【医師監修】知っておきたい!漢方薬の副作用について

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「漢方薬は安心・安全」だと思っていませんか?
身体によいイメージのある漢方薬も医薬品です。そのため、用法・用量を守っていても、副作用が起こる可能性があります。また、複数の漢方薬を併用すると副作用のリスクが高まるため、同時に服用するのは2種類までとするのが一般的です。
今回は、漢方薬に関連する副作用についてご紹介します。副作用の症状や初期のサイン、治療法、注意が必要な漢方薬などを、添付文書をもとにまとめました。漢方薬を服用していていつもと違う症状があらわれた場合は、すぐに服用を中止し処方元の医師にご相談ください。

肝障害

概要

倦怠感の症状

薬物性肝障害とは薬物が原因となり、肝細胞障害や胆汁うっ滞を起こす疾患です。
薬物の代謝は肝臓で行なわれることが多く、様々な代謝産物が肝臓に出現するために副作用として肝障害が多いと考えられています。
漢方薬の肝障害はアレルギー性の機序が原因として起こるといわれています。

症状

全身症状:倦怠感、発熱、黄疸
消化器症状:食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛など
皮膚症状:発疹、じんましん、かゆみなどがあります。

診断方法

薬物服用期間と肝障害出現時期との関連を評価し、他の成因による肝障害を除外することが診断の基本です。薬物性肝障害の診断に際して、感度と特異度が高いバイオマーカーおよび肝組織所見は存在しません。そのため、様々な臨床所見や病理学組織学的所見を総合して診断を行います。

治療

原因の医薬品を中止することが第一です。黄疸が長引いているケースや劇症肝炎の移行が疑われる場合は薬剤を用いて治療が行われます。全身倦怠感や食欲不振が強い場合(黄疸例、ALT高値、プロトロンビン時間延長例)は急性肝炎の治療に準じて行います。

注意喚起されている漢方薬一覧

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間質性肺炎

概要

せきの症状

炎症や線維化によって肺胞の壁(肺胞壁)が厚くなり、換気血流不均等や拡散障害によって酸素が取り込みにくくなる病気です。漢方薬の間質性肺炎は、アレルギーにより発現する見方が主流になっています。漢方薬特有の発症機序は報告されていません。生薬としてはオウゴンが原因の1つと言われていますが、オウゴンが含まれない漢方薬での報告もあります。

症状

自覚症状:咳(特に乾燥性の咳嗽)・息切れ・発熱です。発疹を伴うような場合もあります。
身体所見:胸部でfine crackles(捻髪音)を聴取することがあります。
呼吸不全が高度の場合は、チアノーゼ、頻呼吸、補助呼吸筋の使用がみられます。

診断方法

漢方を服用中に乾性咳嗽、労作時呼吸困難などが出て、胸部X線写真で新たな陰影が出た場合、薬剤性の間質性肺炎が疑われます。薬剤中止後に自然に軽快した場合、薬剤性間質性肺炎を診断する根拠となります。その他、血清マーカー(KL-6、SP-D)の測定や胸部X線写真・CT検査、詳細な問診などを行い、診断します。

治療

原因と推測される漢方薬の服用を中止することが一番です。改善されない場合や呼吸不全などを呈す場合は副腎皮質ステロイドを投与することがあります。

注意喚起されている漢方薬一覧

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腸間膜静脈硬化症

概要

腹痛の症状

大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰化などが起こり、静脈還流の障害によって、腸管の慢性虚血性変化をきたす疾患です。生薬のサンシシが原因となり、起こる副作用とも言われていますが、サンシシが含有されていない漢方薬でも報告があります。副作用報告の多い服用期間は5年以上であり、長期のサンシシ含有の漢方薬の服用には注意が必要です。(5年未満でも報告はございます。)

症状

主に腹痛・下痢・嘔気・嘔吐です。無症状のケースや便潜血陽性で発見されることもあります。また、重症例ではイレウスもあります。

診断方法

内視鏡所見とCT検査による腸管壁や腸間膜静脈の石灰化が認められた場合に本副作用と認められることが多いです。手術例では病理組織所見が根拠となります。

治療

一般的に原因と推測される漢方薬の服用を中止することで症状の改善がみられることが多いです。経過観察期間は服用中止あるいは症状改善後、3年程度で良いと言われています。イレウスや繰り返す重度の腹痛があるケースは手術の考慮も必要となる例もあります。

注意喚起されている漢方薬一覧

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漢方名(カッコ内は製品番号)
黄連解毒湯(15) 竜胆瀉肝湯(76)
加味逍遙散(24) 柴胡清肝湯(80)
荊芥連翹湯(50) 清肺湯(90)
五淋散(56) 辛夷清肺湯(104)
温清飲(57) 茵蔯蒿湯(135)
清上防風湯(58) 加味帰脾湯(137)
防風通聖散(62) 生薬サンシシ
(調剤用刻み生薬)

 

偽アルドステロン症

概要

こむら返りの症状

偽アルドステロンとは低レニン性高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、低カリウム血性ミオパチーなどの原発性アルドステロン症様の症状が出現するものの、血漿アルドステロン濃度が低下を示す副作用です。漢方薬では構成生薬の甘草(カンゾウ)が要因で発症すると言われています。主に高齢の方や低身長・低体重の方では発症しやすいことが判明しています。
その他、チアジド系降圧利尿薬・利尿薬・インスリン・副腎皮質ステロイド・甲状腺ホルモン薬の併用にも注意が必要です。

症状

自覚的症状:四肢の脱力・筋肉痛・痙攣(こむら返り)、全身倦怠感、浮腫、動悸など
重症化すると、起立・歩行困難、四肢麻痺発作、意識消失を発症する場合もあります。横紋筋融解を生じた場合、赤褐色の尿が認められます。
他覚的症状(所見):低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加、起立性低血圧、不整脈、心電図異常(T 波平低化、U 波出現、ST 低下、低電位)など)がみられることがあります。また偽アルドステロン症から、ミオパチー、横紋筋融解症、不整脈、うっ血性心不全などが生じることがあります。

診断方法

以下の項目によって、医薬品の副作用としての偽アルドステロン症と診断されます。

  • 血清カリウム低下→基準値3.5~5.0mEq/L
  • 低レニン性低アルドステロン血症
  • 血圧上昇
  • 原因医薬品の中止により正常化

治療

原因と推測される漢方薬の服用を中止することが一番です。
改善されない場合はカリウム製剤や抗アルドステロン薬の投与を行います。

禁忌の患者様について

以下の既往歴をお持ちの方は、甘草を2.5g以上含有している漢方薬の服用が禁忌です。

  • アルドステロン症の方
  • ミオパチーのある方
  • 低カリウム血症のある方

注意喚起されている漢方薬一覧

甘草含有量別漢方名一覧(カッコ内は製品番号)
甘草6.0g
芍薬甘草湯(68)
甘草5.0g
甘麦大棗湯(72)
甘草3.0g
小青竜湯(19) 桂枝人参湯(82)
人参湯(32) 黄連湯(120)
五淋散(56) 排膿散及湯(122)
炙甘草湯(64) 桔梗湯(138)
芎帰膠艾湯(77)
甘草2.5g
半夏瀉心湯(14)
甘草2.0g
葛根湯(1) 防風通聖散(62)
葛根湯加川芎辛夷(2) 麻杏薏甘湯(78)
乙字湯(3) 大黄甘草湯(84)
小柴胡湯(9) 神秘湯(85)
柴胡桂枝湯(10) 五虎湯(95)
柴胡桂枝乾姜湯(11) 柴朴湯(96)
桂枝加朮附湯(18) 黄耆建中湯(98)
桂枝加竜骨牡蛎湯(26) 小建中湯(99)
越婢加朮湯(28) 通導散(105)
麦門冬湯(29) 温経湯(106)
白虎加人参湯(34) 小柴胡湯加
桔梗石膏(109)
当帰四逆加
呉茱萸生姜湯(38)
柴苓湯(114)
苓桂朮甘湯(39) 苓姜朮甘湯(118)
桂枝湯(45) 当帰建中湯(123)
薏苡仁湯(52) 桂枝加芍薬
大黄湯(134)
桂枝加芍薬湯(60)
甘草1.5g
防已黄耆湯(20) 柴陥湯(73)
加味逍遙散(24) 柴胡清肝湯(80)
麻黄湯(27) 抑肝散加
陳皮半夏(83)
四逆散(35) 滋陰降火湯(93)
補中益気湯(41) 大防風湯(97)
十全大補湯(48) 升麻葛根湯(101)
潤腸湯(51) 立効散(110)
抑肝散(54) 清心蓮子飲(111)
桃核承気湯(61) 川芎茶調散(124)
香蘇散(70)
甘草1.0g
安中散(5) 竜胆瀉肝湯(76)
十味敗毒湯(6) 平胃散(79)
消風散(22) 二陳湯(81)
六君子湯(43) 当帰飲子(86)
釣藤散(47) 二朮湯(88)
荊芥連翹湯(50) 清肺湯(90)
疎経活血湯(53) 竹筎温胆湯(91)
清上防風湯(58) 滋陰至宝湯(92)
治頭瘡一方(59) 当帰湯(102)
五積散(63) 酸棗仁湯(103)
帰脾湯(65) 人参養栄湯(108)
参蘇飲(66) 胃苓湯(115)
女神散(67) 啓脾湯(128)
調胃承気湯(74) 清暑益気湯(136)
四君子湯(75) 加味帰脾湯(137)

 

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記事制作者

小西真絢(巣鴨千石皮ふ科)

「巣鴨千石皮ふ科」院長。日本皮膚科学会認定専門医。2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。
2児の母でもあり、「お肌のトラブルは何でも相談できるホームドクター」を目指しています。