【変更点まとめ】アトピー性皮膚炎診療ガイドライン3年ぶり改訂

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2021年末に「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」が約3年ぶりに改訂されました。改訂ポイントを中心に解説いたします。

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診療ガイドラインとは?

診療ガイドラインとはエビデンス(科学的根拠)に基づいて最適と考えられる治療法を提示する文書のことで、我が国における標準治療といえます。
アトピー性皮膚炎診療ガイドラインは日本皮膚科学会と日本アレルギー学会が合同で作成しています。皮膚科医と小児科医が協働で執筆しており、医師がアトピー性皮膚炎の治療方針を決定する際に重要な判断材料となっています。なお専門的な内容にはなりますが全文が広く公開されていますので、どなたでも標準的な治療法を学ぶことができます。患者様にとっても大変参考になる内容ですのでご興味のある方はお読みになってください。

診療ガイドラインの改訂について

診療ガイドラインは作成時点におけるエビデンス、価値観、社会環境に基づいて作成されています。しかし医学は急速に進歩しており、疾患に関する知見は常に更新され続けています。そのため診療ガイドラインは3~5年ごとに見直され改訂されることが推奨されています。
過去においては最適だった治療法でも、新しいエビデンスによって考え方ががらりと変わってしまうことがあります。特にアトピー性皮膚炎の治療薬は近年効果の高い薬が多数発売されており治療選択の幅が広がっています。当院では診療ガイドラインの改訂を見逃さず医学知識をブラッシュアップし、常に標準治療をベースに最適な医療を提供したいと考えています。

アトピー性皮膚炎の治療目標

アトピー性皮膚炎治療の最終目標(ゴール)は「症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がなく薬物療法もあまり必要としない状態に到達しそれを維持すること。」とされています。アトピー性皮膚炎の患者様にとって望まれる状態ではないかと思います。ぜひ最終目標の状態を目指して頂きたいと思います。

皮膚科医が注目する改訂のポイント

今回の改訂のポイントは新しい治療薬(デュピクセント、コレクチム軟膏、オルミエント)の記載が加えられたことです。以下、推奨度とエビデンスレベルを併記してご紹介いたします。
*推奨度:学会がすすめる強さです。1が一番強い推奨です。
*エビデンスレベル:学会が推奨する時に参考にする臨床試験の結果です。複数の臨床試験の結果を参考にしております。Aは最も良い臨床試験の評価です。

デュピクセント/推奨度1エビデンスレベルA

生物学的製剤に分類されるデュピクセントが加わりました。2週間に1回皮下に注射して投与します。既存治療で効果不十分な15歳以上のアトピー性皮膚炎患者さんにお使いいただけます。発売して3年以上が経過して安全性や効果が確認されている薬剤です。導入に伴う事前の検査が不要で、寛解導入と維持の両方ですすめられております。当院でも多くの患者さまに導入しており、患者さまにとっても医療提供側にとっても満足度の高い治療です。

» デュピクセントの詳細はこちら

コレクチム軟膏/推奨度1エビデンスレベルA

JAK阻害薬に分類される外用薬としてコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)が加わりました。ステロイド外用薬のような皮膚委縮などの副作用はみられません。当院でもプロトピック軟膏で刺激のある方や、2歳以上のお子さまから成人の患者さまの治療に取り入れています。全身療法にも併用してお使いいただけます。

» コレクチム軟膏の詳細はこちら

オルミエント/推奨度1エビデンスレベルA

JAK阻害薬に分類される内服薬としてオルミエント(バリシチニブ)が追加されました。重症感染症予防の為、レントゲン検査や血液検査が必須の薬剤ですが寛解導入時におこなってもよいとされております。当院の経験では、かゆみを抑制する効果があり感染症の副作用で中止した症例はありません。

» オルミエントの詳細はこちら

補足情報

皮膚科学会からのレターによると、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインは今後も3年ごとに改訂していく予定で、2021年に保険適用されたリンヴォック(ウパダシチニブ)サイバインコ(アブロシチニブ)、モイゼルト(ジファミラスト)は次回改訂時に記載されるそうです。

その他の変更点

抗ヒスタミン薬/推奨度2エビデンスレベルB

アトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬の治療効果に信頼できる情報が存在しなかったので推奨度が下がりました。

新生児期からの保湿外用剤による発症予防/推奨度2エビデンスレベルB

今回の改訂により「出生直後から保湿外用剤によるスキンケアを行うことは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げる」の文言は削除され、「新生児期からの発症予防に保湿剤外用は一概には勧められない」という記載に変更されました。皮膚科でも小児科でも新生児期からのスキンケアは重要とされていますので、インパクトの大きい内容です。ただしハイリスク児(ご両親または兄弟の一人でもアレルギー疾患を持っている)の場合はスキンケアの早期介入が有効だとされています。
今回の改訂の背景として否定的な論文(2020年に2報(BEEP study、PreventADALL)、2021年に1報(千葉大小児科))などが報告されたため、エビデンスに基づいて判断した結果のようです。現在進行中の大規模研究もあるようなので結果を待ちたいと思います。

病勢マーカー血清SCCA2/推奨度2エビデンスレベルB

0~6歳の小児では、SCCA2というマーカーを検査することでアトピー性皮膚炎をより正確に鑑別できた報告があるようです。高温多湿でアトピー性皮膚炎の有病率が低い石垣島での研究での結果なので、寒冷地であればアトピー性皮膚炎を発症していたかもしれないお子さまも見分けられることになります。15歳以下では保険適用となっています。

光線療法/推奨度2エビデンスレベルB

小児に対する長期治療の安全性に関する情報は不十分であるため10歳未満への小児には勧められないとされています。

プロバイオティクス・プレバイオティクスによる発症予防・症状改善/推奨しない・エビデンスレベルB

乳酸菌やビフィズス菌など発症予防について多くの臨床試験が報告されているが現時点で診療現場で推奨することは時期尚早であるとされています。

患者による評価の追加

長期にコントロール状態を評価する指標としてADCTが追加されております。ADCTは6個の簡単な質問に答えることで病気の状態をスコア化できる指標です。当院でも長期コントロールの評価のために導入しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。アトピー性皮膚炎診療ガイドラインが改訂され、治療方法に対する評価が追記・修正されました。アトピー性皮膚炎は、様々な治療の選択肢により、徐々に良い状態を保つことができる疾患に変わってきているとと思います。アトピー性皮膚炎にお悩みの方、お気軽にご相談ください。

まとめ
  • アトピー性皮膚炎診療ガイドラインが3年ぶりに改訂された
  • 診療ガイドラインは標準治療が紹介されており患者さまにとっても有用
  • 新しい治療薬であるデュピクセント・コレクチム軟膏・オルミエントが掲載された
  • 病気をコントロールするための新しい血清マーカーSCCA2や評価方法ADCTが追加された
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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。