静脈瘤

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静脈瘤とは?

下肢静脈瘤は脚の血管がふくらんで瘤状になる病気で、膝の裏などに青い血管が浮き上がって見えるのが特徴です。良性の病気のため、癌化したり命の危険につながったりすることはありませんが、自然に治ることもありません。

日本では45歳以上の2割、女性の方が男性よりも多くみられ、年齢とともに頻度はふえていきます。
静脈瘤はいろいろな分類がありますが、みためではふくらはぎの太い血管が盛り上がってみえる「伏在型静脈瘤」、細い血管がみみずのように盛り上がって見える「側枝静脈瘤」、2-3mm程度の静脈が網目状にみえる「網目状静脈瘤」、1mm以下の血管がくもの巣状に広がって見える「くもの巣状静脈瘤」があります。

伏在型静脈瘤がいちばん多く、盛り上がった静脈は徐々に大きく瘤になり、倦怠感や疲労感を感じやするようになります。進行した場合は手術による治療が必要になるのです。

下肢静脈瘤は軽症だと症状はありませんが見た目で悩む方は少なくありません。症状がでてくると、午後~夕方以降から強いだるさ・むくみを感じる、血管のあたりにムズムズ・ピリピリした感じが出てくる、長時間立っていると下肢に張った感じや圧迫感、疼痛を感じる、といったことがあげられます。寝ている間の足の攣り(こむら返り)も下肢静脈瘤の症状のひとつです。

重症化すると、血液の循環が悪いことで色素沈着や湿疹などの皮膚炎を起こすことがあり、くるぶしのあたりが茶色になったりします。さらにひどくなると血流が悪いことで潰瘍、出血を起こすこともあるのです。

静脈瘤の原因

脚にある静脈に異常が起こり生じる病気です。

動脈で全身に血流がおくられ酸素を供給しますが、その後は静脈をとおり心臓にもどっていきます。静脈には逆流を起こさないように「ハ」の字型の防止弁を備えられており、脚の静脈は重力に逆らって血液を送り返さなくてはいけないため、弁への負担は大きなものです。

下肢にある大伏在静脈、小伏在静脈という表在静脈の弁に不具合が生じると血液がたまり、静脈が拡張することで静脈瘤ができます。

長時間の立ち仕事(調理師、理容師、教師や看護師など)に従事しているひとは静脈瘤になりやすいことがわかっています。そのほかに妊娠や出産、肥満、遺伝的な要素も静脈瘤のリスクといえます。
また、加齢により静脈の壁が弱くなったり、血液の流れをサポートする足の筋肉が衰えることで静脈瘤の頻度は増えていくのです。

静脈瘤の診断

医療機関を受診すると、おもに見た目と超音波検査(エコー検査)をおこないます。超音波検査では、血液の流れや血栓の有無などを確認していきます。超音波検査が必要な場合は、血管外科にご紹介しております。

なかには変形性膝関節症や脊柱管狭窄症など、整形外科の対象に該当する症状がでることもあるため、正しく診断していくことが大切です。

静脈瘤の治療

下肢静脈瘤の治療として、医療用弾性ストッキングの着用を推奨しています。弾性ストッキングは脚の上方から足首にかけて着圧がだんだん強くなるよう編まれています。筋肉のポンプ機能をサポートしたり、血管を縮小させることで血管の働きを元の状態に近づけることで症状を和らげることができます。また、弾性ストッキングを着けることで、脚の静脈の血液が下から上に流れるやすくなるため血栓ができることも防ぐことができるのです。弾性ストッキングでは静脈瘤そのものを治すことはできません。装着は履くのを難しく感じる、かぶれがでることもありますが、正しく使うことで高い効果が期待できます。

横になった時に足を心臓よりも高い位置に据えること(下肢挙上)により血液は心臓に戻りやすくなります。これらにより足のむくみやだるさなどの症状を改善することが期待できるため、就寝時に足を少し高くして寝るとよいでしょう。

下肢静脈瘤に伴って湿疹(うっ滞性皮膚炎)が発生している場合は、ステロイド外用薬保湿剤を用います。紫斑を認める場合は、止血作用があるトランサミン(トラネキサム酸)・アドナの内服薬などにより改善することが期待できます。

その他の治療

静脈瘤そのものを治療する場合には手術をおこないます。

弾性ストッキングでの圧迫療法で症状の改善が難しい重症の下肢静脈瘤では手術が勧められるほか、見た目の改善を希望する際に手術をおこなわれます。

ストリッピング手術(静脈抜去術)という瘤になっている血管を抜き取る手術やラジオ波やレーザーで血管の内側から瘤を焼く手術があるのです。

手術を希望される場合には血管外科や静脈瘤の治療を専門におこなっているクリニックなどをご紹介します。

静脈瘤の予防や注意事項

普段から脚の血液が停滞することのないように気をつけて過ごしましょう。
締め付けのきつい下着やガードルを長時間着用することは、下肢の血流を悪くしてしまうので避けるようにしてください。

長時間の立ち仕事を行う際は、1時間に5~10分ほど横になったり、脚を心臓部よりも高い位置に上げるなどして、血液を心臓部に押し返す働きを促進すると良いでしょう。もしこうした休息をとるのが難しい場合は、足踏みをする、かかとの上げ下げをする、階段昇降を行うなど、脚の筋肉を積極的に動かすだけでも改善できます。

また、座りっぱなしになることも静脈瘤には悪影響です。デスクワーク中でも、足首を回したり足指を動かしたりすることができます。こまめに血液循環がよくなる運動をしてください。
また、夜寝るときは、クッションや枕の上に脚を載せて、入眠前の何分かでも良いので脚を高くすることをおすすめします。

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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。