オイラックスとは?
オイラックス(一般名:クロタミトン)は、皮膚の搔痒感を軽減させる外用薬です。
オイラックスは、皮膚に軽い灼熱感を与え、温覚に対する刺激が競合的に掻痒感を軽減させるといわれています。
なお、医療用で「オイラックス」の名称を持つ外用薬は、「オイラックスクリーム10%」と「オイラックスHクリーム」の2種類がありますが、ここでは「オイラックスクリーム10%」について解説します。
オイラックスの特徴
オイラックスは、ヒトの皮膚感覚のうち掻痒感をよく抑制しますが、他の皮膚感覚にはほとんど影響を与えないのが特徴です。そのため、抗ヒスタミン薬や局所麻酔薬とは異なる作用機序で鎮痒効果を発揮していると考えられています。
また、もともとオイラックスは疥癬治療薬として開発された経緯があり、疥癬虫(ヒゼンダニ)に対する駆虫効果も認められています。そのため、適応外ですが疥癬の治療にも使用されます。
オイラックスの効能効果・用法用量
オイラックスは、湿疹、蕁麻疹、神経皮膚炎、皮膚そう痒症、小児ストロフルス(虫刺され後に強いかゆみと腫れがあらわれる症状)に適応があります。
通常、1日数回適量を患部に塗布または塗擦します。
ただし、炎症症状が強い浸出性の皮膚炎の場合には、適切な外用剤を使用し、その炎症が軽減後もかゆみが残る場合にオイラックスを使用します。
オイラックスを外用する上での注意点
オイラックスを使用してはいけない場合
オイラックスの成分に過敏症の既往歴がある場合は、オイラックスを使用できません。また、眼や眼の周囲、および唇などの粘膜部位には使用できません。
万が一、オイラックスが目に入ってしまった場合は、すぐに水あるいはぬるま湯で洗い流してください。
オイラックスの副作用
オイラックスの使用にあたり、特に重篤な副作用は報告されていません。
一方、報告数の多い副作用としては、皮膚の刺激感(熱感、ひりひり感など)や接触性皮膚炎(発赤など)があります。
なお、過敏症にともなう症状(掻痒、発疹、湿疹、紅斑、血管浮腫、皮膚の刺激感、接触性皮膚炎など)があらわれた場合は、治療の中止や他の薬剤への変更を検討しますので、気になる症状がある場合は早めにご相談ください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
病気の治療で内服薬を服用している場合にオイラックスを併用しても、特に問題はありません。ただし、他の外用薬を使用している場合は使い分けが必要な場合もあります。したがって、併用薬がある場合は市販薬も含めてすべてお伝えください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方、お子さま、ご高齢の方への使用に関して
オイラックスを医師の指示に従い適量使う限りにおいては、特に問題はないと考えられます。ただし、副作用である皮膚の刺激感や接触性皮膚炎などの発生リスクがまったくないわけではありません。
したがって、使用の可否や使用期間については必ず医師の指示に従い、副作用が疑われる症状があらわれたら速やかに受診して適切な処置を受けてください。
保管する際の注意
オイラックスは金属に触れると変質することがあるため、容器から取り出す際に金属製のへらを用いたり、金属製の容器に移し替えたりするのは避けてください。
また、オイラックスをプラスチック製容器に小分けして長期間保存すると変色などがみられることがあるため、できるだけ早めに使用してください。
過量投与に関する注意
オイラックスは、過量投与によりメトヘモグロビン血症を起こすおそれがあります。
メトヘモグロビン血症になると、血液の酸素運搬能力が低下して、頭痛やめまい、呼吸困難や意識障害が生じることがあります。
通常、メトヘモグロビン血症の症状は薬剤の中止により消失しますが、重症の場合は治療薬の投与など適切な処置が必要です。
したがって、大量に塗布することがないようにご注意ください。
誤服用に関する注意
オイラックスを誤って内服すると、悪心や嘔吐、口腔・食道・胃粘膜の刺激感、下痢、意識消失、血圧低下、痙攣などの急性中毒症状のほか、メトヘモグロビン血症があらわれるおそれがあります。
そのため、オイラックスの服用は絶対に避けてください。
なお、ご家庭ではお子さまの誤飲を防ぐため、保管場所を工夫するなどの配慮をお願いいたします。
オイラックスの患者負担・薬価について
オイラックスクリーム10%の薬価は4.25円/gです。10g(1本)処方された場合、薬剤費は42.5円/本になります。
なお、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがオイラックスクリーム10%を10g(1本)処方された場合、ご負担金額は12.75円です(薬剤費のみの計算です)。
ジェネリック薬を使用すれば、さらに薬剤費をおさえられます。
よくあるご質問
- オイラックスクリームと同じ成分の市販薬はありますか?
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オイラックスと同じ成分の市販薬はありません。
ドラッグストアなどでは「オイラックス」の名称を持つ製品がいくつか販売されており、クロタミトンを主成分とする薬剤も販売されていますが、医療用のオイラックスクリーム10%とは成分が異なります。また、適応も同じではありません。
そのため、市販薬を医療用のオイラックスクリーム10%の代わりに使うのはおすすめできません。
- オイラックスクリームが疥癬治療のために処方されました。適応はないとのことですが、自費診療になってしまうのですか?
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たしかに、オイラックスクリームには疥癬の適応はありません。
しかし、社会保険診療報酬支払基金によると、疥癬の治療にクロタミトン(オイラックスの成分)を使用した場合は保険適用と同等の扱いになるとのことです。
したがって、保険証やマイナンバーカードをご提示いただければ、お支払額は保険割合に応じた金額となりますのでご安心ください。
- オイラックスは皮膚に軽い灼熱感を与えてかゆみをやわらげるとのことですが、皮膚にそんな刺激を与えても大丈夫なんですか?
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オイラックスは塗布直後に軽い熱感を覚えることがありますが、通常は短時間で消失するため心配ありません。
また、健康な成人を対象とした臨床試験では、温覚・冷覚・触覚・痛覚・擽覚(くすぐったい感じ)に対するオイラックスの影響はみられなかったと報告されています。
このように、オイラックスによる刺激感が皮膚に重篤な影響を与えることはまずありませんので、ご安心ください。
- オイラックスを使いすぎるとメトヘモグロビン血症になるかもしれないんですよね。では、1回にどれくらい塗るのが適量なんですか?
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一般的に、クリームは大人の手の人差し指の先から第一関節まで絞り出した量(約0.5g)で手のひら2枚分の範囲に塗り広げられます。これを目安に塗る量を決めれば塗りすぎになることはありませんので、塗布する範囲に合わせて量を加減してください。
- オイラックスHクリームをオイラックスクリームの代わりに使ってもいいですか?
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オイラックスHクリームには、ステロイド成分のヒドロコルチゾンが配合されています。そのため、禁忌や適応疾患がオイラックスクリームと若干異なります。
したがって、オイラックスHクリームをオイラックスの代わりに使うことはできません。
- オイラックスを塗り忘れた場合はどうすればいいですか?
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オイラックスを塗り忘れた場合は、気が付いたときに1回分を塗布してください。ただし、次の塗布時間が近い場合は、忘れた分を飛ばして次の塗布時間に1回分を塗れば大丈夫です。その際、塗り忘れ分をあわせて2回分の量を塗らないようにしてください。