ニゾラールとは?
ニゾラール(一般名:ケトコナゾール)は、イミダゾール系の外用抗真菌薬です。真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害して、抗真菌作用を発揮します。
なお、商品名の「ニゾラール」は、海外での販売名に準じて命名されています。
ニゾラールの特徴
ニゾラールは、皮膚糸状菌やカンジダ属菌、癜風菌に対して強い抗真菌作用を示します。
また、角質層への浸透性・親和性が優れており、効果持続時間が長いのも特徴です。
ニゾラールの使い方
適応疾患と使用回数
ニゾラールにはクリームとローションの2つの剤型があり、いずれも適応症は、白癬(足白癬、体部白癬、股部白癬)、皮膚カンジダ症(指間びらん症、間擦疹(乳児寄生菌性紅斑を含む))、癜風、脂漏性皮膚炎となっています。
用法用量は疾患によって異なり、白癬・皮膚カンジダ症・癜風に使用する場合は1日1回、脂漏性皮膚炎に使用する場合は1日2回患部に塗布することとされています。
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ニゾラールを塗るときのコツ
クリーム
クリームは、人差し指の第一関節まで絞り出した量が約0.5gとなります。クリーム0.5gで手のひら2枚分くらいの範囲に塗り広げられますので、これを目安に塗布する量を決めてください。
足の水虫治療にニゾラールクリームを使う場合は、人差し指の第一関節より少し多めの量がだいたい片足分になります。水虫の症状がある部分だけではなく、足の指の間・アキレス腱のまわり・外側面にもくまなく塗って、感染の広がりをおさえましょう。
ローション
ローションの使用方法は以下のとおりです。
- キャップをしたまま、容器をよく振ってください。
- キャップを外し、容器の先端を手のひらに軽く押し当てます。
- 先端を押し当てたまま容器の胴部分を押すと、薬液が出てきます。
- 手にとった薬液を、患部に塗ってください。
なお、ローションを使う際は目に入らないように注意してください。目に入った場合は水かぬるま湯ですぐに洗い流し、痛みなどが残る場合は早めに診察を受けてください。
クリームとローションの使い分け
クリームは、基本的にどの部位にも使用できます。ただし、若干べたつきがあるため、被毛部の治療にはローションのほうが適しています。
ローションは浸透力が強いため、皮膚が硬くなっている部分や厚くなっている部分の治療に適しています。しかし、皮膚への刺激が強いため、浸潤している部分の治療にはクリームのほうが適しています。
ニゾラールを外用する上での注意点
ニゾラールを塗ってはいけない例・使用に注意が必要な例
ニゾラールの成分に対して過敏症の既往歴がある方は、ニゾラールを使用できません。また、眼科用として角膜や結膜に使用することもできません。著しいびらん面への使用も避ける必要があります。
ニゾラールの副作用について
おもな副作用として報告されているのは、刺激感、そう痒、接触皮膚炎、紅斑、水疱などです。ニゾラールを塗布した部分にこのような症状があらわれた場合は、早めにご相談ください。
日常生活における注意点
ほかの治療薬との併用に関して
病気の治療で飲み薬を服用している場合でも、ニゾラールは使用できます。
ただし、ニゾラールを使用している部位に、自己判断でステロイド外用薬を塗らないようにしてください。水虫をはじめとした真菌感染症に対してステロイド外用薬を使用すると、症状が悪化するおそれがあります。
その他の外用薬も使い分けが必要な場合がありますので、併用したい薬がある場合は診察時にご相談ください。
保管法などその他の注意点
直射日光や高温多湿を避けて常温で保管してください。冷蔵庫で保管する必要はありません。
また、幼いお子さまの手の届く場所には置かないようにご注意ください。
なお、治療終了の指示があった後も薬が残っている場合は、誤用を避けるために廃棄してください。
特定の患者さまの使用に関して
妊娠中の方・授乳中の方への使用に関して
ニゾラールは皮膚からほとんど吸収されませんが、動物を対象とした試験では経口投与で催奇形作用が報告されています。そのため、妊娠中の方・妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ処方を考慮します。
授乳中の方については、治療上の有益性や母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続あるいは中止を検討したうえで処方の可否を判断します。
お子さまへの使用に関して
ニゾラールは、低出生体重児や新生児を対象とした臨床試験を実施していません。そのため、お子さまに使用する際には、年齢や症状、治療の有益性や予想されるリスクなども考慮しながら治療内容を検討します。
ニゾラールの患者負担・薬価について
ニゾラールクリーム・ニゾラールローションの薬価は、いずれも24.1円/gです。また、後発品としてスプレータイプのものも販売されています。ただし、スプレータイプは薬価が37.1円/gとなっているため、先発品のニゾラールクリーム・ローションにくらべて薬剤費は高くなります。
なお、患者さまにご負担いただく薬剤費は、保険割合に応じて変わります。例えば、3割負担の患者さまがニゾラールローション10g/ボトルを処方された場合、ご負担金額は72.3円になります(薬剤費のみの計算です)。
よくあるご質問
- ニゾラールと同じ成分の市販薬はありますか?
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ニゾラールと同成分の市販薬はありません。ただし、ニゾラールと同じイミダゾール系の抗真菌薬はドラッグストアなどでも購入できます。
もっとも、市販の抗真菌薬の多くはカンジダ症あるいは水虫にしか適応がありません。脂漏性皮膚炎には使用できないため、ご注意ください。
また、市販の抗真菌薬をカンジダ症や水虫に使う場合でも、正しく使用しなければ十分な効果が得られません。
市販薬を使用しても症状が治まらない場合や再発を繰り返す場合、症状がかえって悪化する場合などは早めに受診しましょう。
- ニゾラールを水虫に使う場合、どのタイミングで塗るのがよいですか?
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ニゾラールなど外用抗真菌薬を水虫に使う場合は、入浴後に使用するのがおすすめです。
入浴後は皮膚が軟らかくなっていて薬剤が浸透しやすいため、より高い効果が期待できます。
- 水虫が片足だけにできています。ニゾラールを塗るのは、症状のあるほうの足だけでいいですか?
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症状がないことと水虫菌がいないことは必ずしもイコールではありません。片足に症状がある場合は、念のため反対側の足にもニゾラールを塗布してください。
なお、感染範囲を広げないためには、症状のある部分だけでなく、足の裏全体・足の側面・指の間にも薬を塗ることが大切です。また、ニゾラールの塗布で症状が改善したように見える場合でも、原因菌が皮膚の奥に潜んでいることがあります。
水虫を完治させるためには、見た目の症状が改善したあとも治療をしばらく続ける必要があるため、自己判断で治療を中断しないようにしましょう。
- 海外ではニゾラールのシャンプーがあると聞きました。個人輸入して使ってみてもいいですか?手に入らない場合は、市販のシャンプーにニゾラールを混ぜてもいいですか。
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ニゾラールのシャンプーを個人輸入して使用することは、おすすめできません。
ニゾラールシャンプーは日本国内で認可された医薬品ではなく、日本人を対象とした臨床試験も実施されていません。また、このような製品を自己判断で使用して副作用が生じても、国の医薬品副作用救済制度で救済を受けることはできません。そのため、安易に購入・使用するのは避けてください。
なお、市販のシャンプーにニゾラールを混ぜるのもおすすめできません。このような使い方をした場合の効果が不明ですし、シャンプーと混ぜることで思わぬ副作用が生じる可能性もあります。医薬品副作用救済制度では、使用方法が適正でないと医療費などの給付が認められませんので、そのような観点からもおすすめできません。