や治療経験を通じての私見を加えて作成しています。今後、新たな情報や新薬が発売されましたら追加・修正していく予定です。
サイバインコの使用上の注意
- 腎機能障害のある患者さんは、サイバインコの用量の調節が必要です。
- 免疫を抑制するため、発熱や倦怠感、皮膚の感染症、咳が続く、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意してください。気になる症状があらわれた場合は、すみやかにご相談ください。
サイバインコの患者負担・薬価について
サイバインコの薬剤費 |
4週間(約1か月) |
100mgの場合 |
141,232.0円 |
3割負担 |
42,340円 |
200mgの場合 |
211,850.8円 |
3割負担 |
63,590円 |
サイバインコの薬価は50mg1錠2587.40円、100mg1錠5044.00円、200mg1錠7566.10円です。100㎎を服用した場合1か月(28日)で141,232.0円、三割負担の患者様で42,340円の薬剤費となります。200mgを服用した場合1か月で211,850.8円となり三割負担の患者様で63,590円の薬剤費となります。
※実際に窓口で支払う費用は、検査日や治療費、その他の薬剤費、ほかの病気のための治療費や薬剤費などを合計した金額になります。東京23区の医療証をお持ちであれば所得制限なく15歳まで医療費助成が受けられ自己負担額はございません。東京23区外にお住まいの方は通常の保険診療となります。
よくあるご質問
- サイバインコはどのくらいの期間で効果がでますか?
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かゆみであれば1~2日以内で効果を感じる患者さまが多いです。皮膚症状はかゆみに続いて改善していきます。なお症状によって投与量を調節(増やしたり減らしたり)することができます。
- サイバインコによる治療はいつまで続けたらよいですか?
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サイバインコは症状が改善したら休薬することができます。休薬後に症状が悪化しても、再開することで再度症状を改善できたという臨床結果(JADE REGIMEN試験)があります。
効果判定の目安は、投与開始から12週間とされています。サイバインコを毎日(1日1回)服用しても効果がみられない場合は、他剤による治療を検討します。
ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬等との併用により、一定期間症状が治まっている状態を維持できている場合には、サイバインコによる治療の一時中止などを検討します。当院では患者さまの経過をみて、いつまで続けるかご相談しながら治療を行っております。
- サイバインコにはどんな副作用はありますか?
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特徴的な副作用としては胃腸障害である「悪心(おしん)」があります。悪心とは吐き気のことです。
200mgから開始すると10人に1人くらい、100mgから開始する場合は50人に1人くらいに悪心の副作用が出ることがあります。
悪心が出る場合は飲み始めて1週間以内に発現することが多く、2週間ほどで落ち着いてきます。気持ちが悪くなっても制吐剤などで対処する方法や、食後に服用することで、悪心の発現が抑えられることが多いです。
- リンヴォックとの違いはなんですか?
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サイバインコはアトピー性皮膚炎の治療を目的として開発されたJAK阻害薬です。12歳以上の方であれば体重制限が無く、大人も子供も同じ用法用量で服用することが出来ます。皮膚に出る副作用(帯状疱疹やニキビなど)は、リンヴォックと比べると少ない傾向が見られます。
- サイバインコと併用できない薬はありますか?
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一緒に飲むことで効果や副作用が強く出たりする可能性があるお薬があります。今服用されている薬を確認してから処方いたしますので、お薬手帳など服用しているお薬がわかるものを持って受診いただくと確認がスムーズです。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。