塩化アルミニウムとは?
塩化アルミニウムは、多汗症の治療に用いられる薬剤です。汗管の細胞に作用して汗の通り道を塞ぎ、発汗を抑制します。
「原発性局所多汗症診療ガイドライン」では、腋窩(わきの下)・手掌(手のひら)・足底・頭部・顔面における多汗症治療の第一選択の一つとして塩化アルミニウムの外用が挙げられています。
オンライン診療対応可能
当院では、初診からオンライン診療にて多汗症の治療薬の処方を行っております。
通院なしで症状に合った薬剤をお送りすることができます。
アプリをインストールする必要はなく、システム利用料もいただいておりません。
ぜひご利用ください。
» オンライン診療の詳細はこちら
塩化アルミニウム液の効能効果
塩化アルミニウムは、原因が明らかでない原発性局所多汗症の治療に用いられます。効果は一時的ですが、長期間外用すると表皮汗管に対するダメージが継続し、結果として汗を分泌する細胞の機能的・構造的な変性が生じて汗の分泌がおさえられると考えられています。
なお、原因が明らかな続発性多汗症の場合は、多汗の原因である基礎疾患(内分泌代謝異常や神経疾患、感染症など)の治療が優先されます。
塩化アルミニウムの使い方
脇汗、手汗・足の裏における軽症の多汗症
就寝前に、濃度20~30%の塩化アルミニウムを発汗の多い部位に外用します。
塗布するのは通常1日1回ですが、日中に外用しても大丈夫です。
2~3週間外用を継続して汗が止まってきたら、塗布する頻度を週2~3回程度に減らしても構いません。ただし、治療を中断すると症状が再発するおそれがあります。
頭部や顔面の多汗症
就寝前に、濃度10~20%の塩化アルミニウムローションを発汗の多い部位に外用します。
塗布するのは通常1日1回ですが、日中に外用しても大丈夫です。
ただし、顔面に使用する際は、眼や眼の周囲、口唇とその周囲など表皮障害が強いと予想される部位は避けてください。
手汗・足の裏における中等症~重症の多汗症
就寝前に、手掌や足底の発汗部位に濃度20~50%の塩化アルミニウムローションを塗布(薄手のガーゼや綿の手袋などにローションを含ませるのも可)し、さらに上からプラスチック手袋やゴム手袋、食品用ラップなどで覆い、翌朝まで密封療法(ODT)を行います。
翌朝に外用部分を水洗いして塩化アルミニウムを取り除きます。
これを効果があらわれるまで連日行います。汗が止まってきたら、塗布頻度を減らしても構いません。
ただし、傷がある部位や手のひら・足の裏以外の部位(甲の部分や指の間など)は刺激皮膚炎を避けるため、あらかじめ白色ワセリンなどを塗布して保護する必要があります。
塩化アルミニウム液を外用する上での注意点
副作用について
副作用のなかで多いのは、塩化アルミニウムによる刺激性接触皮膚炎です。
刺激性皮膚炎は、ローションの濃度を薄める・塗布間隔を調節する・外用したあと早目に洗い流すなどの工夫で、症状を軽減させることが可能です。
もっとも、皮膚炎の症状によっては治療の中断やステロイド外用薬による治療が必要になります。強い刺激感やかゆみ、発疹などが生じた場合は、早めに受診してください。
保管方法について
塩化アルミニウム液は、光で劣化するため遮光保存が必要です。他の容器に詰め替える場合は、遮光容器を使用してください。遮光容器がない場合は、アルミホイルで包み光を遮るようにしましょう。
アルミニウムとアルツハイマー病との関連について
アルミニウムはアルツハイマー病との因果関係が指摘されていますが、今のところ皮膚に塩化アルミニウムを外用することでアルツハイマー病の発症リスクが高まったという報告はありません。また、アルミニウムの経口摂取とアルツハイマー病発症に因果関係はないとする報告もあります。
さらに、手掌の単純外用では、血液中の塩化アルミニウム濃度に上昇は見られなかったとの報告もあります。
したがって、少なくとも多汗症に塩化アルミニウムを外用する限りでは、アルツハイマー病の発症リスクが高まることはないと考えられています。
日常生活における注意点
他の治療薬との併用に関して
塩化アルミニウムは、市販の制汗剤と併用しても構いません。また、他の病気の治療で内服薬を服用している場合でも、塩化アルミニウムは外用できます。
イオントフォレーシス療法も併用可能ですが、刺激感が強くなるおそれがあります。
特定の患者さまへの使用に関して
妊娠中または授乳中の方、未成年の方の使用
塩化アルミニウムは、妊娠中や授乳中でも外用できます。また、未成年の方の使用も可能です。
したがって、妊娠中や授乳中の方、あるいは飲み薬や注射などによる治療に抵抗がある方にとっては、塩化アルミニウムによる治療は良い選択肢といえるでしょう。
塩化アルミニウムの費用
塩化アルミニウムは保険適用外の自費診療でご提供する自家製剤です。当院では、濃度の違う塩化アルミニウムローションをご用意しています。
使用量の目安は:1回0.5g(1円玉大:手のひら2枚分くらいの範囲に塗布できる量)を使用した場合、50ml:約100回分、100ml:約200回分となります。
よくあるご質問
- 塩化アルミニウムローションと同じ成分の市販薬はありますか?
-
当院の塩化アルミニウムローションは院内製剤です。ドラッグストアなどでは購入できませんので、ご承知ください。
なお、海外メーカー製造の塩化アルミニウムローションが通信販売サイトで販売されているようですが、海外の製品は日本の法律に基づく品質や有効性・安全性の確認が行われていません。また、海外メーカー正規品を騙る偽造品が販売されているケースもあるようです。
健康リスクを避けるためにも、個人輸入やインターネット通販などで塩化アルミニウム製剤を購入しないようにしましょう。
- 塩化アルミニウムローションを、就寝前に使用するほうがいい理由を教えてください。
-
就寝中は発汗をうながす交感神経の働きがおさえられるため、塗布したローションが汗で流れてしまうリスクが少なくなります。
結果として、塩化アルミニウムが汗管に浸透しやすくなり、効果があらわれやすくなるため、就寝前の使用がより有効とされています。
- 多汗症だと思うのですが、重症かどうかがわかりません。判断基準はありますか?
-
多汗症の重症度は、自覚症状である程度判定できます。以下の(3)(4)に該当する場合は、重症と考えてよいでしょう。
多汗の症状について、
(1)まったく気付かない、邪魔にならない。
(2)我慢できる、たまに邪魔になる。
(3)どうにか耐えられる、しばしば邪魔になる。
(4)耐えがたい、いつも邪魔になる。
もっとも、多汗症かどうかの診断はまた別になります。病気や服用している薬剤が原因で多汗の症状があらわれている場合もあるため、気になる症状がある場合はご相談ください。
- 塩化アルミニウムを外用すれば、ワキガも気にならなくなりますか?
-
多汗症とワキガは別の病気です。塩化アルミニウムの外用で発汗量を減らす効果は期待できますが、必ずしもにおいの軽減にはつながりませんので、ご理解ください。
- 保険適用の多汗症治療薬はないのですか?
-
保険適用の多汗症治療薬としては、エクロックゲルやラピフォートワイプ、アポハイドローション、プロバンサイン、ボツリヌストキシン注射などがありますが、いずれも適応部位が限られています。
特に頭部や顔面、手掌や足底の多汗症については保険適用で使用できる薬剤が少ないため、自費診療以外での治療が難しいのが現状です。
» 保険適用の多汗症治療薬の詳細はこちら
記事制作者
小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)
「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。