皮膚掻痒症とは?
皮膚がかゆいのにみためには何もなっていないようなことはありませんか?
病変がなく、痒みの症状だけあることを皮膚掻痒症といいます。
皮膚科の外来を受診するひとの1割弱は皮膚掻痒症の患者であり、やや女性に多い疾患です。とくに、妊産婦やHIV患者、慢性C型肝炎や尿毒症(慢性腎機能障害)のひとに多いといわれています。
全身のあらゆるところで痒みがでてしまい、ずっと痒みが続くこともあれば波があることもあります。また、夜間に痒みにより寝られないということもあるかもしれません。
皮膚掻痒症の原因
皮膚掻痒症の原因は大きく3つに大別できます
- ・皮膚の乾燥
- ・服薬している薬
- ・内臓の異常に伴うかゆみ
このうち、いちばん多いのは皮膚の乾燥(ドライスキン)によるもので、通常は保湿剤により症状の改善がみられます。皮膚の角層で水分が低下すると皮膚が乾燥してしまい、乾皮症や老人性皮膚掻痒症、アトピー性皮膚炎などの皮膚病のほか、腎不全や血液透析、糖尿病、HIV感染症の患者でも皮膚の乾燥がみられるのです。
画像提供:ツムラ「皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)・かゆみ」
かゆみの原因となる代表的な薬としては、オピオイドとよばれる麻薬製剤やホルモン剤や利尿剤、解熱鎮痛剤、抗菌剤など多岐にわたります。薬によるかゆみは頻度としては多くありませんが、高齢のかたでは多数の薬剤を内服していることからかゆみの原因として考慮する必要があるのです。
内臓異常によるものとしては、肝硬変などの肝・胆嚢の病気、慢性腎不全や血液透析中の腎臓病の方、甲状腺機能異常などの内分泌疾患や、白血病やリンパ腫などの血液病、内臓がんなどが皮膚掻痒症の原因となります。ごく身近な疾患である鉄欠乏性貧血や痛風、糖尿病も内臓疾患に伴う皮膚掻痒症の原因です。
皮膚掻痒症の診断
皮膚掻痒症の原因でいちばん多いのは老人性乾皮症で、みためでの診断が主になります。しかし、内臓異常による痒みなど、ほかの痒みの原因となる疾患の有無について検査をする必要があり、採血(血算、白血球分画、BUN、Cre、肝胆嚢系酵素、甲状腺ホルモン、血糖値、腫瘍マーカー)や便潜血、造影CTなどの画像検査などを行うこともあるのです。
薬やサプリメントも痒みの原因となるものが多くあるため、内服している内容や生活習慣などの詳しく整理することも大切です。
原因を調べるためのあらゆる検査を行ったにもかかわらず原因が特定されない場合には精神障害による皮膚掻痒症の可能性を考えることになります。
皮膚掻痒症セルフチェック
1つ目の項目に該当する場合は、皮膚掻痒症の可能性があります。
2つ目以降の項目は、皮膚搔痒症の原因となりうるものです。原因不明のかゆみに悩まされている場合は、該当する項目がないか今一度チェックしてみましょう。
皮膚搔痒症は、原因を取り除いたり治療したりすることで改善することがあります。また、内服薬や外用薬の使用で症状が軽減される場合もあります。かゆみの症状が気になる場合は、早めに受診して治療を受けるようにしましょう。
皮膚掻痒症の治療
原因としていちばん多いドライスキンによる皮膚掻痒症についてはまずは保湿剤をつかいます。よく使われる保湿剤はヘパリン類似物質製剤(ヒルドイド)や尿素含有剤(ウレパール)などです。保湿剤をつかった上で効果がなければほかの方法に切り替えていきます。
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軟膏でクロタミトン含有製剤(オイラックス軟膏)やジェフェンヒドラミン含有製剤(レスタミンコーワ軟膏)といったかゆみ止めの作用のあるものもあり、オイラックスは市販のOTC薬があります。
かゆみ止めの飲み薬は抗アレルギー薬が、半分程度の症例では効果があるといわれています。
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なかなか症状の改善が得られない場合には漢方薬(黄連解毒湯、六味丸、当帰飲子、牛車腎気丸)を使うこともあります。
皮膚掻痒症の原因となる疾患がある場合にはそちらを治療することが優先されます。しかし、それだけでは症状がなくならないことも多く、ドライスキンがあれば保湿剤、さらにその他の治療をためしていくことになるのです。
その他の治療
保険適応となる治療で症状の改善が困難な場合には保険適応にならない治療もためすことがあります。紫外線療法やカプサイシンの軟膏、抗不安薬を使うことで症状の改善が得られることもあるのです。
皮膚掻痒症の予防や注意事項
皮膚掻痒症を防ぐには、日々のスキンケアが大切です。
皮膚を清潔に保つこと、そのためには毎日の入浴やシャワーを行い、汗や汚れをおとします。洗うときには強くこすらずに適度な洗浄力の石けんをつかってやさしく。熱すぎるお湯は乾燥しやすくなるので好ましいのはぬるめのお湯、そして石けんが皮膚に残らないよう十分にすすぐようにします。
汗やよごれでかゆみが出やすくなるため、室内を生活にし、適温、適湿にすることや、肌着を洗濯する際に洗剤が残らないようにすることも気をつけます。
皮膚がかゆくなってしまった時の対策として爪をきっておくこと、手袋や包帯は皮膚を掻き壊してしまわないために有用です。
よくあるご質問
- 同じところがずっと痒いのですが何もありません。皮膚掻痒症でしょうか?
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皮膚症状が何もないのであれば皮膚掻痒症が可能性として考えられます。ご受診ください。
- 夜間掻痒症に特化した治療法などはありますか?
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夜間は体温が上がるため痒みが増しやすいです。日中であれば仕事や勉強などで気がまぎれますが、夜間は痒みに意識が向かってしまい、気になる方が多いです。残念ながら夜間の掻痒に特化した治療はございません。
- 皮膚掻痒症はどんな部位に発症しますか?
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皮膚掻痒症は、体の一部にだけかゆみが出る場合(限局性皮膚掻痒症)と、全身にかゆみが出る場合(汎発性皮膚掻痒症)があります。
限局性皮膚掻痒症の場合、陰部や肛門の周り、顔や頭などにかゆみが生じることが多いです。かゆみの原因としては、前立腺炎や前立腺肥大症、糖尿病などのほか、カンジダ症やトリコモナス症などの感染症が関与していることがあります。また、ストレスなど心因性の原因でかゆみが出ることもあります。
汎発性皮膚掻痒症の原因で多いのは、皮膚の乾燥です。皮膚の乾燥がないのにかゆみが続き、通常の治療で効果が十分に見られない場合は、内臓の病気や飲んでいる薬が原因になっている可能性があります。
- 子どもでも皮膚掻痒症が発症しますか?
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子どもでも皮膚搔痒症になることはあります。
かゆみがある場合は、まずかゆみの原因を調べて症状に応じた治療を行います。内臓の病気や薬が原因と考えられる場合は、他の診療科と連携が必要になる場合もあります。詳しい検査が必要になることもありますので、かゆみがあらわれた場合は自己判断を避け、まず受診してください。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。