チャドクガに要注意!毛虫皮膚炎の治療や予防を専門医が解説します

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毛虫皮膚炎とは、毛虫の毒がある毛やトゲに接触することで引き起こされる皮膚疾患の総称です。毛虫皮膚炎の原因となる毛虫はいくつかの種類がありますが、なかには重い症状を引き起こすものもあるため、適切な予防法と治療法がとても大切です。
今回はチャドクガの毛虫皮膚炎を紹介いたします。

毛虫皮膚炎を引き起こすチャドクガとは

チャドクガはお茶の木に発生する毒蛾だったことから「茶毒蛾(チャドクガ)」と言う名前が付いています。チャドクガの幼虫はツバキやサザンカ、お茶などを好んで食べるため、これらの樹木に生息していることが多いです。ツバキ科の植物を自宅に植えていたり、近所の公園などに植えられていたりすると発症確率が高くなります。たとえば、庭仕事や植え込みを刈った後に、皮膚に強いかゆみや赤いブツブツができたので皮膚科を受診に来た、という方は非常に多いです。

チャドクガの幼虫は長さ0.1mmほどの目に見えない位の小さな約50万本の毒針毛(どくしんもう)が全身に密集しており、この針に触れることで皮膚炎が発症します。チャドクガの幼虫は年間2回孵化します。5~6月頃や8~9月頃に多く発生するためこの時期が発症のピークになります。ただし、チャドクガは卵から成虫になるまでずっと毒針毛を持っており、さらに脱皮したあとの抜け殻に触れるだけでも発症するので、1年を通じて注意が必要な虫だと言えます。

大量発生する年がある

チャドクガは本州・四国・九州でよく見られる虫ですが、気候や気温によって大量発生する年があります。また、毛虫を食べる鳥やスズメバチ、カマキリなどが天敵なのですが、天敵からうまく身を隠して成虫になることができた毛虫が大量の卵を産み、翌年以降に大量発生するということもあります。

意外なところで接触する恐れが

チャドクガによる皮膚炎の問題のひとつは、気づかないうちに触れて発症することです。

例えば公園でよく遊ぶお子さんなどでは、植え込みを触ったりして発症するとわかりますよね。しかし、スーツを着て働いている大人の方が、いつの間にか腕や首まわりで発症していたということもあります。これは、毒針毛が非常に細かく軽いため、風に飛ばされて服の隙間から入り込んだのではないかと思われます。あるいは洗濯物に付着して家の中に持ち込んでしまい、毒針毛がついた衣服を知らないうちに着てしまって発症することもあると思われます。

このほか、駆虫剤の散布や庭の剪定作業を業者の方にお願いしていたが、集めた落ち葉を片付けるなどしていたら舞い上がった毒針に接触してしまうということもあります。

チャドクガによる毛虫皮膚炎の症状

チャドクガによる毛虫皮膚炎は症状が激しく出ます。身体の一部に、強いかゆみを伴った赤いぶつぶつが突然大量に発症し、やがて水ぶくれになるまで拡大して、耐えがたい腫れや痛みにまでなることもあります。

発症から1~2日に症状のピークになり、1~2週間ほどで治まっていくことが多いようです。かゆみがありますが、患部をひっかいたりこすったりはしないよう注意してください。細菌に感染することでとびひをはじめとする他の皮膚炎・感染症にかかってしまう恐れがあります。

患部になりやすい部位

毛虫皮膚炎の好発部位は首、腕、脚といった衣服から露出している箇所です。ただし、衣服に付着した毒針毛の場合は、衣服に覆われている腹部や背中などでも発症します。

チャドクガの毛虫皮膚炎の予防法

チャドクガは自宅の庭、ベランダや、近所の公園、学校の校庭など身近なところに生息しています。また、ツバキ科などの樹木の近くにいなくても、風に乗って飛んできたり、衣服に付いたりします。

予防法としては、まずはチャドクガの繁殖時期(5~6月、8~9月頃)はあまり肌の露出の多い服装をしないことが最も効果的です。また、洗濯物は室内干しにする対策法もいいでしょう。

チャドクガの毛虫皮膚炎の治療法

発症の直後であれば患部を流水でよく洗ってください。赤みや腫れ、かゆみが出てきたら冷やす処置をとります。衣服にも付着している可能性があるので、そっと脱いで、一回の洗濯ではとりきれない可能性のあるため、他の洗濯物とは別々にわけて洗うことも大切です。

毛虫皮膚炎に対応可能な市販薬もありますが、専用の薬などは特にないので、すみやかに皮膚科など医療機関を受診してください。

医療機関では、ステロイド外用薬の処方を行う処置が主となります。かゆみが強く、患部をかきむしってしまう恐れがある場合は抗アレルギー薬の内服薬も併用することがあります。また、患部を保護するために清潔なガーゼなどを当てます。

まとめ
  • チャドクガの毒針毛が皮膚炎を引き起こす
  • 特に幼虫に注意が必要だが、卵から成虫まで毒針毛を持っている
  • チャドクガの卵が孵化するのは5~6月、8~9月頃
  • ツバキ、サザンカ、お茶などの樹木に生息
  • 庭仕事や公園で遊んでいるときなどに多く発症
  • 衣服や洗濯物にチャドクガの毒針毛が付着していることもある
  • はげしい痒みをともなった赤い発疹・水ぶくれができる
  • ステロイド外用薬や抗アレルギー内服薬を処方する
  • 早めに皮膚科の受診を推奨
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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。