アクロマイシン軟膏とは?
アクロマイシン軟膏(一般名:テトラサイクリン塩酸塩)は、ブドウ球菌や連鎖球菌、大腸菌などに抗菌力を発揮する外用抗菌薬で、細菌のたんぱく合成を阻止して抗菌作用を発揮します。
通常は、皮膚感染症や膿皮症、やけどや外傷の二次感染などに用いられます。
なお、「アクロマイシン(Achromycin)」という名称は、アクロマイシンより先に発見されたオーレオマイシン(Aureomycin)の色(黄金色)より色が薄いことから、「A:打ち消し・否定の語意+chro:chromaic色の+mycin:抗生物質」=「Achromycin」ということで付けられました。
アクロマイシン軟膏の特徴
アクロマイシン軟膏の有効成分であるテトラサイクリンは、細菌のたんぱく合成系において、aminoacyl t-RNAがm-RNA・リボゾーム複合物と結合するのを妨げてたんぱく合成を阻止することにより抗菌作用を発揮します。
しかし、動物のリボゾームには作用せず、細菌のリボゾームに特異的に作用することから、選択毒性を有すると考えられています。
アクロマイシン軟膏の効能効果・用法用量
アクロマイシン軟膏の適応菌種は、テトラサイクリンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、大腸菌などです。
適応症は、適応菌種による表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷および手術創などの二次感染です。
通常、1日数回適量を清潔にした患部に直接塗布するか、無菌ガーゼにのばして貼付します。
アクロマイシン軟膏を外用する上での注意点
アクロマイシン軟膏を塗ってはいけない例
テトラサイクリン系薬剤に対して過敏症の既往歴がある場合は、アクロマイシン軟膏を使用できません。誤って使用すると、重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。
アクロマイシン軟膏の副作用について
アクロマイシン軟膏の使用にあたり、特に重篤な副作用は報告されていません。
その他の報告されている副作用としては、過敏症にともなう発疹がありますが、発生頻度は不明です。
なお、副作用が発生した場合、症状によってはアクロマイシン軟膏の中止や他の薬剤への変更が必要になることもありますので、気になる症状がある場合は早めに受診してください。
アクロマイシン軟膏を漫然使用することのリスクについて
アクロマイシン軟膏を漫然使用すると、薬剤耐性菌が発現するおそれがあります。そのため、使用にあたっては治療に必要な最小限の期間にとどめなければなりません。「どれくらいの期間、使えばいいのかわからない」などの疑問がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
なお、残薬があっても、自己判断でアクロマイシン軟膏を使用するのは避けてください。安易な使用は、耐性菌の発現をまねくことになります。
アクロマイシン軟膏による感作について
アクロマイシン軟膏を使用すると、感作されるおそれがあります。使用している間は塗布部分の観察を十分に行い、感作の兆候(瘙痒、発赤、腫脹、丘疹、小水疱など)があらわれた場合は、使用を中止してすぐに受診してください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
病気の治療で内服薬を服用している場合でも、アクロマイシン軟膏は使用できます。ただし、他の外用薬を使用している場合は使い分けが必要なこともあります。
したがって、併用薬がある場合は市販薬も含めてすべてお伝えください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方、お子さま、ご高齢の方への使用に関して
アクロマイシン軟膏の添付文書上、妊娠中の方・授乳中の方・お子さま・高齢の方の使用に関する注意喚起は特にありません。実際、特定の背景がある方でも、適量のアクロマイシン軟膏を短期間使う限りにおいては特に問題はないと考えられます。
ただし、副作用である過敏症などの発生リスクがまったくないわけではありません。
したがって、使用の可否や使用期間については必ず医師の指示に従い、副作用が疑われる症状があらわれたら、速やかに受診して適切な処置を受けてください。
アクロマイシン軟膏の患者負担・薬価について
アクロマイシン軟膏の薬価は20.5円/gです。5g(1本)が処方された場合の薬剤費は102.5円/本、25g(1本)が処方された場合の薬剤費は512.5円/本になります。
なお、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがアクロマイシン軟膏を5g(1本)処方された場合、ご負担金額は30.75円です(薬剤費のみの計算です)。
なお、アクロマイシン軟膏にはジェネリック品がありません。薬局で希望しても変更できませんので、ご承知ください。
よくあるご質問
- アクロマイシン軟膏と同じ成分の市販薬はありますか?
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アクロマイシン軟膏と同じ成分の市販薬はありません。ただし、アクロマイシン軟膏と同じように抗生物質が配合されている外用薬は、ドラッグストアなどでも購入できます。
もっとも、市販の外用抗菌薬はアクロマイシン軟膏とは適応が異なります。対象となる菌種も同じとは限りません。また、抗生物質を含む外用薬は、誤った使い方をすると耐性菌が発現することもあります。したがって、市販薬をアクロマイシン軟膏の代わりに使用するのはおすすめできません。
- 2人の子どものうち、兄のほうがとびひになり、アクロマイシン軟膏が処方されました。弟にとびひの症状はないのですが、念のため塗っておいた方がいいですか?また、弟にとびひの症状が出たら、クリニックへ行かず兄に処方されたアクロマイシン軟膏を塗ってもいいですか?
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とびひの症状が出ていなければ、アクロマイシン軟膏を塗る必要はありません。漫然と使用すると耐性菌が発現するおそれがあるため、予防的にアクロマイシン軟膏を塗るのは避けてください。
なお、弟さんにとびひの症状が出た場合は、念のため受診して改めて薬の処方を受けてください。その際、弟さんにアクロマイシン軟膏が処方されたとしても、チューブは分けて使ってください。
たとえ兄弟でも、原因菌や皮膚に付いている雑菌が異なる可能性があります。感染の拡大を防ぐためにも、薬の共用は避けてください。
- アクロマイシン軟膏をチューブから出したら黄色かったのですが……。透明感もほとんどないし、変質していないか心配です。使っても大丈夫ですか?
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アクロマイシン軟膏の有効成分であるテトラサイクリン塩酸塩は、黄色の結晶または結晶性の粉末です。そのため、軟膏自体も黄色になっています。軟膏特有の透明感もあまりありませんが、変質・分離しているわけではありませんのでご安心ください。もちろん、使用しても大丈夫です。
- 未開封のアクロマイシン軟膏は、いつまで使えますか。
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未開封で室温(1~30度)の適切な環境で保管されていたアクロマイシン軟膏なら、チューブに記載されている使用期限まで使えます。
ただし、開封済みのアクロマイシン軟膏は、室温下で保管していた場合でも6ヵ月を過ぎたら廃棄してください。
また、未開封であっても、30度を超える高温下で保管したアクロマイシン軟膏は使用しないでください。高温下で保存すると、有効成分や添加物が分離したり変質したりするおそれがあります。特に夏場は、高温になりやすい自動車内や直射日光の当たる場所に放置しないようご注意ください。
- アクロマイシン軟膏を塗り忘れた場合はどうすればいいですか?
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塗り忘れた場合は、気が付いたときに1回分を塗布してください。ただし、次の塗布時間が近い場合は、次の塗布時間に1回分を塗ってください。その際、塗り忘れ分をあわせて2回分塗ってはいけません。通常の1回分を患部に塗ってください。