ジルテックとは?
ジルテック(一般名:セチリジン塩酸塩)は、ヒスタミンH1受容体拮抗作用や好酸球遊走抑制作用、ケミカルメディエーター抑制作用を併せ持つ抗アレルギー薬です。通常は、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹、皮膚疾患にともなう痒みなどに使用されます。
ジルテックは、ヒスタミンH1受容体選択性が高く、抗コリン作用があらわれにくい第二世代の抗ヒスタミン薬です。そのため、従来からある抗ヒスタミン薬よりも口渇や排尿障害などの副作用はあらわれにくいとされています。
なお、「ジルテック」という名称は、有効成分セチリジンの英語表記「cetirizine」の最初から7文字目までの部分を逆順にしたZiritecから名付けられました。
ジルテックの特徴
ジルテックの適応疾患と使用できる年齢
ジルテックは、アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・皮膚疾患にともなうそう痒などに適応があります。
ドライシロップ・5mg錠・10mg錠の3種類がありますが、ドライシロップは2歳以上、5mg錠は7歳以上、10mg錠は成人に使用できます。
各剤型の用法用量は以下のとおりです(下表)。
小児の用法が1日2回とされている理由
ジルテックの小児の用法が1日2回とされているのは、以下のようなことが明らかになっているためです。
- 小児は成人に比べて有効成分の血中消失速度が速い。
- 小児に高用量を投与すると、最高血中濃度が一時的に高くなる。
- 1日1回投与にすると、同じ用量を1日2回に分けて投与した場合と比べて定常状態の最低血中濃度が低くなる。
これらのことから、有効性と安全性を確保するために小児の用法は1日2回とされています。
効果発現時間・持続時間
成人がジルテックを服用した場合、40分~1時間程度で効果があらわれ始め、1日1回の服用で24時間効果が持続します。
小児の場合、初回投与時は効果発現までに数時間かかる場合もありますが、1日2回、毎日服用することで効果発現に必要な血中濃度を維持できます。
ジルテックによる眠気の副作用と自動車運転の制限について
ジルテックは第二世代の抗ヒスタミン薬に分類され、眠気の副作用の発現率は0.1~5%未満と報告されています。特に小児については、眠気の副作用の発現率は1%程度と非常に低くなっています。
しかし、ジルテックは効果持続時間が長く、また、服用中に眠気の副作用が発現するかどうかは事前に予測できません。そのため、ジルテックを服用している間は、自動車の運転や高所での作業など危険をともなう動作・作業は避けてください。
ジルテックの服用方法
ドライシロップの場合
ジルテックドライシロップは、適量の水に溶かしてから服用してください。
大量の水に溶かすと飲み切るのが大変なので、少量の水に溶かして飲むのがおすすめです。
味は、飲みやすいストロベリーフレーバーです。
普通錠の場合
普通錠は、水や白湯で服用してください。
ジルテックの有効成分はわずかに苦みがあるため、普通錠は表面を特殊なフィルムでコーティングしています。口腔内に長くとどめるとフィルムが溶けて苦みを感じるおそれがあるため、ご注意ください。
なお、錠剤の服用が困難な場合は、ドライシロップに変更することも可能です。ジルテックドライシロップは小児だけではなく成人にも適応がありますので、錠剤が苦手な方は診察時にご相談ください。
ジルテックを服用する上での注意点
ジルテックを服用できない方
ジルテックの成分に過敏症の既往歴がある方は、ジルテックを服用できません。
また、同じような構造を持つピペラジン誘導体(レボセチリジン(ザイザルなど)、ヒドロキシジン(アタラックスなど)を含む)に対し過敏症の既往歴のある方も、ジルテックを服用できません。
その他、重度の腎機能障害のある方も、ジルテックの血中濃度増大などのリスクが高いため、服用できません。
腎機能障害を指摘されている方は、血液検査の結果などがありますと処方の可否が判断できますので、診察時にご持参ください。
ジルテックの副作用
ジルテックのおもな副作用としては、眠気やだるさ、口渇、吐き気、食欲不振などがあります。
その他、血液の異常(好酸球増多)、肝臓の検査値異常なども報告されています(いずれも、発生頻度は0.1~5%未満)。
また、重大な副作用として、ショックやアナフィラキシー(呼吸困難、血圧低下、蕁麻疹、発赤など)、痙攣、肝機能障害、黄疸、血小板減少などが報告されています。
重大な副作用の発生頻度はいずれも明らかになっていませんが、ジルテックの服用にともない気になる体調変化があらわれた場合は早めに受診してください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
添付文書上、ジルテックと併用禁忌とされている薬剤はありません。
しかし、以下の薬剤との併用には注意が必要です。
テオフィリン(気管支ぜんそくなどの治療薬):ジルテックの排泄量が減少することが報告されています。
リトナビル(抗ウイルス薬):ジルテックの排泄が阻害される可能性が報告されています。
ピルシカイニド塩酸塩水和物(不整脈治療薬):両剤の血中濃度が上昇し、ピルシカイニド塩酸塩水和物の副作用が発現したという報告があります。
アルコールとの併用に関して
ジルテックは、アルコールとの併用で中枢神経抑制作用が増強される可能性が指摘されています。
そのため、ジルテック服用時にアルコールを摂取すると、眠気やだるさなどの副作用がより強くあらわれるおそれがあります。
予期せぬ副作用の発現を防ぐためにも、ジルテック服用中の飲酒は極力避けるようにしてください。
特定の患者さまの使用に関して
腎機能障害を指摘されている方の使用
腎機能障害のある方では、ジルテックの血中濃度半減期の延長が認められ、血中濃度が増大することが明らかになっています。
腎機能障害の程度に応じて投与量の調節が必要となりますので、ご承知ください。
なお、血液検査の結果などをご持参いただけますと診療がスムーズに進みますので、ご協力をお願いいたします。
妊娠中または授乳中の方の使用
ジルテックは、動物を対象とした試験で胎盤を通過することが報告されています。
そのため、妊娠中の方や妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上まわる場合にのみ投与を検討します。
また、ジルテックはヒトの乳汁中への移行が認められています。
したがって、授乳中の方に投与する場合は治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討します。
お子さまの使用
ジルテックは、低出生体重児・新生児・乳児・2歳未満の幼児を対象とした臨床試験を実施していません。
ジルテックドライシロップを使用できるのは2歳以上、ジルテック錠5を使用できるのは7歳以上、ジルテック錠10を使用できるのは成人(15歳以上)ですので、ご承知ください。
ご家庭では、お子さまが誤って薬剤を口にしてしまうことがないように気を付けてください。
ご高齢の方への使用
ご高齢の方は一般的に腎機能をはじめとした生理機能が低下しているため、ジルテックを服用すると高い血中濃度が続くおそれがあります。
したがって、ご高齢の方にジルテックを処方する場合は、症状や合併症の有無なども考慮して用量用法を決定します。
ジルテックの患者さま負担・薬価について
ジルテックの薬価は以下のとおりです。
患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合に応じて変わります。
例えば、3割負担の患者さまがジルテック錠10を1日1回30日間処方された場合、ご負担金額は349.2円になります(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- ジルテックと同じ成分の市販薬はありますか?
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ジルテックと同じ成分の市販薬は、ドラッグストアなどで販売されています。
ただし、市販薬は成分量が10mgの製品しかなく、適応年齢は15歳以上です。また、効能効果は鼻アレルギー症状の緩和に限定されています。医療用のジルテックと同じようには使用できないため、ご注意ください。
- ジルテックを飲み忘れてしまいました。用法が「寝る前」となっているため、夜まで飲むのを待つほうがよいでしょうか。
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ジルテックを飲み忘れたら、気が付いたときにすぐ1回分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は1回分をとばし、次の服用タイミングに1回分を服用してください。2回分を一度に飲んではいけません。
なお、服用タイミングがいつもと違う場合、眠気などの副作用が強くあらわれるおそれがあります。眠気などがあらわれた場合は無理をせず、危険をともなう作業はしないでください。
- 季節性のアレルギー症状が出る前に、ジルテックを飲み始めるように言われました。なぜですか?
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ジルテックなど抗アレルギー薬を季節性アレルギーの症状が出る前に飲み始めると、アレルギーの原因物質であるヒスタミンの放出が早めにおさえられます。そのため、症状があらわれてから飲み始める場合より、高い効果が期待できます。
毎年季節性アレルギーの症状でお悩みの方は、アレルギーシーズンに入る前に受診することをおすすめします。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。