目次
症状の概要
巻き爪・陥入爪とは?
巻き爪と陥入爪(かんにゅうそう)は、いずれも爪が変形する症状です。同じものだと思われることが多いのですが、実際は別々の症状、治療法も異なるため区別して考える必要があります。ただし、巻き爪と陥入爪を併発することはあります。
巻き爪とは
爪の全体がロール状に湾曲する症状のことです。爪の両側または片側が内側に巻き込んでいる状態ですが、痛みや出血、炎症がなければ即座に治療をする必要は特にありません。
もともと爪には内側に湾曲する性質がありますが、普段から立ったり歩いたりしていると、地面からの圧がかかることで爪はまっすぐ正常な状態をキープすることができています。病気や老齢で寝たきりの人、あるいは車いすの生活をしている人は巻き爪になっていることが多いです。
陥入爪とは
第1 趾に見られることの多い症状で、爪の角が尖って皮膚・皮下組織に刺さっている状態をいいます。巻き爪と違って爪全体が丸くなることはありません。
食い込んだ爪の先は肉芽種様に盛り上がって炎症を起こし、圧迫すると爪の先が刺さって強い痛みがあります。また、傷口ができると細菌感染や化膿を起こす場合があります。
巻き爪・陥入爪の原因
巻き爪の原因
巻き爪の原因には、主に不適切な靴やストッキングを履くことで圧迫が強くなり、指への過剰な力が加わっって起こる外反母趾によるものや爪を切りすぎる「深爪」などがあります。
通常、人間が歩行するときには着地・蹴るという動作の中で、足指に体重よりはるかに大きな負荷がかかりますが、爪によってこの負荷に対抗し体を安定させることができます。
つまり力が加わらない状態が続くと爪はどんどん巻いていってしまうことになります。
歩いている方でも足を開きつま先が外を向いて歩く癖があると親指に体重が乗らないため巻き爪の原因になってしまいます。
しかし深爪の状態だと、これに対する抵抗力が小さいため指先の軟部組織が上のほうへ飛び出てしまいます。これが巻き爪を引き起こす原因となります。
巻き爪になると、痛みを避けるために歩いたり立ったりする量が減り、巻き爪が悪化するという悪い循環が起こることがあります。
陥入爪の原因
陥入爪の原因のほとんどは爪の切り方に問題があります。陥入爪の角を「痛いから」といって切りすぎると、一時的に痛みは軽くなりますが、また新しい角ができて再発するほか、重症化しやすくなります。
また、オーバーネイルと言って、生まれつき爪のサイズが指のサイズに比べて大きすぎて、爪が側爪部に食い込むというケースもまれにあります。
また、窮屈な靴やストッキングを履いていること、歩行に癖があって足にゆがみができることも陥入爪の原因になります。
巻き爪・陥入爪の診断
皮膚科や整形外科にて臨床的な診断が行われます。爪囲炎を起こしているか、その場合はどのような治療が適切かなどを判断します。
巻き爪・陥入爪の治療
巻き爪の治療
巻き爪の治療は、爪の湾曲を少しずつ改善させるような矯正療法がほとんどです。
例えば、弾力性のあるばねの力を使って爪の両端にひっかけ、ワイヤーまたはコイルによって内側に巻き込まれた爪に外へ引っ張る力をかけます。
「マチワイヤー法」は、爪に小さな穴をあけて、弾性ワイヤーを穴に通して固定することで、ワイヤーがまっすぐ戻ろうとする性質によって丸くなった爪を徐々に戻していきます。ただしこの方法は、ある程度長さのある爪でなくては使用できません。
「巻き爪マイスター法」は、巻き爪専用の強制具を使うもので、爪の白い部分が3mm以上あれば施術可能です。超弾性合金ワイヤーによって強制力を数か月間持続させることができるというものです。
これらの治療法の詳細は「巻き爪矯正治療」のページをご確認ください。
なお、外的要因によって爪の形が変わっているだけで病気ではないので、巻き爪は保険適用ではなく自費診療となります。
陥入爪の治療
陥入爪も巻き爪と同様に矯正法によって治療を行うことが多いです。上記のワイヤーを使う方法のほかに、ガター法などを行う場合があります。肉芽形成を伴っている陥入爪に対しては、食い込み部分にチューブを挿入することで、痛みを和らげる方法です。
痛みがある、赤くなっている、腫張しているといった症状があると爪囲炎を起こしている可能性が高いです。化膿している場合は、抗生物質の内服薬などを処方します。
その他の治療
軽度の巻き爪・陥入爪の場合は、市販のコットンを使って自分で痛みの処置をすることができます(コットンパッキング)。
お風呂に入った直後、爪がやわらかくなっているタイミングで、コットンを5mm前後の大きさにちぎって丸め、ピンセットで爪と皮膚があたる箇所に挟みます。毎日入浴後に取り替えて清潔を保ってください。継続して処置していると、コットンが押し返してくれるおかげで、陥入爪の食い込みがゆっくり和らいでいきます。
また、弾力のあるテープを爪近くの皮膚に貼って反対側に引っ張り、皮膚と爪との間をあけて食い込みを少なくするテーピングも、簡便にできます。
巻き爪・陥入爪の予防や注意事項
第一に爪を短く切りすぎないこと、爪の角をしっかり残して切ることが大切です。
爪の周囲を丸く切る習慣がある人が多いのですが、これは巻き爪や陥入爪の原因となるため間違いです。
爪の先が指より内側にならない程度に長さを残して、角を切り取らないようにしましょう。そのかわり、角の尖ったところは爪やすりで整えてください(「スクエアオフ法」と呼びます)。
陥入爪を長期的に改善するには爪を伸ばすことが効果的ですが、その過程で爪が軟部組織に刺さって痛みを感じたりします。その場合は、コットンパッキング法で痛みを和らげてください。毎日取り換えながら続けることで、爪と軟部組織の間に空間ができ、痛みを感じなくなります。その間に爪を伸ばしましょう。
また、足に合った靴やインソールを選ぶことも大事です。靴専門店や整形外科で正しく判断してもらい、インソールなどを作ってもらうといいでしょう。