アトピー性皮膚炎「デュピクセント」小児への適応が拡大しました

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これまでの経緯

デュピクセント投与可能な患者さま

2023年9月25日よりデュピクセントは生後6ヶ月からのアトピー性皮膚炎患者さまに投与が可能になりました!

従来の治療法では十分な効果が得られなかった小児アトピー性皮膚炎患者さまに対して効果が期待できます。

「デュピクセント」は2018年に発売された皮膚の下に注射する治療薬で、炎症を引き起こす原因物質(サイトカイン)に働きかけ、炎症やかゆみを抑えたり、皮膚のバリア機能を守ったりする効能があります。

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これまで当院でも多数導入しており効果や安全性を実感しておりましたが、15歳以上という年齢制限があったため、小児適応の拡大を待ち望んでいました。

成人の場合、治療費が導入のネックになることがあります。デュピクセント治療は効果が高い一方で治療費が高額になるため、二の足を踏まれる方が多くいらっしゃいます。

一方、小児の場合少ない負担で治療を受けることができます。当院がある東京23区の場合は、医療証を提示することで18歳まで自己負担が無償になります。小児医療費の助成は自治体によって異なりますのでご確認ください。

小児アトピーに対する「デュピクセント」治療の実際

当院は「デュピクセント」の小児適応拡大の治験に参加し、エビデンスづくりに協力してきました。

治験を開始するときに考えたのが、注射という投与方法のハードルの高さです。

お子さまの治療を選ぶ際には、本人と親御さまの同意が必要です。年齢が上がるにつれて本人の意思の影響が大きくなりますが、幼いお子さまの場合は親御さまの考え方が重要です。

一般的に注射は苦手なお子さまが多いので、治療導入にあたって定期的に注射をする必要があることをお伝えすると
「注射をするほどではない、注射をするぐらいならかゆい方がまし」と考える方が多いのではないかと予想していました。

しかし、実際に募集を開始してみると、定員を上回る応募がありました。成人で効果と安全性が実証されているデュピクセントの治験である点は大きいですが、参加希望された親御さまの考え方は予想と反して意外なものでした。

日ごろから我が子がかきむしっている姿を目にして心を痛めており、かゆくて睡眠不足になり朝起きられなかったり、授業中にもかいていることを先生から指摘されたりと、悩みは尽きなかったのです。

「かゆみがなくなることは、注射への恐怖よりもずっと大きい」ととらえて、注射に対する抵抗心を親御さまが説得してくれました。

実薬投与が始まると症状は驚くほど改善し、お子さまも注射を嫌がらなくなり、みんな満足のいく結果になりました。

導入時は院内で投与いたしますが、薬剤の有効性・安全性が確認できたら、自己注射へ移行することができます。

自己注射になれば3ヶ月に1回の通院でよくなるので、通院にかかる時間や負担を軽減でき、遠方の方でも生活スタイルにあわせて治療継続できる点がメリットです。

患者さま一人ひとりに合う薬剤・治療法は異なります。まずは一度、ご相談いただきメリット・デメリットのご説明や、患者さまの状態を見てどのような治療を行うべきかご提案いたします。

アトピー性皮膚炎でつらい思いをしているお子さまや親御さまのお力になれれば幸いです。

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小児アトピー性皮膚炎を早期に治療する意義

アトピー性皮膚炎を持つお子さまは、早期に効果の高い治療を受けることで次のような意義があると考えております。

  • アレルギーマーチを抑える
  • アトピー性皮膚炎に伴ううつ・登校拒否を減らせる可能性がある
  • ステロイド外用薬の使用量を減らすことができる
  • 症状が改善してきたら注射治療をやめられる可能性がある

アトピー性皮膚炎を引き起こすアレルギー体質は遺伝することが多く、当院でもご兄弟や親子で導入され症状が落ち着いている(長期寛解維持)方もいらっしゃいます。

小児科クリニック関係者の方々へ

近隣の皮膚科クリニックよりデュピクセントの導入支援のご要望をいただくことがあります。

生物学的製剤を導入すると、在庫管理・検査など通常のアトピー性皮膚炎の診療に比べて大幅に業務が増えます。これにより当院ではリソース不足に陥りスタッフは混乱し診療も滞りました。

しかし、これまでの治療に比べて明らかに効果が高かったため、お困りの患者さまにどうにかお届けしたいと考えました。スタッフ間で協力し合いチーム医療を推進することでスムーズに治療導入できる態勢を築いてきました。

デュピクセント取材記事の表紙

事務チームは患者さまが納得できるよう丁寧に寄り添ったご説明を、看護師チームは大学病院でのインスリン導入の経験を生かし自己注射の指導態勢を構築しています。

当院の事例はデュピクセント(デュピルマブ)を製造販売するサノフィ株式会社にご評価いただき、パンフレットとしてご紹介いただいています。

» 取材記事を見る
デュピクセントの導入・自己注射の指導方法など、小児科クリニックさまのお力になれることもあると思います。お困りの先生がいらっしゃいましたらご相談ください。

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まとめ
  • 2023年9月25日よりデュピクセントが生後6ヶ月から投与が可能になった
  • アトピー性皮膚炎のお子さまをもつ親御さまは、注射の痛みよりもかゆみの改善を優先する方が多い
  • 小児アトピー性皮膚炎を早期に治療することで将来のアレルギーを抑えられる可能性がある
  • 当院ではチーム医療によりスムーズに治療導入する態勢を取っている
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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。