最終更新日:2024年12月02日
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新型コロナウイルス感染症の症状
新型コロナウイルス感染症に罹患すると、さまざまな症状が出ることがこれまで確認されています。感染したのに症状が出ない、いわゆる「無症状」の人もいますが、初期症状あるいは軽度の場合は発熱やのどの痛み、せき、鼻水など風邪のような症状がみられることがあります。重症化すると肺炎を発症し、酸素吸入が必要なほど重い呼吸困難、敗血症ショック、血栓症、多臓器不全など、命にかかわる重大な疾患にもつながるケースがあります。
発熱や呼吸器系の症状があることはよく知られていますが、ほかにも、においや味がわからなくなる嗅覚・味覚症状や、下痢・嘔吐などの消化器症状、記憶力や思考力の低下などの意識障害といった、通常の風邪ではあまり見られない症状が多種類確認されています。
また、新型コロナウイルス感染症では皮膚症状が出るケースがあることも、これまで世界各国の研究で明らかになってきました。当院でも、新型コロナウイルスに感染した経験がある方や、現在罹患していて隔離中だという患者さんから、「皮膚症状が出現しているけど、どうすればいいか」といったご相談を受けることが多くあります。新型コロナウイルスの影響で、どのような皮膚症状が出ているのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症が原因と考えられる皮膚症状
当院に多く寄せられるご相談には、「新型コロナウイルスに感染したが、全身に赤いぶつぶつが見られた」といったお話が多いです。かゆみをともなう場合も一部にあるようです。
イタリアの研究データをまとめた報告では、88名の患者のうち18名(20.4%)に皮膚症状が現れたと記されています。皮膚症状の種類は、紅斑性発疹(赤いぶつぶつ)が14名、じんましんに似た湿疹が3名、みずぼうそうに似た湿疹が1名に見られました。皮膚症状が出現したタイミングは、発症と同時に現れた人もいれば、入院後になってから症状が確認された人もいます。
また、ベルギーやクウェートでも、新型コロナウイルス感染症の患者の指先に「しもやけ」のような皮膚症状が出現したと報告されています。しもやけは皮膚が赤くなって腫れたり硬くなったりする症状で、血流障害によって引き起こされるため一般的には寒冷な環境で見られることが多いです。ただ、血流障害は血管に炎症が起こる「血管炎」でも生じるため、新型コロナウイルスが血管に炎症を起こすことで、しもやけと同じ症状が現れたのではないかと考えられています。
さらに、タイでは、デング熱と同じような紅斑と点状の出血をともなう中毒疹(全身に赤みと発疹が出る症状)が出現したと確認されました。なお、中毒疹は体の免疫力が低下したときに出現しやすいと考えられます。
新型コロナウイルス感染症と皮膚症状の関連性
日本皮膚科学会でも新型コロナウイルス感染症と皮膚症状の関連性に注目しています。埼玉医科大学総合医療センター皮膚科の福田教授は、患者の年齢や体質によって、新型コロナウイルス感染症の皮膚症状は早期診断や、陽性患者のトリアージとそのリスク階層化に役立つ可能性があると述べています。
現時点では、指先などの末端に見られる凍傷のような発疹や紅斑性発疹は、無症状または軽傷の小児や若い患者の方に多くみられています。一方で、虚血性の病変などは、より重篤な経過をたどっている成人患者に多く確認されています。
また、もともとアトピー性皮膚炎などなんらかの原疾患を持っている患者さんの場合は、それらの症状が新型コロナウイルスによって憎悪(もともと悪かった症状が悪化すること)する可能性も十分考えられるでしょう。
このように、新型コロナウイルス感染症が世界中を覆っている現在、これらの皮膚症状が出現している場合は「もしかしたら自分も感染しているかもしれない」という意識を持って、人との接触を避けるといった行動をとることが大切になってきます。
もちろん、皮膚症状があることが新型コロナウイルスに感染している確たる証拠になるわけではなく、他の病気の可能性もあるため、医師による診断が必要であることに変わりはありません。
当院では初診からのオンライン診療に対応しております。新型コロナウイルス感染症自体の治療はできませんが、関連性が疑わしい皮膚症状の診察は可能です。ご希望の方は下記リンクよりお申込み下さい。
新型コロナウイルスのワクチン接種後の皮膚症状
新型コロナウイルスのワクチンを接種した後にじんましんのような症状が出現し、ワクチンの副反応ではないかと言われるケースが最近増えてきました。日本でも首相官邸が新型コロナウイルスのワクチンの副反応が疑われる事例を発表しています。
ワクチンの副反応としてのじんましんや腕の腫れ、赤みは認知が広がってきており、厚生労働省のホームページ(新型コロナワクチンQ&A)でも、「発疹がかゆい場合は、冷やす、あるいは抗アレルギー薬やステロイドの外用薬(軟膏等)を塗ることで症状が軽くなります。ワクチンの副反応であれば、数日で改善します。」と回答しています。
また、「モデルナ・アーム」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。モデルナワクチンを接種した後、数日~1週間ほどの間で、腕の摂取部位にかゆみや腫れ、赤み、熱感などが生じることについてこのように呼ばれています。ファイザー社製のワクチンでも同じような症状が出ることがあるようですが、頻度は比較的少ないようです。
ワクチン接種後にこうした副反応が起こる原因については、人体にそなわっている免疫細胞のT細胞がワクチンに反応することで炎症を引き起こすためだと考えられています。アトピー性皮膚炎やじんましんなどの原疾患を持っている場合は、ワクチンによって一時的に症状が悪化する可能性もあります。
健康への害はほとんどなく、数日で自然に治りますが、もし不快感が強い場合は抗アレルギー薬やステロイド外用薬を塗ることで症状が軽くなります。万が一、症状が重かったり、何日間も続いたりするようであれば、ご相談ください。
新型コロナウイルス感染症による皮膚疾患が心配な方へ
新型コロナウイルス感染症に罹患したとき、または、コロナワクチンを接種した後に、なんらかの皮膚症状が出現するというケースが数多く見られています。
もともと皮膚の疾患があるという方にも、特にそうした原疾患がないという方にも起こり得ます。前述したような皮膚症状が見られたり、発熱やせきといった他の症状をともなったりしている場合は、新型コロナウイルス感染症の可能性も考慮に入れるといいでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症を疑う皮膚症状があったとき、どうしても心配になってしまうものではありますが、すぐに医療機関に行って受診しようとすることは避けてください。周囲の人への感染を拡大する恐れがあるので、都道府県ごとの相談窓口に電話などで相談して指示をあおぐことようにしてください。
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