薬剤師

先生、今回は選択肢が増えている尋常性乾癬の治療薬について比較検討したいです。

ドクター

確かに増えましたよね。この表は近年尋常性乾癬に使えるようになった薬剤の一覧です。尋常性乾癬の治療は2010年以降、多くの生物学的製剤が承認され劇的に変わりました。今では10種類以上の薬剤があります。

2010年以降に増えた尋常性乾癬治療薬

薬剤師

こう見ると内服薬は２剤のみで、生物学的製剤の注射がほとんどなんですね。

ドクター

そうですね。生物学的製剤は従来の治療法に比べて高い効果が得られますが、取り扱うには日本皮膚科学会から使用許可を得る必要があります。

薬剤師

一部の承認施設でのみ受けられる治療ということですね。先生のクリニックは乾癬分子標的薬使用承認施設なのでどのお薬でも選択できますよね。飲み薬でも承認は必要なのでしょうか？

ドクター

オテズラは承認施設でなくても使用できますが、ソーティクツは承認施設でないと難しいです。ちょうど23年12月でソーティクツが発売から１年経過し、長期処方ができるようになったので、オテズラと比較して整理しましょうか。

薬剤師

ぜひお願いします。オテズラとソーティクツの文献は確かここに（ゴソゴソ）・・・ありました！ではお願いします。

ドクター

当院の乾癬全身療法は、注射よりも経口薬を選ばれる患者さまが多いです。おそらく飲み薬の方が受け入れやすいのでしょう。
経口薬の中ではオテズラをソーティクツよりも多く処方しています。これはオテズラが早く発売されたことも影響しています。
それではこれらの経口薬の特徴を比較していきましょう。

薬剤師

経口薬はどんな点に注意して選んだらいいのですか？

ドクター

そうですね。項目をリストアップするとこんな感じです。

• 効果（強さ・早さ）と副作用
• 服用方法
• 治療の前に必要な検査（スクリーニング）
• 費用負担

これらの点と患者さまのお話を伺いながら、総合的に判断していきます。

薬剤師

順に確認させてください！

テーマ１：効果（強さ・早さ）と副作用

ドクター

くすりは効果を期待して投与するので、効果の強さや早さは大事ですね。ただし効果だけでは治療は決められません。
効果（主作用）以外の望まない作用である副作用は、薬の効果と表裏一体なのでしっかりと把握する必要があります。

薬剤師

主作用のメリットが副作用のデメリットをどれぐらい上回るか、許容範囲の判断が大事になってきますね。

効果と副作用は？

薬剤師

これがオテズラとソーティクツの２剤を直接比較した「POETYK PSO-1」試験の結果です。乾癬の重症度を表すPASIを主要評価項目として、PASI75（PASIスコア75％改善）の達成率を比較しています。これによるとソーティクツは約7割、オテズラは約4割と、ソーティクツの方が有意に高い達成率を示していました。

※POETYK PSO-1試験：中等症から重症の尋常性乾癬患者664名を対象に、ソーティクツ（6mgを1日1回投与）の安全性および有効性を、プラセボおよびオテズラR（一般名：アプレミラスト）（1回30mgを1日2回投与）と比較評価した。

ドクター

この試験で興味深いのは日本人のデータを含んでいるところです。人種によって体質は異なるのですが、日本人のサブ解析の結果を見るとPASI75の差はさらに広がっていました。

ナース

こんなに違うんですね。飲み始めてどれぐらいで効果が出るんですか？

薬剤師

試験結果から見ると両剤とも2週～4週にかけてスコアの改善がみられています。

ドクター

確かにオテズラは使い始めて2週間で改善を実感される患者さまもいらっしゃいます。個人差はありますが、ソーティクツは4週ぐらいから改善がみられるイメージです。

ナース

効果が早く出ると患者さまも喜びますね！
この試験の副作用について教えてください。

薬剤師

感染症の副作用はソーティクツとオテズラとも同程度でした。
患者さまが気にされる下痢の副作用は、ソーティクツ2.6%、オテズラ6.5%と違いがみられました。

ナース

急にトイレに行けないお仕事をされている患者さまですと、下痢の副作用はつらいですね。

薬剤師

薬剤の効果（強さ）や副作用を比較するとソーティクツがよさそうですね。

ナース

他の疾患でも同じですが、後から発売されたおくすりの方が効果が高いことが多いですね。

テーマ２：服用方法

ナース

次にオテズラとソーティクツの服用方法について教えてください。

薬剤師

ソーティクツはとても簡単で１日１回１錠です。食事の影響も受けないので非常にシンプルです。

ナース

これはわかりやすいですね。間違えなさそう！
オテズラはどうですか？

薬剤師

オテズラは導入初期に服用する量が変わるので薬剤師も慎重に確認するようにしています。ただし２週間分がセットになったスターターパックが用意されているのでそれほど難しいわけではないです。

ナース

製薬会社さんも工夫されているんですね！

テーマ３：治療の前に必要な検査（スクリーニング）

薬剤師

治療を開始するにあたって、事前にどんな検査が必要なんですか？

ドクター

オテズラは検査が不要です。施設要件も特にありません。

ナース

検査が必要ないのは患者さまも助かりますね。
ということは、その日から治療を始めることもできるのですか？

ドクター

前治療として外用薬や光線療法で効果不十分だった場合には、その日からでもオテズラの治療を開始できます。

薬剤師

うちの薬局はオテズラのスターターパックの在庫を確保していますので、いつでも大丈夫です。任せてください！
ソーティクツにはどんな検査が必要なんですか？

ドクター

ソーティクツはスクリーニング項目に胸部X線検査があり、導入前に肺に異常がないかを確認する必要があります。

ドクター

胸部X線とは通称レントゲンのことで、一般的な皮膚科クリニックでレントゲンの機器を持っている施設はなかなかないと思います。
幸い当院は同じビル内に、機器をお持ちの内科の先生がいらっしゃるので検査がスムーズに行えます。

薬剤師

内科の先生にも、いつもお世話になっています。

ナース

血液検査も必要ですよね？

ドクター

その通りです。B型肝炎ウイルス感染の有無を確認する必要があります。これはナースさんが採血をして行います。

ナース

はい！私がやさしく採血させていただきます。

ドクター

頼りにしてます！
ちなみに当院では半年以内の健康診断の結果があれば代用できます。
そうはいっても事前の検査が必要ない分、患者さまにとってオテズラは始めやすいですね。

テーマ４：費用負担

薬剤師

最後に治療費についてです。各薬剤の治療にかかる費用を表にしました。

ナース

ソーティクツのほうが高いですね。

ドクター

薬価は厚生労働省が定めており、ソーティクツはオテズラに対して有用性加算が付いたため約1.5倍の薬価となっています。
それだけ有効性と安全性が認められた薬剤と言えるでしょう。

薬剤師

詳しく教えていただきありがとうございました。

ドクター

いえいえ、私も頭の整理になりました。

まとめ

ナース

これまでの内容を踏まえると、患者さまはどう考えたらよいでしょうか？

ドクター

そうですね。限られた医療機関でないと治療を始められないため、オテズラの方が始めやすいと思います。

ナース

オテズラよりも先にソーティクツを始めることもできるのでしょうか？

ドクター

はい、添付文書をよく読むと、以下のいずれかを満たす場合という記載があります。

• 光線療法を含む既存の全身療法（生物製剤を除く）等で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者
• 難治性の皮疹又は膿疱を有する患者

薬剤師

難治性の基準ってなんですか？

ドクター

「難治性」とは医師の判断に基づく基準ですので、症状次第ではソーティクツから治療を始めることができます。難治部位である頭皮や爪にも良いデータが出ていますよ。

ナース

患者さまは頭皮の落屑（フケ）が気になるので改善させたいとおっしゃる方が多いですね。色の濃いスーツを着るとフケが目立つので、仕事にも影響すると嘆いていらっしゃいました。

ドクター

患者さまが皮膚症状にとらわれない生活を送れるように、お一人お一人に合わせた治療を早く見つけられるよう力になりたいです。

薬剤師

使い方を確認できてスッキリしました。添付文書はネットでも見ることができるので治療を検討されている方は比較してみるとよいですね。

ドクター

まとめるとソーティクツはオテズラで効果不十分な方や副作用で続けられない方の有力な選択肢ととらえています。
ただし承認施設のみの取り扱いになるので、皮膚科学会の承認施設リストを確認してからご相談されるようにしてください。