モイゼルト軟膏とは?
モイゼルト軟膏(一般名:ジファミラスト)は、外用剤に適した物性を持つ化合物として大塚製薬株式会社により開発されました。日本初となるホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の外用薬です。2021年9月承認、発売日は6月1日です。
モイゼルト軟膏はPDE4を選択的に阻害することで炎症性サイトカインなどの化学伝達物質の産生を抑制し抗炎症作用を発揮します。ステロイドの維持期に置き換えて使うことで、ステロイドの使用を減らせる可能性があると考えられます。
名称の由来は、潤い(MOIsture)のある正常な皮膚を確実(CERTainly)に取り戻すという願いを込めてモイゼルト(MOIZERTO)と命名されました。
モイゼルト軟膏の特徴
ステロイド外用薬、プロトピック軟膏、コレクチム軟膏と異なる新しい作用機序を持った安全性の高いお薬です。モイゼルト軟膏の主成分であるジファミラストは国内で30年の期間を経て研究開発がされました。
日本初の外用ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬
モイゼルト軟膏が阻害するPDE4と呼ばれる酵素は、cAMPという物質をAMPに分解する役割があります。
アトピー性皮膚炎の患者さまは細胞内のcAMPの濃度が低下していることがわかっており、cAMPの量が減ると体の中で炎症を引き起こすサイトカインが過剰につくられるため炎症が悪化します。モイゼルト軟膏を外用するとPDE4を阻害しcAMPの分解を抑えることで濃度が低下しなくなり、炎症をおさえることができます。
モイゼルト軟膏の適応患者さんについて
- 生後3ヶ月以上~14歳以下の小児のアトピー性皮膚炎の方
- 15歳以上~70歳以下の成人のアトピー性皮膚炎の方
軽症のアトピー性皮膚炎からお使いいただけます。
モイゼルト軟膏の投与スケジュール
モイゼルト軟膏は濃度が2種類(0.3%・1.0%)あり、1本10gのチューブとなってます。
生後3ヶ月以上~14歳以下の小児のアトピー性皮膚炎の患者さまはモイゼルト軟膏0.3%か1.0%のいずれかをお使いいただけます。ただし「小児に1%製剤を使用し、症状が改善した場合は、0.3%製剤への変更を検討すること。」と記載があり、1.0%製剤は短期間の使用にとどめることとされています。
15歳以上~70歳以下の成人のアトピー性皮膚炎の患者さまはモイゼルト軟膏1.0%製剤とされており0.3%製剤はお使いいただけません。使用方法は小児・成人とも1日2回適量を患部に塗布して使用します。1回の塗布量の制限はありません。
モイゼルト軟膏を外用する上の注意点
副作用について
モイゼルト軟膏は重篤な副作用は特になく安全性の高い薬剤です。併用禁忌、併用注意は設定されていません。
0.5%以上の頻度で色素沈着障害、毛包炎、そう痒症などの副作用が発生する場合があります。軽い症状であれば継続可能ですが、副作用がつらい場合は無理に継続せず、一旦外用を中止して医師にご相談ください。
お子さまへの使用について
モイゼルト軟膏0.3%、1%は生後3ヶ月の赤ちゃんからお使いいただけます。
アレルギーマーチを予防するためにも離乳食(生後5ヵ月頃)がはじまる前の段階でアトピー性皮膚炎の発症に伴う炎症、痒み、皮膚バリアの低下を抑える治療を開始することが大切です。
妊婦の方、授乳中の方への使用について
妊娠又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないことが望ましいとされています。
授乳婦に対しては、動物実験(雌ラット)において、乳汁中への移行が認められていますので治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討することとされています。また妊娠可能な女性にはモイゼルト軟膏を使用中止後2週間程度の避妊を行うこととされています。
その他の注意事項
皮膚感染症部位を避けて使用してください。やむを得ず使用する場合には、あらかじめ適切な抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤による治療を行う必要がありますので、医師の指導に従ってください。
モイゼルト軟膏の患者負担・薬価について
モイゼルト軟膏の薬価(薬剤の値段)はモイゼルト軟膏1% 150.4円/g、モイゼルト軟膏0.3% 140.4円/gです。
1本(10g)のチューブ入りですので、モイゼルト軟膏1%1504円(451.2円)/1本、モイゼルト軟膏0.3%1404円(421.2円)/1本となります。
※( )内は薬剤のみの3割負担の金額
よくあるご質問
- 塗り忘れてしまった場合はどうしたらよいですか?
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塗り忘れた場合は、気づいた時に1回分を塗ってください。ただし、次に塗る時間が近い場合は忘れた分は塗らず、次の予定時間に1回分を塗ってください。2回分を一度に塗らないようご注意下さい。
- 他剤との混合や重ね塗りは可能でしょうか?
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臨床試験の段階では保湿剤以外の重ね塗りは禁止しておりました。他剤との混合に関しても検討はしておりません。ただし、今後配合変化表の一覧は提供されるようですので、エビデンスに基づいて適切にご判断いたします。
- 顔に塗っても良いでしょうか?
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顔への使用は可能です。ただし粘膜、潰瘍、明らかに局面を形成しているびらん等への塗布は避けてください。
- 内服薬(経口ステロイドなど)や生物学的製剤、光線療法との併用は可能でしょうか?
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内服薬及び生物学製剤や、光線療法との併用について制限はありません。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。