キプレスとは?
キプレス(一般名:モンテルカストナトリウム)は、気道・鼻粘膜の炎症や気道の収縮に関与するロイコトリエンの働きをおさえて、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の諸症状を改善する薬剤です。
名称の由来は、喘息症状の寛解状態を維持するという意味で、「キープ(維持)+レスト(寛解期)」=「キプレス」と命名されました。
なお、併売品であるシングレアは、錠剤の刻印やシートは異なるものの、主成分・添加物ともまったく同じ薬剤です。
キプレスの特徴
気管支喘息への作用
キプレスは、気管支拡張作用と抗炎症作用を併せ持つ薬剤です。続けて使用することで気管支の炎症を継続的に抑制し、喘息発作を起こりにくくします。
ただし、喘息発作を直接おさえる作用はありません。発作を止めるには、「発作治療薬(リリーバー)」と呼ばれる即効性のある薬が必要になります。
なお、キプレスを服用すると数日で喘息症状はあらわれにくくなりますが、気道の炎症は続いています。症状が落ち着いてきても、指示された期間内は服用を継続してください。自己判断で量を加減したり治療を中止したりすると、症状が悪化するおそれがあります。
アレルギー性鼻炎への作用
キプレスは、鼻粘膜において抗炎症作用・過敏性抑制作用を発揮します。くしゃみや鼻水だけでなく、従来の抗ヒスタミン薬では十分な効果が期待できない鼻づまりにも有効なため、鼻づまりをともなうアレルギー性鼻炎に適しています。
キプレスを使用できる年齢・疾患
キプレスは、1歳以上の小児から成人・高齢者まで使用できます。ただし、剤型により使用対象者や適応疾患が決まっています。
キプレスの使い方
キプレスは作用時間が長いため、いずれの剤型でも1日1回、就寝前の服用で持続的な効果が得られます。
錠剤の場合
成人の気管支喘息に用いる場合は、通常10mgを1日1回就寝前に内服します。
成人のアレルギー性鼻炎に用いる場合は、通常5~10mgを1日1回就寝前に内服します。
OD錠の場合
OD錠(口腔崩壊錠)の用法用量は普通錠と同じです。水とともに服用しても水なしで服用しても、普通錠と効果は変わりません。ただし、取り出す際には特別な注意が必要です。
まず、ミシン目に沿ってシートをしっかりと折り曲げて切り離してください。そして、裏側のシートを矢印方向に完全に剥がしたあと、錠剤をやさしく取り出してください。
割れたり欠けたりしていることがありますが、品質に問題はありません。かけらも含めて1錠分すべてを服用してください。
なお、キプレスOD錠は水分ですぐに崩壊してしまうため、濡れた手で触れると溶けてしまいます。必ず乾いた手で、錠剤にさわるようにしてください。
チュアブル錠の場合
6歳以上の小児の気管支喘息に、5mgを1日1回就寝前に投与します。服用の際には、錠剤をなめて溶かす・あるいはかみ砕いて服用するようにお子さまに伝えてください。
なお、キプレスチュアブル錠にはチェリー風の味がついています。
細粒の場合
1歳以上6歳未満の小児の気管支喘息に、4mg(1包)を1日1回就寝前に投与します。
味はわずかに甘く、口の中ですぐに溶けるため、幼いお子さまでも飲みやすくなっています。ただし、光に不安定なので、開封後直ちに(15分以内に)服用させてください。
キプレスを服用する上の注意点
キプレスで過敏症の既往歴がある方は、服用を避けなければなりません。
また、ごく稀ですがキプレスの服用による副作用も報告されています。特に重篤な副作用とその初期症状は、以下のとおりです。
これらの副作用は、服用した場合に必ず起きるものではありません。ただし、キプレスを服用して体調に変化があらわれた場合は、早めにご相談ください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
キプレスとの併用に注意が必要な薬として、フェノバルビタール(抗けいれん薬)があります。フェノバルビタールを服用すると、薬物代謝酵素の一種であるCYP3A4が誘導されてキプレスの代謝が促進されるため、キプレスの作用が弱くなるおそれがあります。
特定の患者さまの使用に関して
妊娠中または授乳中の方の使用
妊娠中の方に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に使用されます。授乳中の方に対しては、動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されているため、慎重に判断します。
お子さまの使用
1歳以上のお子さまの服用については特に差し支えありませんが、1歳未満の乳児・新生児・低出生体重児に対する安全性は確立していないため、原則として使用しません。
ご高齢の方の使用
ご高齢の方の使用に関しては特に問題はありません。
キプレスの患者負担・薬価について
キプレスの薬価は以下のとおりです。
よくあるご質問
- キプレスと同じ成分の市販薬はありますか?
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キプレスと同じ成分の市販薬は販売されていません。キプレスと同じロイコトリエン受容体拮抗薬に分類されるオノン(プランルカスト水和物)も市販されていません。アレルギー症状をおさえる薬としては抗アレルギー薬などで市販されているものもありますが、キプレスとは作用機序が異なります。そのため、市販薬をキプレスの代わりに使用することはおすすめできません。
- キプレスチュアブル錠を子どもが噛まずに飲み込んでしまいました。もう1錠服用させたほうがいいですか?
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キプレスチュアブル錠は、噛まずにそのまま飲み込んでしまっても効果に影響はありません。追加でさらに1錠飲ませる必要はありませんので、ご安心ください。ただし、キプレスチュアブル錠は普通錠に比べてサイズが大きめです。味が苦手などの理由でお子さまが噛むのを嫌がる場合は、半分に折ったり少し砕いたりしてから服用させてあげてください。なお、キプレス以外のチュアブル錠では、きちんと嚙み砕いて服用しなければ効果が十分にあらわれないものもあるので、注意が必要です。
- キプレスチュアブル錠5mgの代わりにキプレス錠5mgを使用してもいいですか?
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キプレスチュアブル錠5mgとキプレス錠5㎎は、1錠中に含まれるモンテルカストナトリウムの量は同じですが、生物学的に同等ではありません。チュアブル錠は普通錠と比較してバイオアベイラビリティが高いため、キプレスチュアブル錠5mgとキプレス錠5㎎を相互に代用するのは避けてください。
- キプレスを飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
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飲み忘れに気が付いたときに、すぐに1回分を服用すれば大丈夫です。ただし、次の服用時間が近い場合は忘れた分は服用せず、次の服用時間に1回分を服用してください。2回分を一度に飲む必要はありません。
- キプレス細粒をアイスクリームなどに混ぜてもいいですか?
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キプレス細粒は口の中に入れるとすぐに溶けるので水なしでも飲めますが、アイスクリームやゼリー、ヨーグルトなどに混ぜて飲ませても構いません。混ぜるアイスクリームなどの量をスプーン1杯分程度にしておけば、幼いお子さまでも無理なく全量を服用できます。
なお、キプレス細粒は光に不安定なため、開封後は15分以内に服用させてください。
- キプレスの用法はどうして「就寝前」なのですか?
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喘息の症状が夜間から早朝にかけてあらわれやすいためです。寝る前に飲むことで血中濃度を維持し、症状の悪化をおさえます。
- キプレスチュアブル錠もキプレス細粒も甘いので虫歯が心配です。大丈夫でしょうか?
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キプレスチュアブル錠・キプレス細粒の甘みは人工甘味料によるものです。虫歯の原因となる砂糖は使われていません。
通常の食後の歯磨きをしっかりしておけば、就寝前にキプレスチュアブル錠あるいは細粒を服用させても虫歯になる可能性はほとんどないとされていますので、ご安心ください。
- キプレス(モンテルカスト)を飲むと強い眠気が出ますか?
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キプレス(モンテルカスト)の眠気の副作用は報告されておりません。