漢方薬とは?
漢方薬は生薬を複数組み合わせて混合したお薬です。そのため漢方薬の効果は生薬の複合効果になるという特徴があります。比較的即効性のある処方から、緩やかに効果が現れる処方など数多くの漢方薬があります。
漢方では病態だけでなく、体質も考慮に入れて処方を検討するため、漢方独自の”ものさし”があります。代表的なものさしとして後述する「証(しょう)」と「気・血・水(き・けつ・すい)」があります。
長い年月をかけておこなわれた治療の経験によって、どの生薬を組み合わせるとどんな効果が得られるか、有害な事象がないかなどが確かめられ、現在の処方となりました。
オンライン診療対応可能
当院では、初診からオンライン診療にて漢方薬の処方を行っております。通院なしで薬剤をお送りすることが可能です(送料無料)。アプリのインストールは不要で、システム利用料も徴収しておりません。よろしければご利用ください。
» オンライン診療の詳細はこちら
漢方薬の基本的な考え方
生薬について
生薬とは自然界にある植物や鉱物を原料とし、保存や運搬に便利な形に加工したものです。例えばツムラ漢方製剤は119個の生薬(植物性が110個、動物性が5個、鉱物性が4個)を用いて製造されています。
植物性の生薬は、花や果実、種、根、茎、樹皮、葉などを用いており、草木によって用いる部分が異なります。有名な葛根湯は葛(くず)の根が主成分で、桂皮(シナモン)などが混合されています。他にもヨクイニン(ハトムギの種子)や桃仁(桃の種子)といった種を用いたり、茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケのようにキノコ類を生薬として使われたりすることもあります。
鉱物では、石膏(硫酸カルシウム)や牡蛎(カキの貝がら)などが生薬として使われています。なお国内で医薬品として承認されている漢方薬は厳しい規格で管理されており、生薬は契約農家が品質にこだわって生産していますので安心して服用することができます。
証について
「証」は、その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状のあらわれ方)の個人差を表すものさしです。証には実証と虚証があります。
実証
体力や抵抗力が充実している人のことを指します。他にも筋肉質でがっしり、血色がよく肌つやがある、胃腸が強く便秘気味などがあげられます。
- 体力がある
- 筋肉質でガッチリ
- 血色がよく、肌ツヤがある
- 大きくて太い声
- 胃腸が強くて便秘ぎみ
- 暑がり
虚証
体力がなく、弱々しい感じの人のことを指します。他にも細くて華奢や胃腸が弱く、下痢をしやすいなどがあります。
- 体力がなくて弱々しい
- 細くて華奢(きゃしゃ)
- 顔色が悪くて肌が荒れやすい
- 細くて小さな声
- 胃腸が弱くて下痢をしやすい
- 寒がり
気血水(きけつすい)について
「気・血・水」は、その人の不調の原因がどこにあるのかを探るものさしです。
漢方では、私たちの体は「気・血・水」の3つの要素が体内をうまく巡ることによって、健康が維持されていて、これらが不足したり、滞ったり、偏ったりしたときに、不調や病気、障害が起きてくると考えられています。 そのため、診察で「気・血・水」の状態を診て、どこに問題があるのかを探っていきます。
*気・血・水に関係なく症状などから判断して漢方薬を処方するケースもあります。
気
目に見えないエネルギーのことです。「元気」「やる気」「気合」の気です。自律神経の働きに近いとされています。「気」の不調には、気虚、気滞・気うつ、気逆などがあります。「気虚(ききょ)」は無気力や疲労感・だるさ・食欲不振、「気滞・気うつ(きたい・きうつ)」は頭重・のどが詰まった感じがする・息苦しい・おなかが張る、「気逆(きぎゃく)」はのぼせや動悸・発汗・不安感などの症状が出ると言われています。
血
血液と内分泌(ホルモン)のことを指しており栄養や潤い、修復材料、あたたかさを運ぶ役割を持っています。血の不調には「瘀血(おけつ)」と「血虚(けっきょ)」などがあります。「瘀血(おけつ)」は月経異常、便秘、おなかの圧痛(押すと痛む)、色素沈着、「血虚」は貧血、皮膚の乾燥、傷の治りが遅い、血行不良などの症候が出ると言われています。
水
血液以外の体液のことを指し、冷やして循環することが役割です。水の不調には水毒・陰虚などがあります。「水毒(すいどく)」はむくみ、めまい、頭痛、下痢、排尿異常、「陰虚(いんきょ)」は口渇や皮膚や粘膜の乾燥、手足のほてりなどの症状が出ると言われています。
漢方薬の対象疾患について
ニキビ
多汗症
かゆみ
漢方薬の豆知識
漢方薬の歴史
日本に中国から医学が伝わったのは5~6世紀以降とされており、多くの漢方処方薬や生薬、医学の本が持ち込まれました。
現在でも漢方薬の原料である生薬の多くは、中国などから輸入されています。室町時代までは伝来した中国の医学にそって医療(診断や治療)が行われていましたが、それ以降は日本で独自の発展を遂げてきました。日本国内の風土や気候、日本人の体質やライフスタイルに合った医学に進化し、確立していったのです。
現代医療で用いられている漢方医学や漢方薬は、日本の伝統医学としてずっと守られ、発展していった「日本独自の医学」と言えるでしょう。
漢方の名称の由来
「漢方」という呼び名は、江戸時代に入ってきた「オランダ医学=蘭方」に対してつけられた日本独自の呼び方です。オランダから伝わった西洋医学をオランダ(阿蘭陀)の蘭をとって「蘭方」と呼ぶようになったため、それまでに日本で定着していた医学を「漢方(漢王朝の”漢”に由来)」と呼んで区別するようになったのです。
参考:ツムラ「漢方について」
漢方薬の使い方
漢方薬は1日2~3回服用が基本です。ただし症状に合わせて頓服したり適宜増減したりすることができますのでご相談ください。
用量はツムラの場合、大半が1日7.5gの服用になりますが、その他の場合もありますので例外を記載いたします。
飲みやすくする工夫
- 水を口に含んで服用する方法
あらかじめ水を口に含んだ状態で、口の中に漢方薬を入れて水といっしょに飲みこむことで口に残りにくくなり味やにおいが緩和されます。
- オブラートに包んで服用する方法
オブラートに漢方薬を包んでから服用します。漢方薬が口の中(舌)に付着することがないので口に残りにくくなり味やにおいが緩和されます。
ポイントは薬をオブラートに包んだ後、コップなどの水の入った容器などに入れて10秒揺らすことです。このステップにより、オブラートが水を含んでゼリー状になるためのどを通りやすくなります。
漢方薬を服用する上での注意点
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意が必要です。
妊婦・産婦・授乳婦への投与
処方により異なり、確認が必要です。妊娠中の場合、流産・早産など、授乳中の場合、母乳に移行して乳児の下痢を起こすことがあるため、漢方薬は服用しないことをおすすめしています。
注意すべき生薬
生薬は自然由来のものですが、服用することで副作用がでるものもあります。副作用が無ければ服用いただいても問題ありません。
前述の通り、漢方薬の処方は複数の生薬の組み合わせですので、これらの副作用が疑われる場合にはお使いの漢方薬に該当の生薬が含まれていないかご確認ください。
その他、肝臓病の治療などでインターフェロン製剤をお使いの場合は、小柴胡湯の併用が禁忌になっていますのでご注意ください。
よくあるご質問
- 漢方薬はどれぐらいの期間飲めばいいのでしょうか?
-
病状や状態により異なりますが、漢方薬の効果判定は服用開始後1~2週間の状態をひとつの目安としています。ただし慢性的な病気などでは、効果が出るまでに1か月以上時間を要することもあるため、3カ月は服用するようおすすめしています。
- 漢方薬のカロリーはどれぐらいありますか?
-
1日7.5g服用した場合、約30kcal(1g=約4kcl)です。
- 漢方薬を服用してもドーピングに該当しますか?
-
当院で処方することの多い漢方薬メーカーであるツムラ・クラシエ・小太郎などでは、漢方製剤の禁止物質分析を行っておらず回答ができないそうです。またドーピング規定も改訂されるため、正確な情報に関しては 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)にお問い合わせください。
- 漢方薬はドラッグストアで売っていますか?
-
OTC漢方薬は一般用医薬品の中の第2類医薬品に分類されており、ドラッグストアで市販されています。中には医療用漢方製剤と同じ名前で販売されているOTC漢方薬もありますが、医療用医薬品と一般用医薬品では用法用量が異なります。これは安全性をより高めるために服用量を調整しているためです。
- 漢方薬の頭についている番号は何ですか?
-
この番号は漢方製剤番号です。メーカーが違っていても同じ番号であることが多く、医療の現場ではよく使われています。漢方薬の名称は常用外漢字が多く使われていて難しいので、簡便な番号が定着しました。なお、番号はツムラの研究者だった小根山隆祥氏が実験ノートに付けていた番号が元だそうです。