モーラスとは?
モーラス(一般名:ケトプロフェン)は、非ステロイド性の鎮痛消炎外用薬です。プロスタグランジンの生合成抑制作用や血管透過性亢進抑制作用、白血球遊走阻止作用などを介して炎症をおさえ、痛みを緩和します。
皮膚科ではモーラステープによる光線過敏症の相談をされる方もいらっしゃいます。
モーラスの特徴
モーラスの主成分であるケトプロフェンは経皮吸収性に優れており、炎症・疼痛部位に直接到達して局所性に効果を発揮するのが特徴です。
筋肉痛の方を対象とした臨床試験では、従来のサリチル酸メチル含有貼付剤より優れた有効性が確認されています。また、変形関節症の方を対象とした臨床試験では、経口剤と同等の有用性が示されています。
モーラスの使い方
モーラスには、薄くて使用時の違和感が少ないテープ剤と、粘着性と伸縮性に優れ、関節などの屈曲伸展部位にもよくフィットするパップ剤があります。なお、パップ剤は1日1回貼り換えタイプと1日2回貼り換えタイプの2種類があります。
各剤型の効能効果および用法用量は以下のとおりです。
1日1回貼り換えタイプ
- モーラステープ20mg
- モーラステープL40mg
- モーラスパップXR120mg
- モーラスパップXR240mg
<効能効果>
下記疾患ならびに症状の鎮痛・消炎
腰痛症(筋・筋膜性腰痛症、変形性脊椎症、椎間板症、腰椎捻挫)、変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎(テニス肘など)、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛
関節リウマチにおける関節局所の鎮痛
1日2回貼り換えタイプ
<効能効果>
下記疾患ならびに症状の鎮痛・消炎
変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎(テニス肘など)、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛
モーラスを外用する上での注意点
モーラスを外用してはいけない例
以下の場合はモーラスの外用を避けなければなりません。該当する事項がある場合は、必ずご相談ください。
- モーラスの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛薬などによる喘息発作の誘発)またはその既往歴がある場合(喘息発作を誘発するおそれがあります。)
- チアプロフェン酸(非ステロイド性抗炎症成分)、スプロフェン(非ステロイド性抗炎症成分)、フェノフィブラート(高脂血症治療薬)ならびにオキシベンゾンおよびオクトクリレンを含有する製品(サンスクリーンや香水など)に対して過敏症の既往歴がある場合(これらの成分に対して過敏症の既往歴がある場合、モーラスでも過敏症を示すおそれがあります。)
- 光線過敏症の既往歴がある場合(光線過敏症を誘発するおそれがあります。)
その他、妊娠後期の方の使用も禁忌とされています(参照:特定の患者さまへの使用に関して)。
モーラスの使用に注意が必要な方
気管支喘息のある方の約10%に、アスピリン喘息の方が潜在していると考えられています。したがって、気管支喘息のある方へのモーラスの使用は「慎重投与」とされています。なお、モーラスによる喘息発作の誘発は、貼付から数時間で発現することがわかっています。
また、皮膚感染症がある場合も注意が必要です。モーラスは、皮膚の感染症を不顕性化するおそれがあります。そのため、モーラスを感染による炎症に対して用いる場合は、適切な抗菌剤または抗真菌剤を併用して、慎重に経過を観察しながら使用する必要があります。
副作用の「光線過敏症」について
モーラスの使用にあたり、特に注意しなければならない副作用として「光線過敏症」があります。
光線過敏症とは、日光などの照射を受けたあとに皮膚に炎症があらわれる症状です。
モーラスの使用にともなう光線過敏症の発症頻度は明らかになっていませんが、モーラスを貼付した部分に紫外線が当たると、強いそう痒をともなう紅斑、発疹、刺激感、腫脹、浮腫、水疱・びらんなどの重度の皮膚炎症状の他、色素沈着、色素脱失があらわれることがあります。さらには、全身に皮膚炎症状が拡大して重篤化する例も報告されています。
したがって、モーラスの使用にともない皮膚に異常が認められた場合は、直ちに使用を中止して貼付部位を遮光し、すみやかに受診してください。
なお、光線過敏症は使用から数日~数ヵ月経過後に発現することもあります。
その他のモーラスの副作用
光線過敏症以外の重大な副作用として、ショックやアナフィラキシー、喘息発作の誘発、接触皮膚炎などが報告されています。
他に報告されている副作用としては、局所の発疹や発赤、腫脹、そう痒感、刺激感、水疱やびらん、色素沈着、皮下出血、蕁麻疹、眼瞼浮腫、顔面浮腫、消化性潰瘍などがあります。
症状によっては、モーラスの中止や薬剤の変更が必要となるため、気になる症状があらわれた場合は早めに受診してください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、モーラスとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。
ただし、メトトレキサート(リウマチや白血病などの治療薬)と併用するとメトトレキサートの腎排泄が阻害されるおそれがあるため、注意が必要です。
光線過敏症の予防について
副作用である光線過敏症を予防するために、戸外に出る際はモーラスの貼付部を衣服やサポーターなどで覆って遮光してください。ただし、白い生地や薄手の衣類は紫外線を透過させるおそれがあります。したがって、紫外線を透過させにくい色の濃い衣服などを着用するようにしてください。
なお、光線過敏症は、モーラスの使用から数日~数カ月経過後に発現する場合もあります。剥がしたあとも、当分の間は貼付部位を日光に当てないように注意してください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方への使用に関して
ケトプロフェンの外用剤を妊娠後期の女性に使用すると胎児動脈管収縮が起きるおそれがあるため、モーラスの使用は禁忌とされています。
また、妊娠後期以外の妊婦・産婦・授乳婦などについては、モーラスの使用に関する安全性が確立していません。したがって、これらの方に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用を考慮します。
ご高齢の方への使用に関して
高齢の方については、類薬で副作用(接触皮膚炎)の発現率が有意に高かったことが報告されています。
そのため、高齢の方に使用する場合は、貼付部の皮膚の状態などに注意しながら使用の可否を慎重に判断します。
お子さまへの使用に関して
低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児に対してはモーラスの使用経験が少ないため、安全性が確立していません。
ご家庭では、お子さまの手の届く場所にモーラスを保管しないようご注意ください。また、自己判断でお子さまの筋肉痛などにモーラスを使用するのも避けてください。
モーラスの患者さま負担・薬価について
モーラスの各剤型・規格の薬剤費は以下のとおりです。
なお、患者さまにご負担いただくのは、保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがモーラステープ20mgを7枚(1袋)処方された場合、ご負担金額は40.53円です(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- モーラスと同じ成分の市販薬はありますか?
-
モーラスと同じようにケトプロフェンを含むパップ剤は市販されています。
しかし、市販薬はおもに一時的な鎮痛を目的としており、効能効果も「関節痛、腰痛、肩こりにともなう肩の痛み、肘の痛み(テニス肘など)、筋肉痛、腱鞘炎(手・手首の痛み)、打撲、捻挫」に限定されています。そのため、医療用のモーラスと同じように使用することはできません。
市販薬を5~6日ほど使用しても症状が良くならない場合は使用をやめ、診察を受けるようにしてください。
- モーラスを使いたいのですが、かぶれやすいので困っています。モーラスと同じ成分の医療用の塗り薬はありますか?薬局で変更を希望すれば替えてもらえますか?
-
モーラスと同じケトプロフェンを主成分とする医療用の塗り薬としては、セクターローションやセクタークリーム、セクターゲルなどがあります。
しかし、薬局で変更を希望しても、貼付剤を塗り薬に変更することはできません。
貼付剤ではなくローションやクリーム、ゲルなどをご希望の場合は、診察時にご相談ください。
- モーラステープ・モーラスパップ・モーラスパップXRのそれぞれの大きさを教えてください。
-
モーラスの各剤型・規格の大きさは以下のとおりです。
- 1日1回タイプのモーラステープL40mgとモーラスパップXR120mgは大きさが同じですが、どちらのほうが効果が強いですか?やはり数字の大きな120mgのほうですか?
-
たしかに、モーラステープテープL40mgはテープ1枚(質量2g)の中にケトプロフェンを40mg含有し、モーラスパップXR120mgはパップ剤1枚(質量6g)の中にケトプロフェンを120mg含有しています。
しかし、両剤は剤型が異なるため(テープ剤とパップ剤)、有効成分の量が多いことと効果が強いことは必ずしも相関しません。
実際、健康な人を対象とした臨床試験で、モーラステープL40mgとモーラスパップXR120mgは生物学的に同等であることが確認されています。
したがって、どちらを使っても同等の効果が得られますのでご安心ください。