フルメタとは?
フルメタ(一般名:モメタゾンフランカルボン酸エステル)は、皮膚血管収縮作用や抗炎症作用を有するステロイド外用剤で、皮膚炎
や湿疹、乾癬、ケロイドや脱毛症などの症状改善に使用されます。
ステロイドは強さにより5段階に分類されますが、フルメタの強さは上から2番目のベリーストロングクラスです。同じ強さのステロイド外用薬としては、アンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)、リンデロンDP(ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)、マイザー(ジフルプレドナート)、ネリゾナ(吉草酸ジフルコルトロン)などがあります。
なお、「フルメタ」という名称は、一般名の「Mometasone Furoate」に由来します。
» ステロイド外用薬の詳細はこちら
フルメタの特徴
フルメタには、軟膏・クリーム・ローションの3つの剤型があります。被毛部などにはローションを使い、皮膚の乾燥が気になる部分には保湿力の高い軟膏を使うなど、皮疹の状態や部位、季節に応じた使い分けが可能です。
なお、効果はどの剤型でも同じです。
フルメタの使い方
フルメタは、湿疹や皮膚炎群、乾癬、掌蹠膿疱症、薬疹や中毒疹、虫さされ、痒疹群、肥厚性瘢痕やケロイド、円形脱毛症などに適応があります。
ただし、原則として皮膚感染をともなう湿疹・皮膚炎には使用しません。やむを得ず使用する場合は、あらかじめ抗菌剤や抗真菌剤で治療を行うか、これらとの併用を考慮します。
使用回数は通常1日1~数回で、適量を患部に塗布します。そして症状改善後は使用量や使用回数を徐々に減らすなどして、できるだけすみやかに他の緩和な局所療法への移行を目指します。
フルメタを外用する上での注意点
フルメタを塗ってはいけない例
以下の場合は、フルメタの使用を避けなければなりません。該当する事項がある場合は、必ずご相談ください。
- 細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルスなどの皮膚感染症、および疥癬やけじらみなどの動物性皮膚疾患をともなう場合(症状が悪化することがあります。)
- フルメタの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
- 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎の場合(治癒の遅延や感染のおそれがあります。)
- 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷の場合(皮膚の再生が抑制され、治癒が遅延するおそれがあります。)
なお、フルメタを使用中に上記の疾患にかかったり症状があらわれたりした場合は、自己判断で薬の使用を中止せず診察を受けてください。薬の使用を急にやめると、フルメタで抑えられていた症状が悪化するおそれがあります。
顔や陰部への外用について
プレドニン眼軟膏を連用すると、数週後から眼圧亢進や緑内障があらわれることがあります。そのため、やむを得ず長期連用する場合は定期的な眼圧検査が必要です。
また、プレドニン眼軟膏によるその他の重大な副作用として、眼部の穿孔や後嚢白内障などが報告されています。
重大な副作用が発生することは稀ですが、下記のような症状があらわれた場合はすみやかに診察を受けてください。
顔や陰部への外用について
顔や陰部は体のほかの部位に比べて皮膚が薄いため、ステロイドの吸収率が高く副作用が発現しやすいというリスクがあります。
特にフルメタは、上から2番目の強さに分類される比較的作用の強いステロイド外用薬なので、指示がない限り顔や陰部には使用しないでください。また、フルメタを使用する際は、漫然と使い続けたり自己判断で塗布範囲を広げたりしないようにしましょう。
副作用のニキビについて
フルメタを使用すると、薬を塗布した部分に赤みを帯びたニキビや白っぽいニキビのようなものができる場合があります。しかしながら、ニキビの発生を心配して塗布量を減らすと、本来の疾患に対する治療の効果が不十分になるおそれがあります。フルメタの塗布にともないニキビなど気になる症状があらわれた場合は、自己判断で薬の使用量を加減する前にご相談ください。
なお、副作用で生じたニキビは、治療が終了すれば徐々に治癒していきます。
» ニキビ(尋常性ざ瘡)の詳細はこちら
まぶたへの使用・長期にわたる広範囲の使用について
フルメタをまぶたに使用すると、眼圧の亢進や緑内障をまねくおそれがあります。また、大量あるいは長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)により、緑内障や後嚢白内障などの症状があらわれることもあります。
フルメタの使用中に、目の痛みやまぶしさ、目のかすみ、頭痛などを感じる場合はこれらの副作用の初期症状の可能性があるため、早急に診察を受けてください。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
病気の治療で内服薬を服用している場合でも、フルメタの使用に問題はありません。ただし、他のステロイド外用薬を使用している場合は、過剰投与になるおそれがあります。ステロイド以外の外用薬を併用している場合も使い分けが必要な場合があるため、必ず併用薬をお伝えください。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方への使用に関して
フルメタは、動物を対象とした試験で催奇形作用や胎児への移行、乳汁中への移行が報告されています。そのため、妊娠中の方または妊娠の可能性のある方については、使用しないことが望ましいとされています。やむを得ず使用する場合でも、大量または長期にわたる広範囲の使用は避けなければなりません。
また、授乳中の方については、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮したうえで、授乳の継続または中止を検討します。
お子さま、ご高齢の方への使用に関して
お子さまへの使用については、長期・大量の使用や密封法(ODT)は避ける必要があります。特に、おむつは密封法(ODT)と同様の作用があるので注意が必要です。
また、高齢の方については一般的に副作用があらわれやすい傾向があります。そのため、大量または長期にわたる広範囲の密封法(ODT)などに際しては、特に注意して治療を進めていきます。
フルメタの患者負担・薬価について
フルメタの薬価は、各剤型とも23.0円/gです。各剤型・規格の薬剤費は以下のとおりになります。
ただし、患者さまにご負担いただくのは保険割合に応じた金額になります。例えば、3割負担の患者さまがフルメタ軟膏10g/1本を処方された場合、ご負担金額は69.0円です(薬剤費のみの計算です)。
なお、フルメタには各剤型ともジェネリック品があります。ジェネリック品の薬価は14.4円/g(5g/本で72.0円、10g/本で144.0円)なので、薬剤費の抑制に役立ちます。
よくあるご質問
- フルメタと同じ成分の市販薬はありますか?
-
ありません。フルメタと同じ強さ(ベリーストロング)のほかのステロイド外用薬も市販されていません。ドラッグストアなどで購入できるステロイド外用薬は、上から3番目のクラス(ストロングクラス)が最も強いものになります。フルメタと同等の効果は期待できないため、ご注意ください。
なお、ステロイド外用薬は強さを急に変えると症状が再燃することがあります。そのため、フルメタから急に市販薬に変更するのは避けてください。
- フルメタは強いステロイドと聞いているので、たくさん塗るのが不安です。どれくらいが適量ですか。
-
軟膏・クリームの場合は、指の関節一つ分の量(約0.5g)を手のひら2枚分くらいの範囲に塗布してください。ローションの場合は、1円玉くらいの量(約0.5g)を手のひら2枚分くらいの範囲に塗布してください。塗布範囲が手のひら2枚分より狭い場合は、適宜使用量を減らしてください。
なお、軟膏の場合、この量を目安に塗ると若干べたつきを感じることがありますが、けっして塗りすぎではありません。副作用をおそれて使用量を控えると十分な効果が得られず、治療期間が長引くおそれがあります。
フルメタをしっかり使用して症状が落ち着いてきたら、少しずつ効果がマイルドな薬に切り替えていきますので、ご安心ください。
- フルメタを塗り忘れた場合はどうすればいいですか?
-
塗り忘れに気付いたタイミングで塗布すれば大丈夫です。ただし、次の塗る時間が近い場合は忘れた分をとばし、次から指示通りに塗ってください。
なお、塗る量は1回分のみです。2回分塗らないでください。
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。