リンヴォックの概要
リンヴォック錠(ウパダシチニブ)は、1日1回で服用時間の制限がない、アトピー性皮膚炎治療のための飲み薬です。アッヴィ合同会社が製造販売しており関節リウマチ、関節症性乾癬に続く3つ目の適応症として2021年8月25日に追加承認を取得しました。
アトピー性皮膚炎における炎症をコントロールし、服用開始早期からかゆみや湿疹といった自覚症状の改善が期待できます。
これまでの7.5mg、15mgの錠剤に加えて新たに30mg錠が発売されました。これで15㎎・30㎎いずれの投与量においても1日1錠での使用が可能となりました。
リンヴォックの特徴
リンヴォックはJAK阻害薬と呼ばれるアトピー性皮膚炎の治療薬です。
アトピー性皮膚炎には、IL-4(インターロイキン4)、IL-13、IL-31など多くの*サイトカインが関与しています。 *サイトカイン:細胞から細胞へ情報を伝達する物質で、本来は体を正常に機能させるために必要なタンパク質です。なんらかの原因で過剰に増えてしまうと、炎症やアレルギー症状などを引き起こします。 リンヴォックは、炎症の信号を伝える経路のひとつである「JAK-STAT(ジャック・スタット)経路」をブロックすることで、サイトカインが受容体にくっついても炎症やかゆみを引き起こす信号が細胞核に伝わらないようにし、アトピー性皮膚炎の症状に関与する複数のサイトカインの働きを抑えることで、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。
またリンヴォックはJAK1選択性が高いという特徴がありますので、高い効果と安全性が期待できると言われております。
リンヴォックの使い方
リンヴォックは1日1回の飲み薬です。服薬時間の制限はありませんので、1日の中で生活スタイルに合った時間帯に飲むことができます。
通常は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用しますが、患者さんの状態によっては、倍量の30mgが処方される場合もあります。
リンヴォックは、2020年に関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)、2021年に関節症性乾癬(psoriasis arthritis:PsA)を効能効果として発売されていることから、既に多くの患者さんに使用されている安全性プロファイルの揃った薬剤です(2021年9月時点)
リンヴォックの適応患者さんについて
リンヴォックは、今までの治療では十分な効果が得られない成人アトピー性皮膚炎患者さんにご使用いただけます。
12歳から使用可能なため、小児の患者様にもお使いできる薬剤です。
※具体的にはステロイド外用剤・プロトピック軟膏などの抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分な効果が得られない12歳以上のアトピー性皮膚炎の方が対象となります。
※原則として、リンヴォック投与開始後も状態に応じて抗炎症外用薬・保湿外用薬を併用していただきます。
リンヴォックに関してはアトピー専用フォームからご相談をお受けしています。現在の状態や治療歴などの情報をあらかじめいただくことでより正確な診断につながります。受診される方はフォームをお送りの上ご予約をお願いします。
リンヴォックの薬価(薬剤の価格)や治療費について
リンヴォックの剤型別の薬価は以下の通りです。※2024年4月時点の情報に基づいています。
負担割合別・用量別に1カ月の患者さま負担を計算すると次の表となります。
※実際に窓口で支払う費用は、検査日や治療費、その他の薬剤費、ほかの病気のための治療費や薬剤費などを合計した金額になります。 各種、医療費助成制度に関しては患者さまの環境によって大きく異なるため、詳細をお聞きし受診時にご説明しております。
リンヴォックの副作用
おもな副作用として、上気道感染や気管支炎、悪心、腹痛、咳、毛包炎、ざ瘡(ニキビ)、頭痛、発熱、疲労感などが報告されています。
また、重大な副作用として、重篤な感染症、消化管穿孔、肝機能障害、間質性肺炎、重篤な過敏症などが報告されています。
リンヴォックの服用にともない下記のような症状があらわれた場合は、すみやかに受診してください。
リンヴォックとグレープフルーツジュースなどとの飲み合わせについて
リンヴォックは、CYP3Aという酵素でおもに代謝されます。そのため、CYP3Aを強く阻害する薬剤や食品、CYP3Aを強く誘導する薬剤や食品との併用には注意が必要です。
CYP3Aを強く阻害する食品としてよく知られているのが、グレープフルーツです。リンヴォック服用中にグレープフルーツを摂取すると有効成分の血中濃度が上昇するおそれがあるため、摂取は避けてください。
なお、グレープフルーツの影響は長時間続くことがあります。そのため、リンヴォックの服用時間とグレープフルーツを食べる時間をずらしたとしても、リンヴォックの作用が強くあらわれるおそれがあります。そのため、リンヴォック服用中はグレープフルーツの摂取は厳禁です。
また、CYP3Aを強く誘導する食品としては、セントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)があります。リンヴォックとセントジョーンズワート含有食品を併用するとリンヴォックの血中濃度が低下して十分な効果が得られないおそれがありますので、こちらも摂取を避けてください。
リンヴォックを服用できない方
以下に該当する場合は、リンヴォックの服用が禁忌とされています。
- リンヴォックの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 重篤な感染症(敗血症など)に罹患している場合(症状が悪化するおそれがあります。)
- 活動性結核に罹患している場合(症状が悪化するおそれがあります。)
- 重度の肝機能障害がある場合(国内外で実施された臨床試験では重度の肝機能障害を有する方を対象から除いているため、安全性が確立していません。)
- 好中球数が1,000/mm3未満の場合(症状がさらに悪化するおそれがあります。)
- リンパ球数が500/mm3未満の場合(症状がさらに悪化するおそれがあります。)
- ヘモグロビン値が8g/dL未満の場合(症状がさらに悪化するおそれがあります。)
- 妊娠中の方または妊娠している可能性のある方(動物に高用量を投与した試験および類薬の投与で、催奇形性が認められています。)
患者様向けのサポート(無償)
患者さんに安心して治療をしていただくために、クリニックでのサポート以外にもリンヴォックの服用や日常生活に関する疑問、不安の解消をお手伝いするサポートプログラムを各種ご用意しております。
» 「リンヴォック.jp」の詳細はこちら
アトピー性皮膚炎全身療法の比較
デュピクセント、オルミエント、リンヴォック、サイバインコがアトピー性皮膚炎の治療薬として承認され、患者さまからどの薬剤が自分に適しているかご質問をいただく機会が増えてきました。そこで全身療法の薬剤の比較表を作成しました。公開されている情報や治療経験を通じての私見を加えて作成しています。今後、新たな情報や新薬が発売されましたら追加・修正していく予定です。
リンヴォックとデュピクセントの比較
近年使えるようになった全身治療薬のうち、当院で使用経験が多いデュピクセントとリンヴォックについて、様々な角度で比較・検討しました。薬剤選択に迷われる患者さまにお役立ていただけると幸いです。
»治療薬検討会のコラムはこちら
セルフPOEMスコアチェック
自覚症状の評価指標としてアトピー性皮膚炎の重症度を判断するPOEMスコアを採用しています。症状に該当するボタンを押すだけで簡便にPOEMスコアが測定できるツールを掲載しています。ぜひ一度お試しください。
よくあるご質問
- どのような方が対象になりますか?
- 従来の治療では十分な効果が得られない12歳以上のアトピー性皮膚炎患者さんにご使用いただけます。
- どのくらいで効果が期待できるのでしょうか?
- 臨床試験の結果によると、投与開始翌日には有意なかゆみの改善が認められています。
- 症状がおさまったら飲むのをやめてよいですか?
- 薬の作用で炎症を抑えているため、急にやめると症状が悪化する可能性があります。自己判断で服用中止や減量は行わずご相談ください。
- 投与前の検査は何が必要ですか?
- 血液検査と胸部X線検査(レントゲン)が必要です。血液検査は当院で行います。胸部X線検査は半年以内の健康診断の結果がある方はお持ちください。お持ちでない方は当院ビル3階の内科医院にて撮影が可能です。
- 食事の影響はありますか?
- 食事の影響を受けないので食事に関係なく服用できます。
一緒に服用する他薬剤との関係性も確認が必要ですので、お薬手帳などで確認致します。
- リンヴォック®はいつ服用したらよいですか?
- リンヴォック®は服用時間に制限がないため、食事の時間などを気にせず服用することができます。服薬時間の制限はありませんので1日の中でご自分の生活スタイルにあった時間帯に飲むことができます。ただし飲み忘れを防ぐために1日1回同じ時間に飲むようにすることをおすすめします。
- 服用し忘れたときはどうしたら良いのでしょうか?
- 気がついたときにできるだけ早く1回分を服用してください。その後、通常の通り1日1回服用してください。丸一日服用を忘れてしまった場合は、飲み忘れた分は飛ばして、翌日のいつもの時間に1回だけ服用してください。同日に2回分をまとめて服用しないでください。
- リンヴォックを投与していても新型コロナワクチンを接種して問題ないのでしょうか?
- リンヴォック投与中の生ワクチン接種は行えませんが、不活化ワクチンの併用投与は可能です。NIH(米国国立衛生研究所)および DHHS (米国保健社会福祉省)におけるワクチンの分類では、新型コロナウイルスワクチンは非生ワクチンとして分類されており、現時点ではリンヴォックの投与は可能と考えられます。
- 小児のアトピー治療はどんな治療をするの?
- これまでは外用薬による治療がほとんどでした。お子さまは外用薬の反応性が良く、多くの方が外用薬治療で症状改善が見込めます。一方で、症状が軽快せず、成長が進んでもアトピーが良くならないという方もいらっしゃいます。そんな中リンヴォックが新たに治療選択肢として加わりました。12歳以上、体重30㎏以上の方にお使いいただけます。
- 小児のリンヴォックの安全性は?
- 小児における有効性と安全性は成人と同等の結果が出ております。ただし免疫を抑えるため感染症に気を付ける必要があります。帯状疱疹・ざ瘡(にきび)などの副作用がみられますが、いずれも皮膚科の疾患であり有効性と副作用のバランスを見て適切に治療いたします。
- 小児の薬剤費負担はどうなるの?
- 当院は東京都豊島区にありますので東京23区の医療証をお持ちであれば所得制限なく15歳まで医療費助成が受けられ自己負担額はございません。23区外にお住まいの方は通常の保険診療となります。(自己負担が一定額を超えると高額療養費制度などの様々な助成制度がございます。)
- なぜ小児のアトピー治療に力を入れているの?
- 私の娘もかゆみに苦しんでいます。かゆみを我慢できず肌をかき壊してしまった患者さまを診察していると、どうにかして早く改善してあげたいと強く願います。見た目でコンプレックスを抱えたり、受験のストレスが待ちうけていたりするお子様にとって、アトピーは身体的にも精神的にも負担が大きく人生を左右する疾患です。新たな治療にご興味をお持ちの方、症状にお困りの方はぜひご相談下さい。
- 困ったときの相談窓口はありますか?
- リンヴォック製造販売元のアッヴィくすり相談室があります。
お気軽にご相談ください。
TEL:0120-587-874
受付時間:9:00~17:30(土日・祝日、当社休日を除く)