公開日:2022年04月10日
最終更新日:2025年12月26日
毛虫皮膚炎とは、毛虫の毒がある毛やトゲに接触することで引き起こされる皮膚疾患の総称です。毛虫皮膚炎の原因となる毛虫はいくつかの種類がありますが、なかには重い症状を引き起こすものもあるため、適切な予防法と治療法がとても大切です。
今回はチャドクガの毛虫皮膚炎を紹介いたします。
毛虫皮膚炎を引き起こすチャドクガとは
チャドクガはお茶の木に発生する毒蛾だったことから「茶毒蛾(チャドクガ)」と言う名前が付いています。チャドクガの幼虫はツバキやサザンカ、お茶などを好んで食べるため、これらの樹木に生息していることが多いです。ツバキ科の植物を自宅に植えていたり、近所の公園などに植えられていたりすると発症確率が高くなります。たとえば、庭仕事や植え込みを刈った後に、皮膚に強いかゆみや赤いブツブツができたので皮膚科を受診に来た、という方は非常に多いです。
チャドクガの幼虫は長さ0.1mmほどの目に見えない位の小さな約50万本の毒針毛(どくしんもう)が全身に密集しており、この針に触れることで皮膚炎が発症します。チャドクガの幼虫は年間2回孵化します。5~6月頃や8~9月頃に多く発生するためこの時期が発症のピークになります。ただし、チャドクガは卵から成虫になるまでずっと毒針毛を持っており、さらに脱皮したあとの抜け殻に触れるだけでも発症するので、1年を通じて注意が必要な虫だと言えます。
大量発生する年がある
チャドクガは本州・四国・九州でよく見られる虫ですが、気候や気温によって大量発生する年があります。また、毛虫を食べる鳥やスズメバチ、カマキリなどが天敵なのですが、天敵からうまく身を隠して成虫になることができた毛虫が大量の卵を産み、翌年以降に大量発生するということもあります。
意外なところで接触する恐れが
チャドクガによる皮膚炎の問題のひとつは、気づかないうちに触れて発症することです。
例えば公園でよく遊ぶお子さんなどでは、植え込みを触ったりして発症するとわかりますよね。しかし、スーツを着て働いている大人の方が、いつの間にか腕や首まわりで発症していたということもあります。これは、毒針毛が非常に細かく軽いため、風に飛ばされて服の隙間から入り込んだのではないかと思われます。あるいは洗濯物に付着して家の中に持ち込んでしまい、毒針毛がついた衣服を知らないうちに着てしまって発症することもあると思われます。
このほか、駆虫剤の散布や庭の剪定作業を業者の方にお願いしていたが、集めた落ち葉を片付けるなどしていたら舞い上がった毒針に接触してしまうということもあります。
チャドクガによる毛虫皮膚炎の症状
チャドクガによる毛虫皮膚炎は症状が激しく出ます。身体の一部に、強いかゆみを伴った赤いぶつぶつが突然大量に発症し、やがて水ぶくれになるまで拡大して、耐えがたい腫れや痛みにまでなることもあります。
発症から1~2日に症状のピークになり、1~2週間ほどで治まっていくことが多いようです。かゆみがありますが、患部をひっかいたりこすったりはしないよう注意してください。細菌に感染することでとびひをはじめとする他の皮膚炎・感染症にかかってしまう恐れがあります。
患部になりやすい部位
毛虫皮膚炎の好発部位は首、腕、脚といった衣服から露出している箇所です。ただし、衣服に付着した毒針毛の場合は、衣服に覆われている腹部や背中などでも発症します。
チャドクガの毛虫皮膚炎の予防法
チャドクガは自宅の庭、ベランダや、近所の公園、学校の校庭など身近なところに生息しています。また、ツバキ科などの樹木の近くにいなくても、風に乗って飛んできたり、衣服に付いたりします。
予防法としては、まずはチャドクガの繁殖時期(5~6月、8~9月頃)はあまり肌の露出の多い服装をしないことが最も効果的です。また、洗濯物は室内干しにする対策法もいいでしょう。
チャドクガの毛虫皮膚炎の治療法
皮膚への応急処置
チャドクガによる皮膚炎が疑われる場合は以下の手順で応急処置を行い、できるだけ早く皮膚科を受診してください。
1.絆創膏などで毒針毛を取り除く
絆創膏やテーピング用のテープなどで患部周辺をやさしく押さえ、毒針毛を取り除きます。強く貼り付けたり引っ張ったりせず、何度か繰り返して取り除くようにしましょう。粘着力の強いテープ(ガムテープやセロファンテープなど皮膚用ではないもの)は皮膚を傷つけるリスクが高いため、使用を避けてください。
2.水で毒針毛を洗い流す
皮膚に付着した毒針毛を流水で洗い落とします。手で払ったりこすったりすると、症状が広がったり毒針毛が皮膚に深く刺さったりするおそれがあるため、十分に注意してください。
3.症状を緩和する
赤みやはれ、かゆみなどが出てきたら、患部を冷やしてください。毛虫皮膚炎に対応可能な市販薬もありますが、専用の薬などは特にないので、すみやかに皮膚科など医療機関を受診してください。
衣類への対処方法
毒針毛が衣類に残っていると、着用時にかゆみなどがあらわれるおそれがあります。
毒針毛が付着している可能性のある衣類は、以下のような手順で処理しましょう。
1.粘着テープで衣類表面についた毒針毛を取り除く
衣類に付着した毒針毛は、ガムテープや養生テープなどの幅広の粘着テープで取り除きましょう。
掃除機で吸い取るのもおすすめです。
2.ほかの衣類と分けて洗濯する
毒針毛が付着した衣類は、単独で洗うようにしましょう。
チャドクガの毒は熱に弱いため、少し熱めの湯(50度以上)で洗うのも良い方法です。
熱湯を使う場合は、ヤケドにご注意ください。
3.ていねいにすすぐ
洗濯をする際はすすぎ時間を長めに設定して、しっかり毒針毛を洗い流しましょう。
1回ではすべての毒針毛を取り切れないことがあるため、できるだけ複数回洗濯するようにしてください。
医療機関での対応
医療機関では、ステロイド外用薬の処方を行う処置が主となります。かゆみが強く、患部をかきむしってしまう恐れがある場合は抗アレルギー薬の内服薬も併用することがあります。また、患部を保護するために清潔なガーゼなどを当てます。
よくあるご質問
- どういう症状が出たらチャドクガによる皮膚炎を疑えばいいですか?
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特にツバキやサザンカなどの木に近づいたあと、「強いかゆみ」や「赤いぶつぶつ」などが比較的広範囲にあらわれた場合は、チャドクガによる皮膚炎の可能性があります。
- 皮膚以外に症状が出ることはありますか?
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風で舞い上がった毒針毛を吸い込むと、まれに咳やのどの痛み、息苦しさなどがあらわれることがあります。
また、目に入ると、目の充血や痛み、異物感などが生じることがあります。
- チャドクガでアレルギー症状が出ることはありますか?
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チャドクガの毒針毛に刺された経験が何度もあると、アレルギー症状が出ることがあります。
この場合、刺された部分だけでなく全身にも症状が出るため、すみやかに医療機関を受診してください。
- 家族が刺された場合、同居者が注意すべきことはありますか?
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毒針毛が残っていると、衣類や寝具、タオルなどを介して同居している方に付着・拡散するおそれがあります。
チャドクガの毒針毛がついていると思われる衣類は別に洗濯し、患部から毒針毛を取り除くまではタオルなどの共有を避けてください。
床などに毒針毛が落ちている可能性がある場合は、再飛散を防ぐため静かに掃除するようにしましょう。
- チャドクガはどうやって駆除すればいい?
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チャドクガは、園芸用の殺虫剤で駆除できます。
殺虫剤をかけると落ちてくるので、触れないように気をつけてください。
毛虫が1枚の葉に集まっている場合は、葉にポリ袋をかぶせて枝ごと切り取り、さらに袋をかけて2重にしてからしっかり口を縛り、各自治体のルールに従って処分してください。
捨てるときは袋に「毛虫注意」と書き込み、被害が拡大しないようにしましょう。
- 駆除するときの注意点は?
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チャドクガを駆除するときは、肌を露出しない服装(長袖・長ズボン・手袋・マスク・帽子・ゴーグルなどを着用)をしてください。
そして、作業後はすぐに着替えてシャワーを浴びてください。
また、毒針毛は風で飛散するため、ほうきで掃く・強く叩くなどの動作は避け、静かに処理することが大切です。
なお、毛虫が樹木全体に広がっている場合は、専門業者に駆除を依頼してください。
まとめ
- チャドクガの毒針毛が皮膚炎を引き起こす
- 特に幼虫に注意が必要だが、卵から成虫まで毒針毛を持っている
- チャドクガの卵が孵化するのは5~6月、8~9月頃
- ツバキ、サザンカ、お茶などの樹木に生息
- 庭仕事や公園で遊んでいるときなどに多く発症
- 衣服や洗濯物にチャドクガの毒針毛が付着していることもある
- はげしい痒みをともなった赤い発疹・水ぶくれができる
- ステロイド外用薬や抗アレルギー内服薬を処方する
- 早めに皮膚科の受診を推奨
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。