アトピー性皮膚炎治療薬「コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)」JAK阻害薬

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コレクチム軟膏とは?

コレクチムの写真

コレクチム(一般名:デルゴシチニブ)は、「JAK阻害薬」に分類される薬剤です。
コレクチムは、ヤヌスキナーゼファミリー(JAK1,JAK2,JAK3およびTyk2)のすべてのキナーゼ活性を阻害することで、各種サイトカイン刺激により誘発されるT細胞、B細胞、マスト細胞および単球の活性化を抑制してアトピー性皮膚炎の炎症をおさえます。
なお、「コレクチム(Corectim)」という名称は、「免疫(immuno)をただす(correct)」に由来するとのことです。

コレクチムの特徴

用法用量

コレクチムは、アトピー性皮膚炎に適応があります。
通常、成人は0.5%製剤を1日2回患部に塗布します。なお,1回あたりの塗布量は5gまでとされています。
小児の場合は、0.25%製剤を1日2回患部に塗布します。ただし、症状に応じて0.5%製剤に変更することも可能です。なお、1回あたりの塗布量は5gまでとされていますが、体格を考慮して塗布範囲が体表面積の30%を超えないようにします。

コレクチム軟膏の効果

成人および小児のアトピー性皮膚炎の方を対象とした臨床試験では、コレクチムによってアトピー性皮膚炎の重症度が有意に改善されたことが示されています。また、日中および夜間のかゆみが有意に抑制されたという結果も得られています。
さらに、乳幼児を対象とした臨床試験でも、コレクチムによってアトピー性皮膚炎の重症度が大きく改善されることが示されています。

コレクチムを使用するメリット

コレクチムは、従来からあるステロイド外用薬や免疫抑制外用薬とは異なる作用を持つ薬剤です。
ステロイド外用薬は抗炎症作用を持つ有用な薬剤ですが、症状改善後の減量が難しく、皮膚萎縮や毛細血管の拡張などの副作用があらわれることがあります。
一方、免疫抑制外用薬であるタクロリムス水和物(プロトピック軟膏など)は、使用時にヒリヒリ感やそう痒感をはじめとした刺激感を覚えることがあります。
その点、コレクチムは使用時の刺激感が生じにくく、その他の副作用も他剤に比べて少なめです。また、長期使用における安全性が臨床試験で確認されていること・生後6ヵ月から使用できることなどから、アトピー性皮膚炎治療の新たな選択肢として注目されています。

コレクチム軟膏の使い方について

コレクチム軟膏の上手な塗り方

コレクチム軟膏を大人の人差し指の先端から第一関節まで絞り出すと、約0.5gになります(この量を「1FTU:1 finger-tip unit」といいます)。0.5gあれば大人の手のひら2枚分くらいの範囲に塗り広げられますので、これを目安に塗る量を決めてください。
ただし、コレクチム軟膏を患部にすり込んだり、べたつきを嫌って薄く塗り広げたりすると十分な効果が期待できません。絞り出した軟膏を指先で小分けにして患部に付け、手のひらで伸ばすようにたっぷり塗り広げると、患部に有効成分が届きやすくなり、軟膏が皮膚を守る役割を果たしてくれます。

顔への塗り方

コレクチム軟膏を顔に塗る場合は、目や口の粘膜部分に入らないように注意してください。また、ただれている部分や感染症を起こしている部分には塗らないでください。塗れるのは、これらの部位を除くアトピー性皮膚炎の症状がある部分のみです。
顔および首にコレクチム軟膏を塗るときの目安量は以下のとおりです。「塗る」というより「乗せる」イメージで塗布すると、十分な量を塗ることができます。
3~6ヵ月の小児:1FTU
1~2歳の小児:1.5FTU
3~5歳の小児:1.5FTU
6~10歳の小児:2FTU
成人:2.5FTU

コレクチムを外用する上での注意点

コレクチムを使用できない方・使用に注意が必要な方

コレクチムの成分に対して過敏症の既往歴がある場合は、コレクチムを使用できません。誤って使用すると、重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。
また、粘膜や潰瘍、明らかに局面を形成しているびらんなどをともなう箇所への使用も避けなければなりません。これらの部位に使用すると、コレクチムの曝露量が高くなることが推察されます。
なお、皮膚感染症がある場合は感染部位を避けて使用します。やむを得ず使用する場合は、あらかじめ適切な抗菌薬や抗ウイルス薬、抗真菌薬による治療を行うか、これらとの併用を考慮します。

コレクチムの副作用

コレクチムの使用にあたり、重篤な副作用は報告されていません。
比較的報告数の多い副作用として、使用部位の毛包炎やざ瘡(ニキビ)、刺激感、紅斑などがあります。
なお、件数は少ないですが口唇ヘルペス帯状疱疹の報告もあるため、気になる症状があらわれた場合はすみやかに受診してください。

日常生活における注意点

他の治療薬との併用に関して

添付文書上、コレクチムとの併用が禁忌とされている薬剤はありません。
ただ、コレクチムは比較的新しい薬剤で他剤との併用を検討した例が少ないため、他の外用薬(ステロイド外用薬、免疫抑制外用薬など)と併用する場合は、状態を踏まえて部位によって使い分けるなど慎重に塗布部位を検討します。
アトピー性皮膚炎に適応があるほかの薬剤(デュピルマブバリシチニブなど)との併用についても臨床経験が乏しいことから、併用の可否は慎重に判断します。
なお、保湿剤との併用は特に問題ないため、制限の必要はありません。

特定の患者さまへの使用に関して

妊娠中の方への使用

妊娠中の方または妊娠の可能性がある方については、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用を検討します。
コレクチムは、動物を対象とした試験で胎児への移行が報告されており、また、大量に経口投与することで、胚や胎児死亡率の増加が報告されています。

授乳中の方への使用

コレクチムは、動物に経口投与した試験で乳汁中への移行が報告されています。
そのため、授乳中の方については、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。

お子さまへの使用

コレクチムは、低出生体重児や新生児および6ヵ月未満の乳児を対象とした有効性および安全性を指標とした臨床試験を実施していませんが、年齢制限はありませんので安心してお使いいただけます。

コレクチムの患者負担・薬価について

コレクチム軟膏には0.25%と0.5%の2規格があり、薬価はそれぞれ139.3円/g、144.9円/gです。各規格・包装の薬剤費は以下のとおりです。

コレクチム軟膏0.25% 5g/本:696.5円
コレクチム軟膏0.5% 5g/本:724.5円 10g/本:1449円

なお、患者さまにご負担いただくのは、保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがコレクチム軟膏0.5%を10g処方された場合、ご負担金額は434.7円です(薬剤費のみの計算です)。

よくあるご質問

コレクチム軟膏はまぶたに塗っても大丈夫ですか?

コレクチム軟膏は、まぶたなど目の周りにも塗ることができます。
ただし、眼科用の薬ではないため、誤って目に入った場合はすぐに水で洗い流してください。洗い流したあとに刺激感や違和感が残る場合はすみやかに眼科を受診し、必要に応じて治療を受けてください。

コレクチム軟膏の副作用でニキビはできますか?

コレクチム軟膏の副作用として、塗布部位におけるざ瘡(ニキビ)が報告されています。また、毛包部が炎症を起こす毛包炎の副作用も報告されています。
ニキビの発現率は2%程度、毛包炎の発現率は2.4%程度ですが、使用開始前に副作用の発現を予測することは困難です。
コレクチム軟膏の使用にともないニキビなどがあらわれた場合は、症状に応じて今後の治療方針を検討しますので、診察時にご相談ください。

コレクチム軟膏は陰部に塗っても大丈夫ですか?

コレクチム軟膏を粘膜部位に使用するのは避けてください。粘膜以外の皮膚については、塗布部位に制限はありません。
ただし、陰部は粘膜との境界がはっきりしない部分があります。それらの部位に塗布する場合は、粘膜部分に入らないようご注意ください。

コレクチム軟膏を顔に使用する場合、かぶれなどの副作用はありますか?

コレクチム軟膏の副作用として、接触皮膚炎やかゆみなどが報告されています。
ただし、いずれの副作用も発現頻度は1%未満とごくわずかです。
コレクチム軟膏の使用にともないこれらの症状があらわれたら、経過を観察しながら治療継続の可否を判断しますので、早めに受診してください。

コレクチム軟膏は、1回にどれくらい塗ればいいですか?

コレクチム軟膏の5g、10gチューブは、人差し指の先端から第1関節までの長さをチューブから押し出した量が約0.5gになるように設計されています。
0.5gあれば成人の手のひら2枚分に相当する範囲に塗布できますので、これを参考に塗布量を決めてください。

コレクチムを塗り忘れた場合は、どうすればいいですか?

塗り忘れた場合は、気が付いたときに1回分を塗布すれば大丈夫です。ただし、次の塗る時間が近い場合は1回飛ばし、次の塗布タイミングで1回分を塗布してください。

モイゼルトとコレクチムの違いはなんですか?

コレクチムは、過剰な免疫反応を抑えて皮膚症状を改善する薬剤です。一方、モイゼルトは炎症物質の過剰産生を抑えて皮膚の炎症を抑える薬剤です。
いずれもアトピー性皮膚炎に適応がありますが、ステロイドとは異なり部位ごとに使い分ける必要はありません。また、タクロリムスのような刺激感もあまりありません。
ただ、使用できる年齢や使用できる量に若干違いがあります。
コレクチムは生後6ヵ月から使用できますが、モイゼルトが使用できるのは2歳以降です。
また、コレクチムは1回に使用できる量が5gまで、あるいは体表面積の30%までとされていますが、モイゼルトはこのような制限がありません。
なお、効き目については一概にいえません。ただ、いずれもステロイドのような即効性はないものの、動物を対象とした試験では、タクロリムスと同等もしくはそれ以上の抗炎症作用が示されています。

コレクチム軟膏はどれくらいの強さですか?

コレクチム軟膏の抗炎症作用は、ステロイド外用剤のようにランク分けされていません。
ただ、動物を対象とした試験では、濃度0.3%以上で皮膚の炎症抑制作用が示されており、その効果はタクロリムス軟膏0.1%とそれほど変わらないことが証明されています。

 

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