【2023最新】アトピー性皮膚炎の新薬が続々登場。今後期待される治療の展望とは?

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アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う炎症と湿疹が見られる症状で、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す特徴が見られます。また、中等度~重度の症状では、治療を続けていてもかゆみが我慢できずに、かきむしって皮膚をさらに傷つけてしまうほか、睡眠が浅くなって日中の集中力が維持できなくなってしまうなど、さまざまな形でクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を低下させてしまう要因にもなっています。

子どもの頃からアトピー性皮膚炎に長年悩まされてきたという患者さんのほか、大人になってから突然発症したと感じる患者さんも増えてきている中、高い有効性が認められた新薬が次々と開発されて注目を集めています。アトピー性皮膚炎の治療は今後どのような展開を迎えるのでしょうか。

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年々増加するアトピー性皮膚炎患者数と「大人アトピー」

アトピー患者数推移

厚生労働省の統計「患者調査」によると、アトピー性皮膚炎に悩んでいる患者さんは2017年時点で約51万人と近年増加傾向にあります。もともとは「子どもの疾患」というイメージがあった疾病ですが、最近は成人してから発症が見られたというケースが増えてきています。大人のアトピー性皮膚炎は重症化しやすく、ステロイドなどの標準的な治療を行っても十分な改善が認められずに再発の頻度が高いこと、また長期におよんで発症しやすいことが多いです。

年齢に応じて症状の出方が異なるところも特徴的です。乳児は顔や頭に出やすく、成長するにつれて首や手足の関節などにおりていく傾向があり、思春期や成人期には上半身に出るケースが多いです。症状がうまくコントロールできないと、炎症反応が肌のバリア機能を低下させ、炎症とかゆみが強くなるためにかきむしってしまい、さらに症状を悪化させてしまうという負のスパイラルに陥りやすくなります。

アトピー性皮膚炎の要因と治癒とは

アトピー性皮膚炎の要因には遺伝因子と環境因子の2つがあり、遺伝因子をもともと持っている人は、花粉やほこり、強い乾燥、ストレスなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす要因)に触れると発症することが多いと言われています。幼少期に軽いアトピー性皮膚炎があった人が、成長するにつれて症状が落ち着いた目立たなくなったけれど、成人してから生活リズムの変化や急激なストレスにさらされたことで再発してしまったというケースも多いようです。

また、アトピー性皮膚炎のやっかいなところは、改善したり悪くなったりを繰り返す慢性疾患で、しばらく落ち着いていたかと思ったらぶり返したりするため、なかなか「治った!」と言い切ることが難しい点です。そのため、適切な治療によって症状がコントロールできている状態が維持される「寛解」の状態が最終的なゴールとして目指される疾患だと考えられています。

アトピー性皮膚炎治療に新薬が続々登場

長期寛解を目指すアトピー性皮膚炎の治療法は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏、スキンケア用の保湿薬などの塗り薬が現在も主流です。
また抗アレルギー薬などの内服薬や、症状が強い場合は全身治療法を組み合わせて使用します。2018年にはアトピー性皮膚炎の10年ぶりの新薬として注射薬「デュピクセント(デュピルマブ)」が登場し、根本的な治療薬となることが期待されています。また、デュピクセント以降も各製薬会社から続々と新薬が開発されており、アトピー性皮膚炎の治療の将来に明るい兆しが見えてきています。

デュピクセントは、IL-4とIL-13という物質(サイトカイン)の働きを抑制することで、Th2細胞による炎症反応を抑え込むことができるという、アトピー性皮膚炎治療薬としては初の生物学的製剤(バイオ医薬品)※です。このようにバイオ技術を用いて、病気の原因物質に対する抗体を製造し、疾病予防や治療に役立てる新薬が登場してきています。

※生物学的製剤(バイオ医薬品)…生物が合成するたんぱく質を応用した治療薬

新薬開発状況(発売・製造販売承認順に記載)

デュピクセント発売以降に発売された最近の製剤(または現在申請中)には次のようなものがあります。

デュピクセント(デュピルマブ)

2018年に登場した注射薬で、アトピー性皮膚炎治療薬としては初めての生物学的製剤(バイオ医薬品)。特に重症患者への治療に大きな効果が認められている。販売:サノフィ株式会社

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コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)

2020年6月から使用可能になったJAK阻害薬。生後6ヵ月以上の小児アトピー性皮膚炎としての効能も追加されている外用薬。販売:鳥居薬品株式会社

» コレクチムの詳細はこちら

オルミエント(バリシチニブ)

2020年12月に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」に適応が追加されたJAK阻害薬。15歳以上向けに4mgを1日1回内服。2㎎に減量可能。販売:日本イーライリリー株式会社

» オルミエントの詳細はこちら

リンヴォック(ウパダシチニブ)

2021年8月に追加承認された経口JAK阻害薬。15mgを1日1錠、毎日内服する。12歳以上の小児アトピー性皮膚炎にも適応あり。30㎎に増量可能。販売:アッヴィ合同会社

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サイバインコ(アブロシチニブ)

2021年12月から使用可能になったJAK阻害薬。販売:ファイザー株式会社

» サイバインコの詳細はこちら

モイゼルト軟膏(ジファミラスト)

2021年9月に製造販売承認申請が行われ、2022年6月に発売された外用薬。ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬。販売:大塚製薬株式会社

» モイゼルトの詳細はこちら

ミチーガ(ネモリズマブ)

IL-31の受容体、IL-31受容体Aをブロックするモノクローナル抗体の注射薬。販売:マルホ株式会社

» ミチーガの詳細はこちら

アドトラーザ(トラロキヌマブ)

IL-13を選択的に阻害する生物学的製剤。注射薬。販売:レオファーマ株式会社

» アドトラーザの詳細はこちら

2022年版アトピー性皮膚炎の新薬パイプラインと開発段階

※2021年10月作成 2022年12月更新
新しい医薬品が世に出るには、様々な試験を行い有効性や安全性を評価する必要があり、厚生労働省から承認されてようやく発売に至ります。このデータを取得するために人を対象とした臨床試験(治験)が行われます。治験は第Ⅰ相臨床試験~第Ⅲ相臨床試験の大きく3つのステップに分かれています。
※フェーズ(phase)とも呼ばれておりここではP1,P2,P3と表記します。

P1:少数の健康な人を対象に実施し、薬剤の吸収や排泄、体内動態などや、安全性(有害事象、副作用)について検討します。
P2:少数の対象患者さんを対象に実施し、有効性や適した投与量や投与方法を設定します。
P3:多くの対象患者さんを対象に実施し、総合的な有効性と安全性について検証を行います。(既存薬との比較も行われます。)
フェーズ3まで進むと発売間近で楽しみではありますが、様々な事情で開発が止まってしまうこともあります。

開発段階 名称 剤形 社名 開発番号 カテゴリー
承認 トラロキヌマブ 注射 レオファーマ CAT-354 新規
P3 タピナロフ 外用 日本たばこ JTE-061 新規
P3 レブリキズマブ 注射 イーライリリー LY3650150 新規
P3 クリサボロール 外用 ファイザー PF-06930164 新規
P3 デュピクセント 注射 サノフィ SAR231893 適応拡大
P3 オルミエント 経口 イーライリリー LY3009104 適応拡大
P2 ヒト型抗OX40抗体 注射 協和キリン KHK4083 新規
P2 ブレポシチニブ 外用 ファイザー PF-06700841-00 新規
P2 センダキマブ 注射 BMS CC-93538 新規

 

アトピー性皮膚炎治療の今後の展望

従来のアトピー性皮膚炎治療薬は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏など、体の免疫システムを幅広く抑制する薬剤を外用薬として処方するやり方が主流でした。

それが近年のバイオテクノロジーの進歩により、免疫システムのうちアトピー性皮膚炎の発症・憎悪に関わる部分だけを狙い撃ちにする医薬品が開発されたことで、よりピンポイントかつ効果の高い注射などの全身療法が可能になってきました。前述した薬剤だけでなく、新たな生物学的製剤の開発が次々と進んでいる今、アトピー性皮膚炎治療は新たなフェーズに突入したと考えてもいいでしょう。

ただし、デュピクセントをはじめとする新薬は、既存の外用薬などの標準治療を基準期間おこなっても効果が不十分だと判断された場合にのみ使用されます。また、一定期間(デュピクセントの場合は16週間)投与しても治療反応が認められない場合は投与を中止するなど、医師の管理・監督が非常に重要になってきます。

当院は、クリサボロールの臨床治験や、デュピクセントの小児適応追加の臨床治験に参加しております。今後も、アトピー性皮膚炎の治療としてより良い効果と利便性があるとされる新薬が開発されたり適応となった際には、前向きに導入していきたいと考えています。

アトピー性皮膚炎の悩みから解放される患者さんが少しでも早く、一人でも多く増えていくように、そして日本における医療の発展に貢献できるよう取り組んでいます。アトピー性皮膚炎でつらい思いをされている方は、ぜひ当院にご相談ください。

まとめ
  • アトピー性皮膚炎の患者は年々増加傾向
  • アトピー性皮膚炎の根治が期待できる薬が新しく登場
  • 既存の薬が効かない場合に新薬を使用
  • 当院では新薬の導入にも積極的
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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。